【背景・課題、目的・目標】
北九州市は、日本における近代製鉄所発祥の地であり、重化学工業都市として発展を遂げてきたが、戦後の高度成長のなかで、甚大な公害に見舞われた歴史を持つ。そのなかで、ものづくりや公害克服の過程において培われた高い環境技術力を有する企業が多く育ち、現在では卓越した環境技術を輸出することで、アジア地域の低炭素化に貢献すると同時に、地域経済の活性化を推進している。
国内マーケットが縮小するなか、成長するアジア諸国の活力を取り込むことは地方の振興にとってきわめて重要な課題である。一方、発展するアジア諸都市においては、環境保護と経済成長を両立させるグリーン・グロス(緑の成長)が求められている。そこで、本市企業の優れた環境技術と行政が有する都市間ネットワークを活かして、環境ビジネスで、地域経済活性化とアジアのグリーン・グロスに貢献するための中核施設として、平成22年6月に「アジア低炭素化センター」を開設した。
アジア低炭素化センターでは、単なる技術輸出にとどまらず、アジア諸都市の多様なニーズに対応するために、様々な企業の有する技術や製品を組み合わせるほか、行政が持つ社会システムのノウハウを結び付けるパッケージ型の技術輸出を目指している。
具体的な目標としては以下を掲げている。
①2050年にはアジア地域で、2005年の北九州市CO2排出量基準の1.5倍を削減する
②アジアのグリーンシティ創造に貢献し、現地の生活の質の向上や環境改善など利益を共有できる息の長い関係づくり-地方都市発の海外都市間連携による地域経済活性化モデルの構築
【取組内容】
北九州市は公害克服の過程で得た技術と経験を活かした環境国際協力を積極的に推進してきた歴史がある。その技術・ノウハウを開発途上国に伝えたいという思いから、これまで150カ国、合計7,453名の海外研修生を受け入れたほか、25カ国、合計175名の専門家派遣を行ってきた。また市内には、ものづくりや公害克服等の過程において培われた高い環境技術力を有する企業が多く育っている。これら、①公害克服の経験、②環境国際協力を通じて構築した都市間ネットワーク、③省エネやリサイクルなどの優れた環境技術の集積を地域資源として活用、インドネシア、インド、ベトナム、タイ、中国などのアジア諸国において、アジア低炭素化センターと企業が一体になって、エネルギーマネージメント、リサイクル・廃棄物処理、水ビジネス、クリーナー・プロダクションなどの分野において、環境ビジネスの事業化を目指している。
アジア低炭素化センター開設以来、現在までにアジアの42都市で75の企業・大学等と連携しながら73件のプロジェクトを実施している。
【具体的なプロジェクト例(25年度実施)-事業内容、参画企業】
【インドネシア・スラバヤ市における国営工業団地向けスマートコミュニティ海外展開】
八幡東田地区におけるスマートコミュニティ創造事業の海外展開として、本格的ビジネス化に向けた事業を実施する。新日鉄住金エンジニアリング、富士電機、NTTデータ経営研究所
【インドネシア共和国スラバヤ市における廃棄物の中間処理事業】
スラバヤ市において、有価物、有機ごみ、異物の選別を行い、有機ごみからの堆肥製造とその販売可能性を検証し、最終処分ごみの減量化と廃棄物リサイクルの事業化に取組む。西原商事、NTTデータ経営研究所
【インドにおける電気電子機器廃棄物リサイクル事業】
インドにおける電気電子機器廃棄物(E-Waste)の効率的かつ環境上適正なリサイクル及び残渣処理を達成するため、日本企業が有するE-Wasteの処理と資源回収に係る技術・ノウハウを実証する事業。また、回収量を確保するため、有効的な回収システムの実証を行う。日本磁力選鉱、エックス都市研究所
【取組体制等】
(公財)北九州国際技術協力協会(KITA)、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンター、これに北九州市が一箇所に集まり、北九州市は主に技術輸出支援、(公財)北九州国際技術協力協会(KITA)は人材育成、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンターは調査研究を担うなど、相互に連携しながら共同実施の方式で運営している。
