プロジェクトの発端は、市内から出産できる医療機関がすべてなくなってしまったことです。
加えて各地域で共通の課題である、高齢者の健康に対する不安と、それに伴う医療費の増大、さらに高齢者の孤立化や集落内での交流の減少という課題に直面し、その対策としてプロジェクトは企画されました。
医療・健康という分野は各種の規制がありましたが知恵で乗り切り、結果が出せるプロジェクトとなりました。
結果としては住民の高血圧、糖尿病、高脂血症のリスクが低下しました。また服用する薬も減りました。
地域の変化として、健康意識の改善、そして元気な高齢者を中心としたコミュニティーの活性化があります。
さらなる展開として医療費削減効果のエビデンスの収集、現役世代が取り組める健康管理、継続性の高い在宅健康づくり、が見えてきました。
そして他の自治体との連携によるシステム開発によりランニングコストの軽減と、健康指導師の人材育成の必要性を感じます。
遠野市の健康医療プロジェクトは、遠野市産院”ねっと・ゆりかご”という医師、助産師、家庭をつなぐ周産期ネットワークというプロジェクト、”ゆりかごから天国まで”見守るweb版の電子健康手帳野プロジェクトと高齢者を元気にする”遠野ICT健康塾”プロジェクトという三本柱ががあります。ここでの紹介は主に遠野健康塾です。
詳細は、添付資料を参照してください。
ともあれ地域から出産ができる医療機関の消失したので、対策が必須となりました。
さらに、下記の課題が深刻化してくることが予測できました。
・健康に対する不安の増大化
・高齢化に伴う医療費の増大
・高齢者の孤立化
・集落内での交流の減少
基本的な目標は課題を解決することです。
①安心して出産できる環境作り
②生涯を通じた健康支援
③健康促進(行動変容、医療費削減)
さらに、
・自ら健康になろうという意識の醸成(行動変容)
・健康不安の解消
・疾病予防による医療費削減
・病院のサロン化の緩和
が目標です。
ふるさと元気事業
ICT遠野型健康増進ネットワーク事業
診療報酬の対象外(医師法20条、対面診療の原則)※離島、在宅慢性疾患は可
プロジェクトの意義に深い理解をしてくれた医師とそれと連携してくれた県下医療機関・行政機関協力体制でプロジェクトを推進できました。
①経産省
②総務省ICT&県(遠野型健康増進ネットワーク事業:3か年/2億)
下記添付ファイル参考まで
盛岡赤十字病院、岩手医科大学付属病院、県立大船渡病院
健康意識の高い高齢者、地域のリーダー的高齢者
①助産院監督医
②遠隔指導医
③香川ソフト会社
岩手医科大学
ICTを利活用した、遠野市の保健医療のプロジェクトは、遠野市助産院”ねっと・ゆりかご”、Web版”すこやか電子手帳”ぷお、遠野ICT健康塾が3本柱です。
1. 遠野市助産院”ねっと・ゆりかご”プロジェクトは下記です。
ネットワーク連携を12医療機関と構築して、小型軽量のモバイル胎児心拍数検出装置(CTGモニタ)で、医師が病院から通信ネットワークを介して、パソコンや携帯電話で遠隔地の妊婦の胎児心拍情報を常時受け取ることが可能です。現場の助産師は県立大船渡病院の小笠原敏浩医師の監督下で仕事ををします。
この仕組みの目的は下記です。
1 遠距離通院負担の軽減
2 健診の待ち時間短縮
3 医療機関との連携でケアの充実
4 遠距離居住妊婦の不安解消
5 周産期医療の情報ネットワーク
市内から産院が消失しましたがこの仕組みで妊婦は安心して出産ができます。
このシステムの基盤は "いーはとーぶ”という岩手県周産期医療情報ネットはです。この"いーはとーぶ”ネットワークは妊婦基本情報、妊娠届出情報、診療(健診)受診情報、妊産婦メンタルヘルスケア情報、妊婦・新生児アウトカム情報について、医療機関と市町村が情報連携を行い、安心・安全な出産と子どもの健全な成長をサポートする仕組みです。
2.生涯の健康データを記録する…「すこやか電子手帳」
このプロジェクトは総務省地域 ICT利活用モデル構築事業として実施しました。市民のすべての健康情報を電子手帳に蓄積して、その情報を“すこやかポータルサイト”というWebに厳格な認証機能を付けた上で公開しています。
これによって本人による健康管理と同時に、連携産院、医療機関、学校、介護施設の担当者が情報共有し、適切な処理ができます。
電子手帳は、親子手帳、子育て手帳、健康増進手帳、長寿手帳とライフサイクルによって切り替わっていきますが出産から死亡まで一元的に健康情報が管理することが出来ます。
この電子手帳は行政内のネットワークと民間のネットワークを取り持つ役割をします。この仕組みは新たな住民サービスの可能性を開きます。
3.遠野ICT健康塾
