【背景・経緯、目的・目標】
徳島県の過疎地域では、「限界集落」の割合が35.5%(平成22年)と全国平均の15.5%を大きく上回ることから、集落再生を「県民共通の課題」と捉え、「実践的な取組策」を取りまとめ、できることから着手する「攻めの集落再生」に挑戦している。
一方、東日本大震災以降、首都圏の企業は災害時における業務継続に向けたリスク分散のため、ICTを活用した「テレワーク」「モバイルワーク」など従来の働き方を見直している。
徳島県ではこれらの動きに着目し、「豊かな自然」と「全国屈指のブロードバンド環境」を最大限に活かし、「空き家」となっている古民家や遊休施設を、企業の「サテライトオフィス」として活用することを提案、平成23年9月から実証実験を行った。
「サテライトオフィス」の取組みは「集落再生の取組み」としてスタート、「ICTの利活用」、「企業のリスク分散」、「雇用の拡大」、「新しい働き方・ライフスタイルの創造」などを目標としている。単なる企業誘致ではなく、企業が地域をよく理解し、地元の方々と共に集落再生の原動力となり、地域資源の情報発信はもとより、地元雇用やIターンの拡大といった「地域の活性化」に繋げることがプロジェクトの目的である。
【取組内容】
①「空き家」の古民家・遊休施設を企業の「サテライトオフィス」として利用、実証実験を実施
平成23年9月より首都圏のICT企業の協力を得て実証実験を行い、「本社と同等の環境での仕事が可能である」との結論を得て「サテライトオフィス」プロジェクトを本格始動した。
②県独自の助成制度
事務機器および通信回線使用料、事務所賃貸料等のランニングコストおよび地元雇用に対する助成を創設したほか、移住者のために住居や住居兼オフィスの耐震化・リフォーム工事費の助成を設け、進出を支援している。
③SNSを活用した魅力ある地域独自の情報発信
「豊かな自然」「類い希な伝統と文化」、関西の台所を賄う「食材」、「限界集落」に受け継がれる「阿波人形浄瑠璃」、「農村舞台」「襖からくり」など多くの地域資源がある。こうした鮮度の高い地域情報をはじめ、「サテライトオフィス」の取組みをフェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で情報発信することで、本県に関心を持っていただき、企業関係者らとのネットワークづくりに努めている。
④サテライトオフィス誘致の総合サイト開設と攻めの広報戦略
サテライトオフィス誘致のための「サテライトオフィス・プロモーションサイト」を開設、総合口座としてワンストップサービスを可能とするとともに「効率的な誘致」及び「県内企業への理解」、「進出地域の拡大」、「進出企業のモチベーションの向上」などを目的に、県内外の報道機関を対象としたパブリシティ活動を展開している。
③お試しツアーの実施による地域の理解促進
企業経営者らを進出候補地に案内、都会のオフィスと同等以上のインターネット環境があり、仕事ができることを検証いただいた。また、NPO法人等地域づくりに取組む地元住民との交流の場を設け、地域の魅力を理解していただくよう努めている。
④カーシェアリングの運用-県内の移動手段を確保するため、進出企業等が保有する車5台を「徳島阿波おどり空港」に確保し、空港からオフィスまで、ドア・トゥ・ドアで移動できる「カーシェリング制度」を運用している。
【プロジェクトの成功要因】
①高速ブロードバンド環境の整備
②各種補助金制度の創設
③首都圏企業の実証実験など入念な事前準備(実証実験で本社と同等の環境と評価)
④ステークホールダーの協働
ア ICT環境等の進出企業によるPR
イ 地元NPO法人・市町村の「おもてなし」精神
ウ 県の広報戦略-プロモーションサイトの開設・運営
⑤進出企業へのメリット提供及び移住住民への手厚いサポート、新たなワークスタイルの提案
ア 進出企業や移住住民が求める情報提供
イ 地域と企業の連携による「Win-Win」の関係確立
【成果】
①県内4市町に27社が進出
②地元雇用(特に、若者にとって魅力のある雇用の場)が実現
③地域と企業・移住者との交流
④地元高齢者の生きがい創出にもつながる
⑤商店街の再生
⑥神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス(KVSOC)のオープン
①攻めの集落再生
