1. プロジェクト名
明石市立高齢者大学校あかねが丘学園-高齢者の地域社会デビューを支援する(兵庫県明石市)

2. 概要

【背景・課題、目的・目標】
高齢化が進行する中、明石市では地域のなかで高齢者が自ら学ぶことの喜びを見出し、充実した老後の生きがいをつくりだし、連携の輪を広げ、地域づくりへの参加を促す仕組みを創出することが必要となってきた。明石市立高齢者大学校あかねが丘学園は高齢者に学習の場を提供し、教養の向上や生きがいの創造を図るとともに、地域社会活動の指導者を養成することを目的として昭和56年に開校した。高齢者が地域社会活動へ円滑に参加できるようにしていくことを視野にカリキュラムの見直しなどを実施し、現在では高齢者自身の知識や経験、技能を地域社会に活用することで、シニア本人の生きがいにも繋がっている。本プロジェクトでは高齢者が自らの知識や経験を活かすことや新たな知識を学び、地域社会で楽しく、生きがいを持って活動できるよう高齢者を支援することを目的としている。

【取組内容】
①3年間のカリキュラムの中で活動グループを育てる
あかねが丘学園では本校3年、分校2年の学習を通して、系統立てたカリキュラムにより、社会を捉えるための一般教養の共通講座と専攻コースを設けている。専攻コースの学習では地域活動の企画力やコーディネーションなどコミュニティづくりに必要な専門性と実践に必要な知識や技術を習得する。
今まで地域社会活動に経験のない会社勤めをしていた方に地域社会に仲間をつくってもらい、3年間の中で徐々に地域活動に入っていけるようカリキュラムを工夫している。在学中から地域活動のテーマを決めて戴き午前は共通講座、午後は各専門コースに分かれての学習、2年次後半からは各専門コースがさらに別れて、自分たちで活動の企画を作成するようになる。3年目になると楽器ごとに企画、準備、実践を試行的に実施して戴き、これを重ねることで、卒業後に本格的に活動するグループに多くが育っている。現在は入学前から地域社会活動を意識づけ、徐々に活動実績を積むことで円滑な地域社会活動への参加が可能となるようカリキュラムが編成されている。
②多数の卒業生グループの活動を支援
明石市内での地域活動については、認知度も高く活動数も充実している。多くの卒業生グループが活動を行っており、平成26年度では94グループとなっている。これらのグループ活動には、市内各地域の施設や市主催のイベントなどからの参加要請が年々増えてきているほか、毎月1回など定例化して実施するグループも出てきている。これらの活動を支援するため、主に卒業生を対象に地域活動に役立つ講座の開講、施設・設備の貸出などの支援を行っている。

【成功要因】
①地域社会活動に必要な実践的な学習カリキュラムを創出
平成14年に明石市は学園のその後の道筋を決定する大きな改革を行った。この際、「高齢者大学校あかねが丘学園」に関する条例の変更が必要となったことから改定案を議会に上程、承認を得て条例を改定、学園設立の目的も「地域社会活動への積極的な参加を視野に、地域貢献活動を実施するとの目的とし、カリキュラムもこれに合致するよう編成、実施してきた。これまでとは大きな意識改革を迫るものであり、学習では地域活動の企画力やコーディネーションなどコミュニティづくりに必要な専門性を養いかつ在学中から地域活動のテーマを決めて調査、企画、準備、練習、実践を重ねることで地域社会活動へスムーズに入っていくことが可能である。このような実践的で目的を明確化したカリキュラムが魅力となっている。
②在学中からの小グループでの地域社会活動への取組み
2年次後半から地域社会活動に参加するが、その際に専門コースがさらに別れて、小グループで地域社会活動を実践的に行うなかでコミュニケーションが密になり、グループの円滑な運営が図られるようになる。このような地域活動が円滑に実施できる、あるいはカリキュラム自体がグループ形成を促すように設定されていることが大いに寄与している。

