【背景・課題、目的・目標】
上勝町内では合併処理浄化槽を使用し、発生した汚泥は広域し尿処理施設に運搬(約30km)して最終処分を行なっているが、多額の広域行政経費がかかっている。上勝町では最終処理場をもてないことから、平成15年にゼロ・ウェイスト宣言を行い、廃棄物処分量を少なくするため廃棄物の分別を進め、34分類にまで分別し、処分量削減に取組んでいる。また実現のための取組み指針として4L(Local:地域主導、Low cost:低コスト、Low Impact:低環境負荷、Low tech:最新の技術に頼らない)を掲げ実践している。
家庭の排水についてもゴミ分別の視点から検討し、各発生源(トイレ、浴室、洗面、キッチンなど)の汚濁濃度が大きく異なっている状況を考慮、 特にし尿は汚濁濃度が高いため、家庭の排水を、 『し尿とそれ以外の雑排水(浴室、洗面、キッチンなど)』に分け、し尿は発酵分解処理して減容化、生活雑排水は専用の処理装置で処理し、放流水質の向上を図ることとした。
出たごみを処理するのではなく、ものづくりの段階から資源を浪費せず、環境汚染を引き起こさないようにするというゼロ・ウェイストの考え方を生活排水へも広げ、河川上流域の豊かで貴重な水環境を守りながら、し尿や雑排水を地域で処理し、有用資源としてリサイクル可能とする新しい分散型処理システム(エコ・サニテーションシステム)の構築を目指している。
このシステムでは浄化槽汚泥や汲み取りし尿はし尿処理場で最終処分するという(一般的な)考えに対し、ゼロ・ウェイスト視点から検討し、各戸での分散処理を行うこととした。
一般家庭での浄化槽使用を想定し、個人および上勝町の負担費用を合算すると現在は世帯あたり年間約13万円の負担と試算している。この処理システムを導入することで、汚泥およびし尿の広域運搬が不要となり、上水使用量の削減とし尿処理経費が低減されるほかCO2削減、放流水質向上による河川環境の改善などももたらされる。
【取組内容】
上勝町は、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、34品目に及ぶごみの分別、生ごみ処理機の全戸導入などを実施、残っていた課題として、トイレ・浄化槽などから発生する汚泥の削減や資源化を検討していた。一方水に関する様々な課題を解決すべく、研究開発を進めてきたLIXILは、下水道などの整備が進んでいない地域での実証実験を考えてい、LIXILが研究開発中の「エコ・サニテーションモデル」を上勝町の民家1世帯に設置し、実際に利用しながらデータ収集と「エコ・サニテーションモデル」の評価・改良をを協働でスタートすることとした。LIXILが上勝町を選定した理由は意思決定の速さ、実証場所の提供など担当者の熱意と実行力等に加え、強力なリーダーがいることである。取組の実際は以下の通りである。
(1)トイレ
①評価期間:2012年4月~
②評価概要:3人家族(夫婦2人+子供1人)の民家 屋外に試験機を設置し、水道・電気代などランニングコストの集計、水質の分析、技術課題の抽出、地域全体としての費用対効果を検証する
③システム概要:
・トイレで発生するし尿は発酵分解処理を行う。発酵残渣は堆肥として家庭菜園や農地に還元、地域で循環利用する。
・発酵分解補助剤として、地元の杉や竹などの木チップを利用する。
・ユーザーの使用感に配慮するため、シャワートイレは使用可能とする。シャワートイレ洗浄水の一部を分離、分離した水は雑排水とともに処理。
(2)トイレを除く浴室、洗面、キッチン
・トイレ以外の排水は専用の雑排水処理装置にて処理する。
このシステムの導入により、上水使用量および汚泥発生量を削減、広域運搬量とし尿処理経費およびCO2発生量を削減、さらに、し尿を分けて処理するため高い窒素・リンの除去率が期待され、放流水質の向上に繋がる。
【成功要因】
①LIXILの実証実験の場としての上勝町の最適性
株式会社LIXILは浄化槽の研究開発を行うために浄化槽を使用している地域での実証実験の場を探していた。一方上勝町は浄化槽を利用し、ゼロ・ウェイスト宣言を行い、34品目の分別収集を実施するなど住民が高い環境意識を持っており、LIXILの実証実験の場としては最適と考え、LIXILが「エコ・サニテーション」の実証実験を申し入れ、協定を結び、実験を開始した。
②それぞれの役割分担が明確で目標があったこと
事業は公民の関係する組織がそれぞれの役割を分担し事業を推進している。上勝町、LIXILの役割は以下の通り。