徳島県の過疎地域では、(集落の人口の半分以上を65歳以上の高齢者が占める)「限界集落」の割合が、平成22年4月で35.5%となっており、全国平均の15.5%を大きく上回っていた。そこで、徳島県では集落再生を「県民共通の課題」と捉え、「とくしま集落再生プロジェクト」として、「実践的な取組策」を取りまとめ、できることから速やかに着手する「攻めの集落再生」に挑戦している。なかでも、「サテライトオフィス」の取組みは、「集落再生プロジェクト」の中核施策である。
②企業立地の環境変化を捉えた提案
東日本大震災以降、首都圏の企業は災害時における業務継続に向けたリスク分散のため、ICTを活用した「テレワーク」「モバイルワーク」など従来の働き方を見直す動きが出てきた。「豊かな自然」と「全国屈指のブロードバンド環境」を持つ徳島県はこの動きに着目、「空き家」となっている古民家や遊休施設を、企業の「サテライトオフィス」として活用することを提案した。平成23年9月から首都圏のICT企業の協力のもと実証実験を行い、本社と同等の環境での業務が可能であると確認できたことで、平成24年3月からプロジェクトを本格的に始動させた。
「サテライトオフィス」の取組みは「集落再生の取組み」としてスタートしており、「ICTの利活用」、「企業のリスク分散」、「雇用の拡大」、「新しい働き方・ライフスタイルの創造」などを目標としている。単なる企業誘致ではなく、企業が地域をよく理解し、地元の方々と共に集落再生の原動力となり、地域資源の情報発信はもとより、地元雇用やIターンの拡大といった「地域経済の活性化」に繋げることがプロジェクトの目的である。
このため、まずは実証実験として仕事や暮らしの環境を体感し、企業のメリットを確認していただくとともに、実証実験期間中に地元の方々との交流の場を設け、地域の課題にも正面から向き合い、地域住民と協働して課題解決に取り組む企業を求めた。その上でサテライトオフィス等を設置し、ビジネスに取り組む企業に対しては、独自の補助金等によりビジネス・雇用の拡大を支援している。
規制や制度の壁はなし。
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企業に対して性急に「オフィス」の設置は求めず、まずは実証実験期間を設け、実際に体験、メリットを確認いただいた。
また、サテライトオフィス利用者が地域で継続的に活動できるよう、徳島県独自で下記のオーダーメイド型の助成制度を設けている。
①ランニングコストの助成(事務機器及び通信回線使用料、事務所等の賃借料を支援)
②地元雇用に対する助成 (平成24年9月に補助メニューを創設)
③ハード整備費用の助成(サテライトオフィスとして貸与する市町村施設の増改築費)
④移住者の住居や住居兼オフィス(木造)の耐震化・リフォーム工事費への助成
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①県、関係市町、NPO法人、進出企業で構成するサテライトオフィス・プロモーションチーム
これらが視察ツアーの実施やプロモーション会議などで問題解決に向けた協働と連携を行い、誘致活動を成功に導いてきている。
NPO:企業と地元住民の橋渡し(日常生活のきめ細かなサポートなど)、空き家情報の提供
進出企業:セミナー・イベント・自社HPで徳島を紹介-進出企業の社長が仲間に情報提供、オフィス見学・視察に誘うなど、これらが人が人を呼ぶ流れに繋がっている
住民:古民家の提供、企業や社員との交流
行政:戦略的な情報発信、関係機関や関係者との連絡・調整
②ブロードバンド環境等インフラ整備や県の移住促進センターなどソフトな組織
・県は平成14年~23年、国、市町村、民間事業者等と連携して「全県CATV網構想」を推進、中山間地域の隅々にまで光ファイバー網(高速・大容量のインターネット環境)が整備。
・空き家、休廃校、廃業した店舗・工場等の遊休施設を利用可能な地域資源としてリノベーション、人材を呼び込むツールとしてオフィス等に活用
・平成19年度から移住相談にワンストップで対応する総合窓口として「移住交流支援センター」を県内市町村が設置して移住支援に取組んできた。この活動の中で蓄積された空き家情報や移住者の受入のノウハウを企業誘致に応用、オフィスとして利用可能な古民家情報の提供、進出後の地域住民との交流や日常生活の相談などきめ細やかな支援を実施