【成果】
①在学者の堅調な推移とボランティアセンター登録者・団体数の増加
在学者については1学年165名の募集枠が8割程度埋まり120名程度、3年後に100名程度が卒業するという状況であり、平成25年度末で3,343人の卒業生を送り出している。平成26年度では卒業生であかねボランティアセンター登録グループ数は94グループであり、24年の80グループから14グループの増加となっている。また、グループの活動実績は1266回、実施活動人数は8422人となっている。
なお、社会福祉協議会が把握しているボランティア団体のうちあかねが丘学園の卒業生はかなりの割合を占めている。
②男性の地域活動支援に効果
あかねが丘学園の在籍者の男女比は、平成26年度でみると、在籍者343名のうち199名、概ね6割が男性となっている。地域活動に縁が遠い男性を地域活動に円滑に参加させるという目的を達成していると言えよう。
③地域社会活動の中軸を積極的に担う人材が形成される
卒業生は地域でボランティア団体に入会を要請されたり、地域での役職につくことを依頼される場合が多いが、その場合積極的にこれを引き受けるなどしており、地域社会のなかでも中軸的な役割を担う人材となっている。

【今後の課題・方向】
今後グループ活動の支援については以下の課題が挙げられるほか、限られた予算、人員のもとで他部署との連携などが一層求められる。
・現在活動しているグループのメンバーが高齢化や数々の事情で減少することにより、グループ自体が存続できなくなることがあること
・グループ数の増大に伴い、施設や設備の貸出などの支援に限界があること
・学園が活動グループの支援を行うコーディネートについて、市のコミュニティ担当部局や社会福祉協議会などと連携していくこと

あかねが丘学園(明石市).pdf

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

高齢化が進行する中、高齢者が地域の中で生きがいを持って健康に生活していけることが重要となってきている。明石市でも高齢化の進展のもと、地域のなかで高齢者が自ら学ぶことの喜びを見出し、充実した老後の生きがいをつくりだし、さらに連携の輪を広げ、地域づくりへの参加を促す仕組みを創出することが必要となってきた。高齢者人口が大きく増加する現在にあって、その役割はますます重要となってきている。

4. プロジェクトの達成目標

明石市立高齢者大学校あかねが丘学園は高齢者に学習の場を提供し、教養の向上や生きがいの創造を図るとともに、地域社会活動の指導者を養成することを目的として昭和56年に開校した。高齢化社会が到来し、社会情勢が変化することにともない生涯学習のニーズが高まり、そして変化していくなか、平成14年にはこれからの高齢者社会への対応の一つとして、高齢者が地域社会活動へ円滑に参加できるようにしていくことを視野にカリキュラムの見直しなども含めた学園改革を実施した。現在、地域社会における高齢者の役割が増大するなか、世代間交流を支援するなど高齢者自身の知識や経験、技能を地域社会に活用することも必要である。これはシニア本人の生きがいにも繋がる。本プロジェクトでは高齢者が自らの知識や経験を活かすことや新たな知識を学び、地域社会で楽しく、生きがいを持って活動できるよう高齢者を支援することを目的としている。

http://www.edi.akashi.hyogo.jp/akane/pdf/2014/panhu.pdf

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

平成14年に明石市は学園の活動目的を高齢者の学習・教養習得の場から地域貢献活動を目的とする大きな改革を行った。この際、「高齢者大学校あかねが丘学園」に関する条例の変更が必要となったことから、改定案を議会に上程、承認を得て条例を改定した。

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

特になし

7. 上記規制をどう解決、回避したか

特になし

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

特になし

9. 補助金に対する報告書のファイル

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

統廃合後の空き校舎の活用(あかねが丘学園大学校は廃校となった市立松が丘南小学校校舎の一部を利用)
・阪神間の大学やNPOから活躍している方のなかから講師を招く
・地域活動を実践している卒業生を講師として招いて地域活動の実際を見せる