アジア低炭素化センターは相手側政府との窓口となり、案件発掘など企業活動の側面支援を行い、企業においては高度な環境技術を活用した環境改善提案等を行い、プロジェクトを組成、事業化を図るものである。また、プロジェクトの内容に応じて、大学(学)もプロジェクトに参画し、専門的知見を活かしたソリューションを提供するなど、各ステークホルダーが得意とする分野を担当しながら、プロジェクトを実施している。
【成功要因】
①低炭素化センターと技術を有する環境企業、大学等とのニーズ・事業内容に対応した連携
各プロジェクトの実施にあたっては、アジア低炭素化センターと環境技術を有する企業とが共同で事業を実施し、プロジェクトの内容に応じて大学等の研究機関もコンソーシアムの一員として参画するなど、産学官が連携した事業展開を行っている
②低炭素化センター、北九州市、関連団体等の明確な役割分担と連携
③企業単独より低炭素化センター等がかかわることで現地政府との関係構築が容易となる
都市間連携をベースに企業活動を支援することで、企業単独ではハードルの高かった現地政府との関係構築につながり、ビジネス活動がしやすい環境を提供している
【成果】
①アジアの42都市で、75の企業・大学等と連携しながら73件のプロジェクトを実施している
②企業単体で海外展開を目指すには現地政府との協議が困難などの課題があったが、行政と企業が一体となり海外展開を目指す本取組みは、これまでに4件の事業化に成功
③日本の技術輸出だけでなく、現地の技術も取り入れ、低コストでより環境にやさしい技術を日本に逆輸入するなどリバース・イノベーションの効果も将来的には期待
なお北九州市では、公害克服から環境都市へ至る経験やノウハウを体系的に整理した「北九州モデル」を作成、これを活用して、各都市の現状とニーズに適応した目標を設定、具体的な対策や技術を北九州市の事例を参照することで、最適なグリーンシティ・マスタープランを策定、総合的なまちづくりの視点から取組みを進めることとしている。
北九州市は、環境モデル都市(平成20年7月選定)として2050年には、2005年の北九州市CO2排出量を基準として、アジア地域で150%削減(北九州排出量の1.5倍)するという大きな目標を掲げている。
また、国内マーケットが縮小するなか、成長するアジア諸国の活力をいかに取り込むかは、地方の振興にとってきわめて重要な課題である。一方、発展するアジア諸都市においては、環境保護と経済成長を両立させるグリーン・グロス(緑の成長)が求められている。
そこで、本市の企業の優れた環境技術と行政が有する都市間ネットワークを活かして、環境ビジネスの手法で、地域経済の活性化及びアジアのグリーン・グロスに貢献するための中核施設として、平成22年6月に「アジア低炭素化センター」を開設した。
アジア低炭素化センターでは、都市と都市との関係を大切にし、日本が尊敬されるような、心の通った関係を築き、アジアのグリーンシティ創造に貢献することを活動理念としている。日本企業だけが利益を得るのではなく、現地の生活の質の向上や環境改善につながるなど、アジアの仲間として利益を共有できる、真の意味で地域に根ざした、息の長い関係づくりを目指している。
また、「地方都市発の海外都市間連携による地域経済活性化モデル」を構築することが目標である。
アジア低炭素社会研究プロジェクト http://2050.nies.go.jp/s6/index_j.html
現地の環境制度・規制や国際ルールに従って、各種のプロジェクトを実施している。例として、「バーゼル条約(一定の廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続等を規定した条約)」が挙げられる。
プロジェクトの一つである「インドからの電気電子機器廃棄物リサイクル事業」では、世界で初めてインドからバーゼル条約に従って、廃プリント基板の輸入をスタートさせた。これにより、それまでインドでは健康によくない方法で廃プリント基板が処理されていたが、わが国での処理となり問題の解決に繋がった。
日本の地方自治体という公共性を活かして、関係国・都市との協議を重ね、理解・協力をいただいた。
平成23~24年度 内閣府 環境未来都市先導的モデル事業費補助金