このプロジェクトは、テレビ電話等のICTを使い、医師と健康指導スタッフが連携した「顔の見える」健康サポートのネットワークによる疾病予防と健康づくりのコミュニティづくり、の目的です。そして次の狙いもあります。
健康不安の解消・孤立化防止
自発的な健康意識の醸成(行動変容)
健康づくりのネットワーク化
疾病予防の習慣づけで医療費軽減
このプログラムは参加希望の市民と、コメディカル、遠隔指導医、コールセンターが構成員です。
参加する市民は万歩計を使って運動量を計測します。そして各地区の健康塾の会場に毎週行き、毎日計測した歩数データ、毎週ごと計測した血圧・体重・体組成データ等をテレビ電話でシステムに入力します。そしてテレビ電話でコールセンターや医師に健康相談したり、指導を受けることができます。会場にはコメディカルが支援のためにいます。さらにこのコメディカルを支援するボランティアのスタッフが複数います。
コメディカルは、参加者が集まる集会施設を巡回して健康づくりをサポートして、歩数データや血圧など健康状態を計測し、指導します。そしてテレビ電話でコールセンターや医師につないで遠隔健康指導を受けることが出来ます。また年2回採血を実施し血液データをシステムに入力します。
遠隔指導医は健康情報や血液データを参照し、コメディカルと情報を共有し健康指導をします。また年2-3回は、電話で直接参加の市民に健康指導を行います。
コールセンターも健康情報を共有して、電話で健康相談と指導を行います。この相談は毎週で来ます。
地域ICT遠野型健康増進ネットワーク事業は以上の三つのプログラムの連携によって、総合的に市民の健康づくりを支援しています。
○市民が心身ともに明るく元気な生活を営むための未来型健康スタイルとして、ICTを利活用した健康情報の集積と共有化を図る。
○コミュニケーションと運動等、生活習慣が調和した「顔の見える」健康維持・増進のネットワークを形成し、自発的な健康づくりの意欲の醸成と人材の育成を図る。健康寿命の延伸。
○遠隔医療を取り入れた健康づくりや疾病予防など、ICTを利活用した持続的な活動の実施。
遠野市はICTという先端的な情報共有の技術を活用しています。ICTという新しい公共インフラを利活用して初めて可能になった行政サービスです。
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地域の課題とプロジェクトの意義を共有できた下記の参画、支援、指導の人を得た事です。特に遠隔医療という現状の医師法を超える活動を理解し支援してくれた先進的な医師と水準の高いコメディカルの存在は極めて重要な成功要因です。
①医療機関の協力(釜石病院の小笠原医師)
②市民の参画
③実施箇所を増やし人を集めた(地区公民館の活用)定期健診というコンテンツ、血液検査の結果を医師がコメント
市長によるトップダウン、フィードバックを元に随時改善、職員が地域でPR、知り合いづて、実施箇所の増加(地区公民館の活用)、定期健診というコンテンツ、血液検査の結果を医師がコメント、担当者の執念でしょう!
最後に、行政のトップが行政の本質的な使命を深く認識して継続して、専任組織を設置して経営資源を配布すると同時に、2-3年で移動する行政組織の中で継続的にプロジェクトを支援してきた職員の存在も必須です。
遠野市のICTを利活用した医療・健康プロジェクトは次の成果を上げることができました。数字等の詳細なデータは添付資料を参照してください。
①妊婦のたらい回し減少、早期検診の増加、出産の不安軽減、
②健康意識の向上、
③高血圧、糖尿病、高脂血症リスクの低下、医療費膨張の食い止め
④体重の維持又は減量
⑤服用する薬が減った
プロジェクトの直接的な成果に加えて地域コミュニティの活性化が進みました。
今後の課題は下記です。
医療過疎地の活動普及に繋がらない、県境を超えた連携、赤字、利用者が頭打ち、勤労者・男性の利用者が少ない
予防医療の市民向けPR
予算確保(新規アプローチも含め)
参加者が高齢女性に偏っている
したがって今後の展開として以下を認識しています。
幅広い参加層の確保、とくにシニアの男性
地域医療機関、大学、自動問診システムの開発、機能の高度化とランニングコストの削減
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遠野市のプロジェクトに関するいくつかの資料を紹介しておきます。
またプラチナ構想ネットワークで開催しているプラチナスクールの卒業生の合宿において課題として遠野市ICT利活用医療健康プロジェクトの理解とその横展開のワークショップの資料も紹介します。外部の人間がこのプロジェクトどう理解したが参考になると思います。