・四国八十八か所巡礼のお遍路さんに対する「お接待文化」が息づく地域で、外部から来た人へのおもてなしを喜びとする価値観が住民に共有されており、県外からの進出企業を自然体で受容
NPO法人グリーンバレー、NPO法人マチトソラ、移住コーディネーター
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東日本大震災以降、首都圏の企業の災害時リスク分散のためのICTを活用した「テレワーク」「モバイルワーク」などの動きに着目し、「豊かな自然」と「全国屈指のブロードバンド環境」を最大限に活かし、以下の取組を進めてきた。
①「空き家」となっている古民家や遊休施設を企業の「サテライトオフィス」として利用、実証実験を実施
平成23年9月より首都圏のICT企業の協力を得て実証実験を行い、ブロードバンド環境のもと「本社と同等の環境での仕事が可能である」との結論を得て「サテライトオフィス」プロジェクトを本格的に始動させた。
②県独自の助成制度を創設
SOHO企業には事務機器および通信回線使用料、事務所賃貸料等のランニングコストおよび地元雇用に対する助成を創設したほか、移住者のために住居や住居兼オフィスの耐震化・リフォーム工事費の助成を設け、進出を支援している。
③SNSを活用した魅力ある地域独自の情報発信
本県には、「豊かな自然」「類い希な伝統と文化」、関西の台所を賄う「食材」など多くの地域資源がある。なかでも、中山間地域、特に、いわゆる「限界集落」と呼ばれる地域に受け継がれる「阿波人形浄瑠璃」、「農村舞台」、「襖からくり」などはたいへん魅力的なコンテンツである。こうした魅力ある地域独自の情報をはじめ、「サテライトオフィス」の取組みを交流サイト・フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で情報発信することにより、本県に関心を持っていただき、企業関係者らとのネットワークづくりに努めている。
④サテライトオフィス誘致の総合サイト開設と攻めの広報戦略
サテライトオフィス誘致のため「サテライトオフィス・プロモーションサイト」を開設、総合窓口としてワンストップサービスを可能とするとともに、「効率的な誘致」、「進出地域の拡大」、「進出企業のモチベーションの向上」などを目的に、県内外の報道機関を対象としたパブリシティ活動を展開している。このほか官民による「とくしまサテライトオフィスプロモーション会議」で企業ニーズの把握・課題課題を共有、即応できる体制を整備した。
⑤お試しツアーの実施による地域の理解
企業経営者らを進出候補地に案内し、都会のオフィスと同等以上のインターネット環境があり、仕事ができることを検証いただくとともに、NPO法人をはじめ、地域づくりに取組む地元住民との交流の場を設け、「外からの目」で地域住民や地域の魅力を理解する契機としている。
⑥カーシェアリングの運用
県内の移動手段を確保するため、進出企業等が保有する自動車5台を「徳島阿波おどり空港」に確保し、空港からオフィスまで、ドア・トゥ・ドアで移動できる「カーシェリング制度」を運用している。
平成23年9月 首都圏ICT企業の協力のもとサテライトオフィスの実証実験を開始
平成23年10月 実証実験の成果発表会を東京で開催
平成23年12月 サテライトオフィス体験ツアーを開始
平成24年3月 7社がサテライトオフィスの本格展開を決定
自治体、NPO、進出企業で構成する「とくしまサテライトオフィス・プロモーションチーム」を設置
平成24年9月 サテライトオフィス誘致の総合窓口となるサイトを開設
過疎地域におけるSOHO事業者に対する補助制度を改定
平成25年1月 神山町にコ・ワーキングスペースを開設(神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス
平成25年4月 コンシェルジェ(総合お世話係)を設置
進出企業による提案型地域貢献活動への支援制度創設
平成24年度 INAKAオフィスモデル事業 3,000千円
平成25年度 川が歌っている!星が踊っている!サテライトオフィス・プロモーション事業 3,500千円
(※本予算にはサテライトオフィス設置等に伴う助成は含まれていない。)
特になし
〇とくしまサテライトオフィス・プロモーションチーム