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北九州市は過去に甚大な公害を克服し、その後、公害克服の過程で得た技術と経験を活かした環境国際協力を積極的に推進してきた歴史がある。その技術・ノウハウを開発途上国に伝えたいという思いから、これまで150カ国、合計7,453名の海外研修生を受け入れたほか、25カ国、合計175名の専門家派遣を行った。一方で、ものづくりや公害克服等の過程において培われた高い環境技術力を有する企業が多く育っている。
これら、①公害克服の経験、②環境国際協力を通じて構築した都市間ネットワーク、③省エネやリサイクルなどの優れた環境技術の集積、これらを地域資源として活用し、プロジェクトを実施している。
アジア低炭素化センターは、北九州市、(公財)北九州国際技術協力協会(KITA)、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンターが一箇所に集まり、北九州市は主に技術輸出支援、(公財)北九州国際技術協力協会(KITA)は人材育成、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンターは調査研究を担うなど、相互に連携しながら共同実施の方式で運営している。
アジア諸都市の多様なニーズに対応するために、主に企業(産)とアジア低炭素化センター(官)がプロジェクトを共同実施するほか、大学(学)等とも連携を図って事業を展開している。
アジア低炭素化センターは相手側政府との窓口となり、案件発掘など企業活動の側面支援を行う。企業は高度な環境技術を活用した環境改善提案等を行うことで、プロジェクトの事業化を図ることとなる。また、プロジェクトの内容に応じて、大学(学)もプロジェクトに参画し、専門的知見によりソリューションを提供するなど、各ステークホルダーが得意とする分野を担当しながら、連携のもとプロジェクトを実施している。
インドネシア、インド、ベトナム、タイ、中国などのアジア諸国において、アジア低炭素化センターと企業が一体になって、エネルギーマネージメント、リサイクル・廃棄物処理、水ビジネス、クリーナー・プロダクションなどの分野において、環境ビジネスの事業化を目指している。
アジア低炭素化センター開設以来、現在までに73のプロジェクトを実施している。
【プロジェクト具体例(25年度実施)-事業内容、参画企業】
【インドネシア・スラバヤ市における国営工業団地向けスマートコミュニティ海外展開】
八幡東田地区におけるスマートコミュニティ創造事業の海外展開として、本格的ビジネス化に向けた事業を実施する。 新日鉄住金エンジニアリング、富士電機、NTTデータ経営研究所
【インドネシア共和国スラバヤ市における廃棄物の中間処理事業】
スラバヤ市において、有価物、有機ごみ、異物の選別を行い、有機ごみからの堆肥製造とその販売可能性を検証し、最終処分ごみの減量化と廃棄物リサイクルの事業化に取組む。 西原商事、NTTデータ経営研究所
【インドにおける電気電子機器廃棄物リサイクル事業】
インドにおける電気電子機器廃棄物(E-Waste)の効率的かつ環境上適正なリサイクル及び残渣処理を達成するため、日本企業が有するE-Wasteの処理と資源回収に係る技術・ノウハウを実証する事業。また、回収量を確保するため、有効的な回収システムの実証を行う。 日本磁力選鉱、エックス都市研究所
【ベトナムにおける高度浄水処理整備事業】
生活雑排水の影響により、水道原水として用いる河川の汚染が深刻化しているベトナム・ハイフォン市は、北九州市上下水道局が国内特許を有する高度浄水処理を導入した。ハイフォン市は独自資金により、この整備事業を「北九州海外水ビジネス推進協議会」の会員企業の現地法人に発注(2013年12月20日竣工)。
また北九州市は、工事施工計画に係る技術的な精査など、技術アドバイザーとして、この整備事業を側面から支援した。 KOBELCO Eco-solutions Vietnam
(北九州市海外水ビジネス推進協議会会員企業の現地法人)
〇平成22年6月 アジア低炭素化センター開設