〇役割
上勝町役場:費用対効果の検証、町内でのモデル構築、普及促進。自治体・住民のニーズを直接企業側へ訴求し、ユーザー視点の商品開発を促す
評価ユーザー(実証実験世帯):システムの使用感評価
上勝町有機農業研究会:発酵残渣の農業利用への有効性の検証
一般社団法人 地職住推進機構:地域ブランド構築、地域再生政策からの提案、有効性検証
NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー:ゼロ・ウェイスト政策視点での提案、有効性検証
株式会社LIXIL:データ収集、試作開発、モデル構築、普及促進
株式会社もくさん:地元産材によるトイレ建屋建築、木チップの生産供給
今後、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーとの連携により、さらにゼロ・ウェイストに根ざした仕組みづくりや、一般社団法人地職住推進構と連携することで、地域資源を活用した雇用づくりを模索していく。
【成果】
上勝町は34品目の分別資源化、生ゴミ処理機を全戸導入するなど、焼却処理に頼らないごみ処理を積極的に進めており、浄化槽や汲取りトイレから排出される汚泥の削減対策を検討している。今回の取組は、以下の点で有効である。
①発生汚泥の削減や家庭排水の水質向上につながることが期待され、ゼロ・ウェイスト政策をすすめる町にとって有効な解決策となり得る。
②広域行政によるし尿処理施設までの汚泥運搬が無くなることから、CO2と運搬経費の削減に繋がり、その結果、行財政改革、地球温暖化防止、河川環境の改善による「持続可能な地域社会づくり」に貢献できる。なお、
③生ゴミとの混合処理の可能性や、装置のメンテナンス等による雇用創出、発酵分解処理に地域の木質資源を活用するなど、現在の浄化槽処理システムにはないメリットがある。
④大型処理施設では人口増減時の対応が困難であるが、今回の取り組みは家単位での対応を前提としており、人口の増減に柔軟に対応できる分散型システムである。
⑤発酵残渣は有用資源として農業用途などに利用可能である。
現在、上勝町にはゼロ・ウェイスト宣言、34分類の分別収集実施に伴い、葉っぱビジネス「彩」も含め、約2,500人の視察者が来る。このエコ・サニテーションシステムもゼロ・ウェイストの一環としても、環境品質の維持にも、そして視察者の維持・増加にも大きな効果が期待できると考えている。
【今後の方向・課題等】
今後の展開には以下の課題の解決が必要である。
①し尿の発酵分解と同時に生ゴミを合併処理すること。
②浄化槽法や建築基準法など 法規制上の課題への対応―下水道法、浄化槽法(浄化槽の設置・維持管理)、建築基準法(浄化槽の製造・施工)など、既存の水洗トイレと下水道や浄化槽を組み合わせた処理システムが前提となった制度や規制が関係することから、この解決が必要となる。
なお、この処理システムは各家庭に設置するため、動作電源としてマイクロ水力、太陽光発電、バイオマス発電など 地域の再生可能エネルギーの利用ができる。
上勝町内では排水処理システムとして合併処理浄化槽を使用しており、発生した汚泥を広域し尿処理施設に運搬(約30km)して最終処分を行なっているが、多額の広域行政経費がかかっているほか、個別の汲み取り費用も都市より相当割高となっている。都市部では下水道を利用した集中型処理システムが有効と考えられるが、人口密度の小さい地域では分散型システムの方がコスト的にも有利になる。
上勝町では最終処理場をもてないことから、平成15年にゼロ・ウェイスト宣言を行い、廃棄物処分量を少なくするため廃棄物の分別を進め、34分類にまで分別し、処分量削減に取組んでいる。また実現のための取組み指針として4L(Local:地域主導、Low cost:低コスト、Low Impact:低環境負荷、Low tech:最新の技術に頼らない)を掲げ実践している。
家庭の排水については、一般的に混合状態で一括処理されているが、排水についてもゴミ分別の視点から検討し、各発生源(トイレ、浴室、洗面、キッチンなど)の汚濁濃度が大きく異なっている状況を考慮、 特にし尿は汚濁濃度が高いため、家庭の排水を、 『し尿とそれ以外の雑排水(浴室、洗面、キッチンなど)』に分け、し尿は発酵分解処理して減容化、生活雑排水は専用の処理装置で処理し、放流水質の向上を図ることとした。