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

・神戸大学発達科学部(前教育学部)の松岡広路教授の助言が大きい(平成14年に学園を大きく方向転換しているが、明石市ではその1年前から「あかねが丘学園運営協議会」を設置、議論を進め、秋に答申を得て、改定を進めたがその中心メンバーが同教授である)

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

①3年間のカリキュラムの中で活動グループを育てる
 あかねが丘学園では本校3年、分校2年の学習を通して、系統立てたカリキュラムにより、社会を捉えるための一般教養の共通講座と専攻コースを設けている。専攻コースの学習では地域活動の企画力やコーディネーションなどコミュニティづくりに必要な専門性と実践に必要な知識や技術を習得する。
今まで地域社会活動に経験のない会社勤めをしていた方に地域社会に仲間をつくってもらい、3年間の中で徐々に地域活動に入っていけるようカリキュラムを工夫している。在学中から地域活動のテーマを決めて戴き午前は共通講座、午後は各専門コースに分かれての学習、2年次後半からは各専門コースがさらに別れて、自分たちで活動の企画を作成するようになる。3年目になると楽器ごとに企画、準備、実践を試行的に実施して戴き、これを重ねることで、卒業後に本格的に活動するグループに多くが育っている。これには、実際に活動しようとしても机上の学習だけではボランティア活動の受入先を探すことにも苦労するなどの問題が生じ、地域活動をなかなか実践できなかった苦い経験が役立っている。現在は入学前から地域社会活動を意識づけ、徐々に活動実績を積むことで円滑な地域社会活動への参加が可能となるようカリキュラムが編成されている。
②多数の卒業生グループの活動を支援
明石市内での地域活動については、認知度も高く活動数も充実している。多くの卒業生グループが活動を行っており、平成25年度では85グループとなっている。これらのグループ活動には、市内各地域の施設や市主催のイベントなどからの参加要請が年々増えてきているほか、毎月1回など定例化して実施する、あるいはされるグループも出てきており、今後も増加が見込まれている。これらの活動を支援するため、週1日「地域活動支援日」を定め、主に卒業生を対象に地域活動に役立つ講座の開講、施設・設備の貸出などを行っている。
http://www.edi.akashi.hyogo.jp/akane/pdf/2014/deatbook.pdf

14. スケジュール(行程表)

昭和56年 明石公園内中央公民館で2年制として開校
昭和58年 4年制として発足
平成12年 市立松が丘南小学校廃校跡に移転
平成14年 4年制を3年制に、7学科を5専攻コースに変更
平成26年 学習拠点を生涯学習センターに移し、定員を165人から100人に減らし、5コースを4コースに変更

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

あかねが丘学園最近年度の予算額は下記のとおりである。なお、下記のほか、臨時事務員も含み5名の職員及び社会教育コーディネーター4名、合計9名の体制で運営している。
                                         
   年 度 運営事業(千円) 維持管理事業(千円)   西分校運営事業(千円)  合 計(千円)
平成20年度    22,796    10,358                      33,154
  21年度           23,108         11,502       11,464     46,074
  22年度          23,003    10,865       16,670        50,538
  23年度        23,733    10,765       16,370        50,868
  24年度           23,210    10,865       16,370        50,445
  25年度        22,751    10,965       16,250        49,966

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

 ・大学・大学院で生涯学習について学んだ社会教育コーディネーター  

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)