平成24年3月 「サテライトオフィス」の誘致活動を成功に導くタスクフォースとして、県、関係市町、NPO法人、進出企業で構成する「とくしまサテライトオフィス・プロモーションチーム」を設置した。
〇とくしまサテライトオフィスプロモーション会議
企業誘致のための施策や課題の解決策、どのような企業を誘致するかなどを議論する「とくしまサテライトオフィスプロモーション会議」を定期的に開催。報道機関に公開することで情報提供の場となるよう運営している。
①高速ブロードバンド環境が整備されていたこと
平成14年から23年にかけ「全県CATV網構想」を推進し、高速・大容量のインターネットが利用できる全国屈指のブロードバンド網環境が整備されていた。
②各種補助金制度の創設
事務機器および通信回線使用料、事務所賃貸料等のランニングコストおよび地元雇用に対する助成を創設し、進出を支援した。
③首都圏企業の実証実験など入念な事前準備
プロジェクトの本格開始にあたり事前に首都圏のICT企業の協力を得て実証実験を行い、『本社と同等の環境での仕事が可能である』との結論を得て実施した。
④ステークホールダーとの協働
ア ICT環境や自然と共生した働き方等の進出企業によるPR
進出企業は、主に首都圏企業を対象に澄んだ空気や美しい景観などの「癒しの空間」と、都会とは比較にならない「高速のインターネット通信」が共存する徳島県の優位性をPRしている。ICT企業が求める新たな働き方を実現できる場所として徳島県を紹介し、さらなる誘致に貢献している。
・関連企業が集まるセミナーやフォーラムでの講演
・各種イベントなどへのブース出展
・視察ツアーの企画(日本マイクロソフト・樋口社長の招聘ほか)
・自社HPや企業活動での周知 ほか
イ 地元NPO法人・市町村の「おもてなし」精神
受け入れる地域では、NPO法人や市町村が中心となり、これまでの移住・交流活動の中で培ってきた経験とノウハウを活かし、企業と地元住民との橋渡しをはじめ日常生活の相談などきめ細やかなサポートを行っている。特に神山町の進出の多さはNPO法人グリーンバレーの空き家改修事業や移住交流支援事業や地域の様々な活動への参加・イベントの実施などきめ細かなサポートによるところが大きい。これらは新しい働き方やクリエイティブな環境を求めてやってくる企業の高評価に繋がっている。また、視察者に対する「おもてなし」精神も企業家の心を捉え、そこに働く人が新たに働く人を呼び、予想以上の進出をもたらしている。
ウ 県の広報戦略-プロモーションサイトの開設・運営
「攻めの広報戦略」を展開するとともに、ワンストップの「サテライトオフィス・プロモーションサイト(http://www.tokushima-workingstyles.com/)」を開設した。なかでも、「カーシェアリング制度の運用」などの「おもてなし施策」は、企業から高い評価を得ている。
また課題等を官民協働の「とくしまサテライトオフィス・プロモーション会議」で共有し、企業ニーズに即応した。このことが企業が相次ぎ本県の過疎集落に進出する今日の流れをつくった。
⑤進出企業へのメリット提供及び移住住民への手厚いサポート、新たなワークスタイルの提案
ア 進出企業や移住住民が求めるサービス提供
「サテライトオフィス」は大きな投資なしに進出できることがメリットであり、誘致成功のためには企業の「やりたいこと」が実現できるか否かを、ベンチャー企業のスピード感で確認できることが重要である。
また、「サテライトオフィス」の取組みは、人材の誘致であり、進出企業の「外からの目」で見ることで、本県の新たな「強み」の発見や「ビジネスチャンス」が生まれると考えている。進出のメリットは企業に発見してもらい、県や地元自治体はメリットを実現する支援に徹することが誘致成功の鍵で、日常生活の相談や地域住民との融和など、企業にできない分野のサポートは高評価を受けている。
イ 地方と企業の連携による「Win-Win」の関係確立
過疎地域において、時代の最先端を行くICT企業が、首都圏にある本社同様に仕事ができることを実証し、特に、難しいとされていたオンライン営業にも挑戦し、実績を上げ可能性を見出している。地方だからこそ実現する「新たな働き方」を提案し、共感し進出した企業が地域の新たな活用を本気で考える。この「Win-Win」の関係を創出してきた。