上勝町の21世紀の目標は、将来世代が現在の環境などを享受できる「持続可能な地域社会づくり」としている。その実現に向け、環境施策を循環型社会づくりとし、ゼロ・ウェイスト宣言を日本で最初に行い、34品目の分別資源化、環境教育による人づくり、生ごみ処理機の全戸導入などを行い、ソフト、ハードの両面からごみ政策を積極的に進めている。また環境保全を重視した生活基盤づくりとして、一般社団法人地職住推進機構を設立し、容器包装の削減を取り入れた買物弱者への宅配事業、マイクロ水力・バイオマス発電などによるエネルギー自給率の向上、薪ストーブやペレットストーブの販売サイトを立ち上げ、地域の木資源活用を促進するなど、持続可能な地域社会づくりに向けた活動を行っている。
出たごみを処理するのではなく、ものづくりの段階から資源を浪費せず、環境汚染を引き起こさないようにするというゼロ・ウェイストの考え方を生活排水へも広げ、河川上流域の豊かで貴重な水環境を守りながら、し尿や雑排水を地域で処理し、有用資源としてリサイクル可能とする新しい分散型処理システム(エコ・サニテーションシステム)の構築を目指している。
このシステムでは浄化槽汚泥や汲み取りし尿はし尿処理場で最終処分するという(一般的な)考えに対し、ゼロ・ウェイスト視点から検討し、各戸での分散処理を行うこととした。
このシステムは各戸に設置され、地域の木質資源である木質チップを活用、地域の維持管理業者や住民によるメンテナンス作業を行ない、汚泥処理コスト縮減とCO2の削減、家庭排水の放流水質改善による持続可能な地域社会の構築を目指している。
当システムの導入により、処分費の削減、環境負荷低減とともに、現地でのメンテナンス業務創出や地元の木資源活用、発酵分解処理した汚泥は農地へ有機肥料として還元することが期待される。
一般家庭での浄化槽使用を想定し、個人および上勝町の負担費用を合算すると現在は世帯あたり年間約13万円の負担と試算できる。この処理システムを導入することで、汚泥およびし尿の広域運搬が不要となり、上水使用量の削減とし尿処理経費が低減されるほかCO2削減、放流水質向上による河川環境の改善などももたらされる。
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下水道法、浄化槽法(浄化槽の設置・維持管理)、建築基準法(浄化槽の製造・施工)など、既存の水洗トイレと下水道や浄化槽を組み合わせた処理システムが前提となった制度や規制が関係してくる。
制度上の制約があることは分かっているが、具体的な施策は未実施であり、今後設備の商品化を進めていくなかで具体の課題が出てくる。これについては県とも協議して対応していくこととなる。
〇ゼロ・ウェイストに向けた取組みの実施過程で以下の国の事業を取り込んできた(本事業とは関係ないが、ゼロ・ウェイストに向けて取組む事業で、本事業もこの延長上にある)。
平成16年度-18年度 環境省「環境と経済の好循環のまちモデル事業(上勝町脱化石原料とゼロウェイストアカデミー事業) http://www.env.go.jp/policy/env_econo/model/ 」
平成21年度 内閣府 地域活性化・経済危機対策臨時交付金事業(業務用生ごみ処理機設置・小型焼却炉解体・撤去委託事業・リサイクルセンター用地等買収事業)
平成22年度 総務省「緑の分権改革(エコバレー)」推進事業調査
平成22-24年度 厚生労働省「ふるさと雇用再生特別基金事業」
平成23年度 内閣府「社会イノベーション推進のためのモデル事業」
(http://www.kamikatsu.jp/docs/2012011900017/files/shiyou.hp)
平成23年度 総務省 「過疎地域等自立活性化推進事業-上勝町エコバレー推進事業」
(http://www.soumu.go.jp/main_content/000187370.pdf )
〇サニテーションシステムに関する国・県の補助金はない。LIXILの装置の実証実験の場として上勝町が協力して1世帯を選定、様々に条件を変え実証実験をしている。LIXILの事業支出は1か月あたり100万円程度。
上勝町としては、実証実験の場としてアピール度があること、町民も前向きに実証実験に取組んでくれていることからゼロ・ウェイストの取組みの一環として価値を持つ。
補助金は特になし
産、官、民がそれぞれの役割を持ち連携して取り組みを進めている。
(株)LIXIL :上勝町内の民家において、サニテーションシステムの実証実験を行い、データ収集、研究開発を実施。
