【背景・課題、目的・目標】
2030年には、柏市においても総人口は減少する一方、75歳以上高齢者数は著しく増加し、2010年時点の約2.2倍にもなる。今後急激に高齢化が進展していく中、医療資源の少ない柏市における高齢者医療をどのように構築していくかが課題となる。
団塊の世代が後期高齢者になる10年後には大量の医療・介護ニーズが発生するが、一時的な増加であるから既存の医療政策の延長として病床を増設することは難しく在宅医療が今以上に必要になってくる。また,団塊世代の大量退職により、これまで「会社」が社会とのつながりであった多くの人が地域に戻ってくることになるため、今後はこれらの高齢者が地域で孤立しないようにすることも必要となる。
このため、地域包括ケアシステムの具体化や高齢者の生きがい就労の場の創成に取組み、高齢者が住み慣れた地域で住み続けることができる「まち」の具現化を目指す。具体の目標は以下の通りである。
① 地域のかかりつけ医が合理的に在宅医療に取り組めるモデルの実現 -在宅医療推進の取組み
② サービス付き高齢者向け住宅と在宅医療を組合せた24時間の在宅ケアシステムの実現
③ 地域の高齢者が地域内で就労するシステムを構築,できるかぎり自立生活を維持する高齢者の生きがい就労づくり
【取組内容】
(1)在宅医療推進のための取組み
① 主治医・副主治医制が相互に協力して訪問診療を提供するシステムの構築
② 宅患者の急変時等に対応するための病院のバックアップ体制の構築
③ 医療と介護に関する多職種の連携-在宅医療・介護に関わる全関係者が一堂に会した「顔の見える関係会議」を設置し,年4回程度開催
④ 在宅医療研修の実施-医師会との共催で、東京大学の協力により、開業医の在宅医療研修を実施
⑤ 訪問看護ステーションの充実強化
⑥ 情報共有システムの構築-在宅療養する市民を担当する主治医、副主治医、訪問看護師、介護支援専門員などが、リアルタイムで情報共有
⑦ 市民への啓発-在宅医療の意義や可能性について,市民目線で,分かりやすく伝える
⑧ 地域医療拠点の整備-取組を総合的に実施し,在宅医療を含めた柏市の地域医療を支える拠点として豊四季台団地内に整備(H26/5開業)
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組合せ
サービス付き高齢者向け住宅および様々な医療・介護サービスをを豊四季台団地内に整備する。これらのサービスは地域に展開していくことを公募の条件としており,豊四季台地域全体を支える拠点としての機能を果たす。
(3)高齢者の生きがい就労の創成
主に定年退職者のセカンドライフを豊かにするため,無理なく,楽しく,できる範囲で働き,地域や社会に貢献する事業。
【総合特区による規制緩和】
介護保険法に基づく指定介護予防訪問リハビリテーションについては,病院,診療所,介護老人保健施設のみが提供可能となっている。しかし,柏市では,全国平均より診療所数が少なく,その結果、指定介護予防訪問リハビリテーションを提供する事業所も少なく,増加を見込むことも難しい状況であった。そこで本来、病院・診療所又は介護老人保健施設に限られるリハビリテーションを,診療所等の医療機関の指導の下で訪問リハビリ事業所に訪問リハビリテーション事業を実施を可能とした。
【成功要因】
①事業横断の担当行政組織の設置-平成22年度から行政が担当部署を設置、事業横断的に推進。
②医師会、在宅ケア団体、高齢者就労等関係事業者との協力関係の確立
③地域包括ケア構築の一環として、市町村(介護保険者)が在宅医療の推進に取り組むことが重要
④多職種と行政との推進体制の構築後は、別々の法人に所属する各専門職がチームを編成するため共通のルールの確立が必要
【成果】
①在宅医療を推進することで,急性期の治療を行なう病院と慢性期の治療を在宅で行なう診療所の役割分担ができ,課題解決につながる。
②訪問リハビリを医師以外が提供できることで(リハビリテーション特区)、サービス提供の頻度が高まり、寝たきり防止等健康な生活に繋がる。
③農業,生活支援,育児・保育,福祉の各分野は従事者が不足しており、地域課題となっていた。その不足部分を,生きがい就労で補っている。高齢者にとっても外出機会の増加や生活リズムが整うなど健康維持・介護予防に役だっている。
④関係者の連携強化を目的とした「顔の見える関係会議」では,自治会関係者を、啓発活動では在宅ケアを必要とする高齢者と関わりの深い民生委員や地区社協職員などにも当該プロジェクトの説明を行った。この結果、平成26年4月に開所した「柏地域医療連携センターでは,在宅医療を始めとする医療・介護にかかる相談が毎月90件ほど入っており、地域の拠点として機能を果たしている。
【事業の推進体制】
東京大学高齢社会総合研究機構、独立行政法人 都市再生機構、柏市 の3者が平成21年6月に柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会を発足、研究会を重ね、平成22年5月三者協定を締結。その後それぞれの役割分担の下に以下の取組を実施。
(1)在宅医療推進のための取組み
-柏市医師会を中心に3師会および訪問看護ステーション連絡会、栄養士会等が参加し、の在宅医療の研修を進めている。
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組合せ