①県内4市町に27社が進出
平成23年9月から本格的に取組みを開始し、平成27年3月末現在、ICT企業など関連企業を含めて県内4市町に27社(神山町12社、美波町9社、三好市5社、徳島市1社)の誘致に成功し、50名を超える地元雇用を創出した。また、サテライトオフィス勤務を通して、徳島県を気に入り、移住する社員も出ている。今後も、進出企業はさらに拡大する見込みである。
平成25年には美波町にサテライトオフィスを開設していた企業が、進出から1年を経て東京から本社を移転するとともに、新会社を設立。明治時代に建てられた銭湯を地域住民の交流施設として、オフィスとしてリノベーションし地域資源を磨き、地域活性化を進めている。
②地元雇用(特に、若者)が実現
進出企業が50名を超えて雇用したが、更なる雇用拡大も予定されているところである。何より、過疎地に首都圏をはじめ他地域から企業が集まり、若い人たちに魅力のある働き場所となったことで、地元で働くことを望む子どもや学生に働き方のヒントを与えており、大きな地域貢献となっている。
③地域と企業・移住者との交流、地域コミュニティの担い手形成
豊かな自然環境の中で「新たな働き方」を見つけ、仕事も生活もより充実させることが「サテライトオフィス」の最大の魅力であるが、社員は充実した余暇を楽しむ一方、地元小中学校へ出向いてパソコン指導を行う「出前授業」や、事務所に学生を招いての「職場体験」などを通じて、ICTの知識を地域に活かすとともに、「秋祭り」や「津波避難経路の草刈り」、「消防放水訓練」などの地元行事にも積極的に参加し、地域コミュニティの担い手として地域の方々と結びつきを深めている。
④高齢者の生きがい創出
平成24年9月、美波町に進出した企業の支援を受け、「観光ボランティアガイド日和佐」(平均年齢66歳)が、交流サイト・フェイスブックによる観光PRを開始した。毎日のように美しい自然や活動の様子を掲載し、ガイドへの問い合わせも多くなり、誘客の新たな手法として確立するとともに、高齢者グループの「やる気」を喚起している。
また平成25年3月には、交流サイト・フェイスブックを活用した「ボランティアガイド養成講座」を開催し、活動拡大に向けた取組みを始めるなど、進出企業との縁が地元を愛する高齢者の生きがいづくりにつながっている。
⑤商店街の再生
神山町では、オフィスやクリエイターの集積による商店街再生を進めており、平成25年7月には、映像関連企業が寄井座に隣接する古民家を「サテライトオフィス」に改修。さらに11月には、東京のICT企業に勤める女性らが斜め向かいの古民家を改修し、進出企業の憩いの場となるフランス料理店「カフェ・オニヴァ(フランス語で「さぁ、行こう!」の意)」をオープンサテライトオフィス開設により、カフェをはじめ他業種店舗の開設へ波及している。
⑥神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックスのオープン
平成25年1月、旧縫製工場を改修した 「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」が神山町に完成し、県内外の多様な才能を持った企業や個人の「集積の場」となり、業種の枠を超えた交流が始まっている。(県、神山町、NPO法人が費用を負担して整備)
平成25年2月には、全国のトップを切って、同「サテライトオフィス・コンプレックス」で開催された政府主催の「車座ふるさとトーク」において、新藤総務大臣から「優れた情報通信基盤を活かした、日本のふるさとに元気を取り戻す取組みであり、日本の再生につながるヒントになる」とプロジェクトに対し最大の評価をいただいた。
平成26年9月には小泉地方創生担当大臣政務官が神山町を視察した際、その場で霞が関の若手官僚をサテライトプレーヤーとして派遣することを決定し、11月に実現。「まち・ひと・しごと創生本部」事務局の企画官が滞在中。政府関係者や建材団体メンバーが神山町を訪れ、サテライトフィスを視察。さらに四元中継(神山町、美波町、東京赤坂、東京三田)でミーティングを行うなど、この模様は政府インターネットテレビ「徳島県神山町サテライトオフィス視察」として発信されている。
上記のように、全国的に採りあげられている「徳島モデル」は、オフィス利用者と地域との「Win-Win」の関係が生まれ、過疎化が進む地域の処方箋として下記のような成果をもたらしている。