上勝町役場 :実証実験から費用対効果の検証等を行う。
株式会社もくさん :建屋建設を行う
上勝町有機農業研究会 :実験装置からでた発行残差を用いて野菜を栽培し、その評価を行う。
NPO法人ゼロ・ウェイ : 意見交換会に参加し、情報共有とともにゼロ・ウェイストの視点から提案ストアカデミー 戴く。
一般社団法人地職住推進機構 :意見交換会に参加し、情報共有、提案を行う。サニタリーシステムの各世帯 (戸)導入などにともなう管理業務など新たな雇用開発を検討する。
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上勝町は、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い、34品目に及ぶごみの分別、生ごみ処理機の全戸導入などを実施、残っていた課題として、トイレ・浄化槽などから発生する汚泥の削減や資源化を検討していた。一方LIXILは、下水道など汚水処理システムの整備が進んでいない地域の河川の汚染など、水に関する様々な課題を解決すべく、研究開発を国内外で進めてきた。そこでLIXILと上勝町は、LIXILが研究開発中の「エコ・サニテーションモデル」を上勝町の民家1世帯に設置し、実際に利用しながらデータ収集と「エコ・サニテーションモデル」の評価・改良をを協働でスタートすることとした。
(1)トイレ
①評価期間:2012年4月~
②評価概要:3人家族(夫婦2人+子供1人)の民家 屋外に試験機を設置し、水道・電気代などランニングコストの集計、水質の分析、技術課題の抽出、地域全体としての費用対効果を検証する。(現在、トイレの形状、材質、発酵に必要な熱の供給源および温度設定、木質チップの混入の可否/量などを判断するため、細かく条件を変更して実験、試験結果を2回/月回収している。これにより最適な商品化を行う予定である)
③システム概要:
・トイレで発生するし尿は発酵分解処理を行う。発酵残渣は堆肥として家庭菜園や農地に還元、地域で循環利用する。
・発酵分解補助剤として、地元の杉や竹などの木チップを利用する(木質チップを入れ、生ごみを肥料化している現在の方式を堆肥化にも採用して実施)。
・ユーザーの使用感に配慮するため、シャワートイレは使用可能とする。過剰な水分投入による発酵分解処理への悪影響を抑えるため、シャワートイレ洗浄水の一部を分離し、分離した水は雑排水とともに処理する。
(2)トイレを除く浴室、洗面、キッチン
・トイレ以外の排水は専用の雑排水処理装置にて処理する。
このシステムの導入により、上水使用量および汚泥発生量を削減、広域運搬量とし尿処理経費およびCO2発生量を削減、さらに、し尿を分けて処理するため高い窒素・リンの除去率が期待され、放流水質の向上に繋がる。
平成22年12月 上勝町と(株)LIXILとの間に「エコ・サニテーション」実証研究協定を締結
平成24年4月 町内の民家(1世帯)に試験機を設置(実証実験実施中)
平成26年1月 ケニアから視察来町
上勝町:0円
LIXIL:100万円/月
特になし(LIXIL社員で対応)
プロジェクトの推進体制は、株式会社LIXILと上勝町がロールモデルを構築、LIXILが試作品を開発、これを上勝町のフィールドで実証実験を行う。そののち全国で同様の問題を抱える市町村へ普及促進を検討する予定である。
①LIXILの実証実験の場としての上勝町の最適性
株式会社LIXILは浄化槽の研究開発を行うために浄化槽を使用している地域での実証実験の場を探していた。一方上勝町はゼロ・ウェイスト宣言を行い、34品目の分別収集を実施するなど住民が高い環境意識を持つ自治体であった。上勝町は浄化槽を利用している上に環境意識も高く、LIXILの実証実験の場としては最適と考え、LIXILが「エコ・サニテーション」の実証実験を申し入れ、協定を結び、実験を開始した。上勝町のゼロ・ウェイスト宣言とこれに向けた取組がLIXILが上勝町を実証実験場として選定した端緒となっている。
②それぞれの役割分担が明確で目標があったこと
事業は公民の関係する組織がそれぞれの役割を分担し事業を推進している。実証試験の場で使用する便器の改良を進め、ランニングコストの削減、改良した便器の使用感の評価等を継続的に実施している。今後、制度上の課題や維持管理体制の構築など、各主体がそれぞれの役割を連携して果たすソフト面での対応が必要となる。
【役割】