〇その後、フィージビリティ調査、実証事業、事業化 のプロセスを経て各種プロジェクトを実施している。
国等の資金を活用し、各種プロジェクトを実施している(平成25年度分まで計上)。
金額
平成22年度 0.7億円
平成23年度 3.3億円
平成24年度 7.8億円
平成25年度 14.1億円
平成22年度~25年度 累積金額 25.9億円
それぞれのプロジェクトの内容に内容に対応し、必要な方に参加いただく
下記の役割のもと、北九州市の関連団体相互に連携しながらプロジェクトの共同実施方式で運営している。
低炭素化センター:相手側政府との窓口となり、案件発掘などの支援
北九州市:主に技術輸出支援
(公財)北九州国際技術協力協会(KITA):人材育成
(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)北九州アーバンセンター:調査研究
①低炭素化センターと技術を有する環境企業、大学等とのニーズ・事業内容に対応した連携
各プロジェクトの実施にあたっては、アジア低炭素化センターと環境技術を有する企業とが共同で事業を実施し、プロジェクトの内容に応じて大学等の研究機関もコンソーシアムの一員として参画するなど、産学官が連携した事業展開を行っている
②低炭素化センター、北九州市、関連団体等の明確な役割分担と連携
17に示される通り、それぞれの役割分担のもと、協力・連携してプロジェクトを実施
③企業単独より低炭素化センター等がかかわることで現地政府との関係構築が容易となる
都市間連携をベースに低炭素化センターが企業活動を支援することで、企業単独ではハードルの高い現地政府との関係構築につながり、ビジネス活動がしやすい環境を提供している
①現在アジアの42都市で、75の企業・大学等と連携しながら73件のプロジェクトを実施している
②事業化に成功
企業単体で海外展開を目指すには現地政府との協議が困難などの課題があり、行政と企業が一体となって海外展開にチャレンジする取り組みは、企業の海外展開の有効な手段である。平成25年度までに行政の支援により4件の事業化に成功している。
地域の変化の一例としては、インドネシア・スラバヤ市での廃棄物中間処理事業が挙げられる。本事業は、本市企業の㈱西原商事が170ヶ所ある中継所の一つにリサイクル型廃棄物中間処理施設を設置して、ウェストピッカーと協働でプラスチックや金属のリサイクルを安全かつ衛生的に行う実証事業である。本事業実施により、ウェストピッカーの雇用創出や衛生的な環境づくり、従業員の収入増加につながったと同時に、収入が安定することで子ども達が働く必要がなくなり、学校にも行けるようになっている。
アジア低炭素化センターが目指す姿は、このように単なる技術輸出ではなく、『社会づくり』を一体的に行うことによって、アジア諸都市の生活向上、文化の醸成を図るものである。
・これまで相手都市のニーズに応じて、様々な分野の個別プロジェクトに取り組んできたが、各分野を統合した上位のまちづくり計画がなく、各プロジェクトの有機的な連携が十分図られていないのも事実である。さらに、各プロジェクトがステップごとの事業成果を踏まえ、次のステップの事業を考えるなど、長期的な視点からのアプローチがなされていない。
・日本の技術輸出だけでなく、現地の技術も取り入れ、低コストでより環境にやさしい技術を日本に逆輸入するなどリバース・イノベーションの効果も将来的には期待できる。
上記の問題克服のため、北九州市では、北九州市の公害克服から環境都市へ至る経験やノウハウを体系的に整理した「北九州モデル」を作成した。この「北九州モデル」を活用して、各都市の現状とニーズに適応した目標を設定し、具体的な対策や技術を北九州市の事例を参照することで、各都市に最適なグリーンシティ・マスタープランを策定し、総合的なまちづくりの視点から取組みを進めることとしている。それにより、アジア諸都市の多様なニーズに対応した都市環境インフラの輸出を推進し、グリーンな都市づくり・アジア全体での低炭素社会の形成に貢献していく。
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アジア低炭素化センターHP http://www.asiangreencamp.net/func1.html