【オフィス利用者のメリット】
①災害時の事業継続リスクを分散
②社員のワークライフバランスの実現
③超高齢化社会を先取りしたビジネスモデルの実証実験
④創造性を刺激される環境での斬新な発想
⑤地元の方々との交流を通じて生まれる地域貢献
【地域のメリット】
①地元企業等とコラボした「新たなビジネスモデル」の誕生
②デザインなどによる特産品のブランディング、販路開拓、観光振興
③地元の子どもたちや若者への働き方のヒント
④新たな雇用の創出
⑤お祭りをはじめ、地域活動の若い担い手の増加
①進出企業による多様な地域再生の取り組みの実施
平成24年8月、進出企業が美波町の「サテライトオフィス」において「スマートフォン向けのアプリ開発合宿」を行った。この合宿は首都圏の学生のインターンシップ研修を兼ねたもので、「地域課題の解決」をテーマに地元で活動するグループを講師や案内役として一週間かけ学習し、町の景観をアピールするアプリ「美波百景」を仕上げた。完成したアプリは役場の観光PRに活用されており、参加した学生から進出企業や県庁、役場への就職希望者も出ている。
また、期間中、学生と知り合うことで刺激を受けた地元のボランティアガイド(平均年齢66歳)が進出企業の支援を受け、交流サイト・フェイスブックを活用した観光PRを始めた。毎日のように地元の美しい自然や活動の様子を掲載し、好評を博している。
そのほか、高齢者向けのタブレット講座の開催や常設のITサポートカフェの設置など、進出企業による地域住民のITリテラシー向上のための活動に支えられ、タブレット端末を活用した観光ガイドや高齢者向けの買い物代行支援など、住民と進出企業の共同による地域の魅力発信や課題解決に向けた取組が次々と生まれている。
このほか、地元小中学校へ出向いてパソコン指導を行う「出前講座」や、事務所に学生を招いての「職場体験」などを通じて、ICTの知識を地域に活かすとともに、「秋祭り」や「津波避難経路の草刈り」、「消防防水訓練」になどの地元行事にも積極的に参加し、地域の結びつきを深めている。
①効果の「見える化」
これまでの取組みを発展させ、進出企業が地元と連携して行う「地域づくり」を支援する助成事業創設を検討する。徳島に集まる人材を活かして「地域再生」に向けた取組みを積極的に展開し、プロジェクトが過疎集落にもたらす効果の「見える化」に取り組む。
②さらなる取組の推進
実証実験開始から3年半の期間で、神山町(12社)、美波町(9社)、三好市(5社)、徳島市(1社)に27社が進出し、プロジェクトは県内に広がりを見せている。特に美波町では独自に東京でセミナーを開催・企業の視察に向けた取り組みを行い、成果を挙げている。
また、県内全域に光ファイバ網が整備された本県においては、どの地域においても本社と同様の仕事環境を整えた「サテライトオフィス」を設けることが可能であり、移住・交流を熱心に進めてきた地域であれば、日常生活の相談や地域住民との融和などのノウハウを活かして誘致することが可能である。
③県外へ
中央官庁や全国の市町村などの行政機関や国内外企業・団体など、年間約2,000名を超える視察者が訪れており、県やNPO法人の持つノウハウを県内外の自治体や企業・団体におしみなく提供しており、本県の取組を参考に国の事業や他の自治体で「サテライトオフィス」の取組が始まっている。
全県展開に当たっては、各自治体がそれぞれのどのような環境整備を進め、ワークライフバランスの重視等どのような生活がその場で繰り広げられるのかをイメージして、特色をもったサテライトオフィスの誘致を進めていくことが求められる。美波町の『海とともにある暮らし』の訴求はこれを体現している。
企業のサテライトオフィスの誘致は「働き方を革新すること」なのだという認識が重要である。ここでは仕事を持った移住者を確保すること(ワークインレジデンス)やまちづくりやまちの将来にとって必要と思われる方を逆指名して誘致を行っている。創造性を持った人の集結が地域を活性化させていく。
そこに何があるかではなく、そこにどんな人が集まるか、地域再生は地域を変えていく人が重要である(NPO法人グリーンバレー理事長 大南信也)
「サテライトオフィス・プロモーションサイト http://www.tokushima-wokingstyles.com/」