上勝町役場:費用対効果の検証、町内でのモデル構築、普及促進。自治体・住民のニーズを直接企業側へ訴求し、ユーザー視点の商品開発を促す
評価ユーザー(実証実験世帯):システムの使用感評価
上勝町有機農業研究会:発酵残渣の農業利用への有効性の検証
一般社団法人 地職住推進機構:地域ブランド構築、地域再生政策からの提案、有効性検証
NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー:ゼロ・ウェイスト政策視点での提案、有効性検証
株式会社LIXIL:データ収集、試作開発、モデル構築、普及促進
株式会社もくさん:地元産材によるトイレ建屋建築、木チップの生産供給
NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーとの連携により、さらにゼロ・ウェイストに根ざした仕組みづくりや、一般社団法人地職住推進構と連携することで、地域資源を活用した雇用づくりを模索していく。
上勝町は34品目の分別資源化、生ゴミ処理機を全戸導入するなど、焼却処理に頼らないごみ処理を積極的に進めており、浄化槽や汲取りトイレから排出される汚泥の削減対策を検討している。
今回の取組は、以下の点で有効である。
①発生汚泥の削減や家庭排水の水質向上につながることが期待され、ゼロ・ウェイスト政策をすすめる町にとって有効な解決策となり得る。
②広域行政によるし尿処理施設までの汚泥運搬が無くなることから、CO2と運搬経費の削減に繋がり、その結果、行財政改革、地球温暖化防止、河川環境の改善による「持続可能な地域社会づくり」に貢献できる。なお、CO2と運搬経費の削減に関しては、上勝町は町にとって有用な処理システムとなるか費用対効果を検証している。また機器の開発費用は産(企業)が負担している。
③生ゴミとの混合処理の可能性や、装置のメンテナンス等による雇用創出、発酵分解処理に地域の木質資源を活用するなど、現在の浄化槽処理システムにはない以下の視点を盛り込んでいる。
④大型処理施設では人口増減時の対応が困難であるが、今回の取り組みは家単位での対応を前提としており、人口の増減に柔軟に対応できる分散型システムである。
⑤発酵残渣は有用資源として農業用途などに利用可能である。
現在、上勝町にはゼロ・ウェイスト宣言、34分類の分別収集実施に伴い、葉っぱビジネス「彩」も含め、約2,500人の視察者が来る。その対応は「彩」に任せているが、これらの経済効果は相応のものがある。このエコ・サニテーションシステムもゼロ・ウェイストの一環としても、環境品質の維持にも、そして視察者の維持・増加にも大きな効果が期待できると考えている。
実証実験途中のため現段階では地域に及ぼす影響はない.
分散型処理システムは人口の増減に可変的に対応できるため環境への効果に対する地域の期待は大きい。
また、葉っぱビジネスのように視察者が増加することによる地域活性化も期待される。
今後の展開には以下の課題の解決が必要である。
①し尿の発酵分解と同時に生ゴミを合併処理すること。
②浄化槽法や建築基準法など 法規制上の課題への対応。
また汚泥の最終処分方法として化石燃料による焼却処理が主流となっているが、この処理システムは各家庭に設置するため、動作電源としてマイクロ水力、太陽光発電、バイオマス発電など 地域の再生可能エネルギーの利用ができ、以下の対応を進めることも可能である。
・トイレの使用状況データなどを活用した見守りやライブモニターへの利用。
・太陽熱の利用による省エネ化。
・上勝町の実践するゼロ・ウェイストへの取組をパッケージ化し、国内に限らず東南アジア、中国などへ展開、各国がかかえる環境問題の解決へ貢献する。
このシステムの導入コストは合併浄化槽と同等もしくは以下でなければならず、そのため開発者との連携が欠かせない。また、ランニングコストについても浄化槽以下を目標としており、汚泥処理などに要する歳出を抑えるとともに、さらに以下の事項の検討を進める。
・処理システムの安定制御やランニングコスト低減
・生ゴミの混合処理の検討
・宿泊施設など大型施設での対応方法の検討
・国による認可など法制度上の整備と普及支援策の検討
〇町の政策、ライフラインに係る取組であり、自治体と企業との連携が重要である
〇評価ユーザー(実証実験世帯)の選定に際しては、町と住民の良好な関係性がポイントとなる。
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