体制:市職員-学園長、事務長、職員2名、臨時事務員1名 5名
    社会教育コーディネーター 4名  
    合計  9名体制で推進

18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

①地域社会活動に必要な実践的な学習カリキュラム
平成14年には、「高齢者の学習の場を提供し、教養の向上及び生きがいの創造を図るとともに地域社会活動の指導者を養成する」としていた学園設立の目的をこれからの高齢化社会への対応として、地域社会活動への積極的な参加も視野に、地域貢献活動を目的とするカリキュラムに編成、実施してきた。これは、これまでの高齢者の「健康維持のために定時に出かける、時間をつぶすために学習する」との意識から地域社会に貢献を求めるという大きな意識改革を迫るものであり、専門コースも7分野を5分野に減少、カリキュラムも大きく修正した。このカリキュラムの下、学習では地域活動の企画力やコーディネーションなどコミュニティづくりに必要な専門性を養いかつ在学中から地域活動のテーマを決めて調査、企画、準備、練習、実践を重ねることで地域社会活動へスムーズに入っていくことが可能である。このような実践的で目的を明確化したカリキュラムが魅力となっている。以上を纏めると以下の通りである。
・社会貢献とつながりが薄いと思われた趣味・教養色の強い2学科を廃止。
・学習方法について講義形式を減らしワークショップ・実習・クループ討議を多く取り入れる。

②在学中からの小グループでの地域社会活動への取組み
 2年次後半から地域社会活動に参加するが、その際に専門コースがさらに別れて、小グループで地域社会活動を実践的に行うなかでコミュニケーションが密になり、グループの円滑な運営が図られるようになる。このような地域活動が円滑に実施できる、あるいはカリキュラム自体がグループ形成を促すように設定されていることが大いに寄与している。
・2年3学期から地域活動のためのグループ作りを始め、3学年では実践と振り返りを繰り返して地域活動を実践する。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

①在学者の堅調な推移とボランティアセンター登録者・団体数の増加
在学者については1学年165名の募集枠が8割程度埋まり120名程度、3年後に100名程度が卒業するという状況であり、平成25年度末で3,343人の卒業生を送り出している。平成26年度では卒業生であかねボランティアセンター登録グループ数は94グループであり、24年の80グループから14グループの増加、グループ所属延べ人数では26年度1424人、24年1230人に対し、194人増となっている。また、グループの活動実績では25年度1266回、実施活動人数は8422人となっている。地域社会活動は園芸、伝承あそびや紙芝居等歴史・伝承文化、街や幼稚園等の花壇整備等環境美化、音楽、健康づくり、子どもや高齢者の福祉支援など多様な内容で実施されており、その活動は徐々に市域に浸透している。
社会福祉協議会が把握しているボランティア団体のうちあかねが丘学園の卒業生はかなりの割合を占めている。最終的には卒業生だけで固まらず、地域の方々も含めてグループを形成するようになっている。
②男性の地域活動支援に効果
あかねが丘学園の在籍者の男女比は、平成26年度でみると、在籍者343名のうち199名、概ね6割が男性となっている。地域活動に縁が遠い男性を地域活動に円滑に参加させるという目的を達成していると言えよう。
③地域社会活動の中軸を積極的に担う人材が形成される
卒業生は地域でボランティア団体に入会を要請されたり、地域での役職につくことを依頼される場合が多いが、その場合積極的にこれを引き受けるなどしており、地域社会のなかでも中軸的な役割を担う人材となっている。

20. プロジェクトによる地域の変化

あかねが丘学園卒業生の地域活動については、市民の認知度も高くなっており、活動数も増加、充実している。このため市内各地域の施設や市主催のイベントなどからの参加要請が年々増えてきているほか、定例化して実施するものも出てきており、存在を増してきている。

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

今後グループ活動の支援をどのように実施するかについては以下の課題が挙げられるほか、限られた予算、人員のもとで他部署との連携などが一層求められる。
・現在活動しているグループのメンバーが高齢化や数々の事情で減少することにより、グループ自体が存続できなくなることがあること
・グループ数の増大に伴い、施設や設備の貸出などの支援に限界があること
・学園が活動グループの支援を行うコーディネートについて市のコミュニティ担当部局や社会福祉協議会などとの連携していくこと

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

グループを統括する役割を持つ「あかねボランティアセンター」の充実を図り、複数のグループで連携してボランティア活動を実施するなどその組織・体制を充実する。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

24. その他関連情報、資料

明石市立高齢者大学校あかねが丘学園ホームページ
     http://www.edi.akashi.hyogo.jp/akane/