-URがサービス付き高齢者向け住宅の事業者を募集、これに応募した㈱学研ココファンが拠点施設の整備を実施した。1階には診療所、薬局、在宅療養支援診療所、24H訪問看護・訪問介護施設、地域包括支援センター等の医療・介護サービスを組合せた包括ケア拠点施設が設けられている。
(3)高齢者の生きがい就労の創成
-当初は東大IOGと柏市とがコーディネート役であったが、これをシルバー人材センターに移管
日本の高齢化率は2010年時点で23.0%(実績値)であるが、2025年には団塊の世代が75歳以上高齢者となり、2030年には高齢化率が31.6%(推計値)に達する。柏市でも高齢化率は2030年には26.7%(推計値)に達する。また、2030年には、柏市においても総人口は減少する一方、75歳以上高齢者数は著しく増加し、2010年時点の約2.2倍にもなる。今後急激に高齢化が進展していく中,医療資源の少ない柏市における高齢者医療をどのように構築していくべきかは問題である。
人口10万人当たりの一般病院病床数は全国1057.9に対して,柏市814.4,一般病院病床利用率は全国79.9%に対して,柏市85.0%となっており,病床の需給は逼迫した状況が続いている。団塊の世代が後期高齢者になる10年後には大量の医療・介護ニーズが発生することから増床すべきとの意見もあるが,その10数年後には,今度は一気にその需要が縮まる可能性があり,人口が増えるのはいわゆる団塊ジュニアの世代を待たなくてはならず,20年くらいの間隔が空くことになる。
こうしたことから既存の医療政策の延長として病床を増設することは難しく,地域の資源の中で患者を診ていく視点(=在宅医療)が今以上に必要になってくると思われる。また,団塊世代の大量退職により,これまで,「会社」が社会とのつながりであった多くの人が地域に戻ってくることになるため,今後はこれらの高齢者が地域で孤立しないようにすることも必要となる。
その一方,これまで,「会社」が社会とのつながりであった多くの人からすると,地域社会でのボランティア活動やサロンへの参加は敷居の高いものであり,こうした人に対する新しい地域参加の道筋を示すことが望まれている。
都市部の高齢化に伴い,長寿社会に対応するべく「いつまでも在宅で安心した生活が送れるまち」・「いつまでも元気で活躍できるまち」の実現に向け、地域包括ケアシステムの具体化や高齢者の生きがい就労の場の創成に取組み高齢者が住み慣れた地域で住み続けることができる「まち」の具現化を目指す。具体的な目標は下記のとおり。
① 地域のかかりつけ医が合理的に在宅医療に取り組めるモデルの実現 -在宅医療推進の取組み
② サービス付き高齢者向け住宅と在宅医療を含めた24時間の在宅ケアシステムを組み合せた日本のモデルの実現 -高齢者の住まいと医療介護サービスの組合せ
③ 地域の高齢者が地域内で就労するシステムを構築し,できるかぎり自立生活を維持(生きがい就労の創成) -高齢者の生きがい就労の創成
(未入力)
〇介護保険法施行規則及び指定居宅サービス等の事業に係る人員、設備及び運営に関する基準
介護保険法に基づく指定介護予防訪問リハビリテーションについては,病院,診療所,介護老人保健施設のみが提供可能となっている。しかし,柏市では,全国平均より診療所数が少なく,その結果,指定介護予防訪問リハビリテーションを提供する事業所も少なく,増加を見込むことも難しい状況となっていた。
在宅医療推進のための取り組みの中で,地域におけるリハビリテーションを推進するため,総合特別区域法(総合特区)を活用した。特区における規制緩和の内容は,本来、病院・診療所又は介護老人保健施設に限られるリハビリテーションを,病院,診療所又は介護老人保健施設でなくとも診療所等の医療機関の指導の下、訪問リハビリ事業所に訪問リハビリテーション事業を実施を可能とするものである(平成25年3月より)。これにより現在4つの訪問リハビリ事業所が認定されこの看護師による訪問リハビリが実施されている。これによりリハビリが必要な患者に対し、リハビリを行いやすい環境が整ってきている。
※上記の取り組みの詳細については,以下を参照。
柏市HP:http://www.city.kashiwa.lg.jp/soshiki/060200/p015004.html
(1)在宅医療推進のための取組み
① 在宅医療連携拠点事業補助金(H24厚生労働省)※事業全体の推進 6,348千円
② 地域支え合い体制づくり事業補助金(H24千葉県←厚生労働省)※訪問看護師確保 860千円
③ 在宅医療連携拠点事業補助金(H25千葉県←厚生労働省)※事業全体の推進 4,750千円
④ 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(H25厚生労働省)※訪問看護師確保 15,000千円
(概ね3,000千円/ヶ所 × 5ヶ所)
⑤ 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(H26厚生労働省)※訪問看護師確保 15,450千円
(概ね3,000千円/ヶ所 × 5ヶ所)
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組合せ
特になし
(3)高齢者の生きがい就労の創成
① 特定地域再生事業補助金(H25内閣府)※シルバー人材センターにジョブコーディネーター配置 654千円
② 緊急雇用創出事業補助金(H26千葉県←厚生労働省)※高齢者の就労・社会参加促進 9,360千円
公開していない
〇 東京大学高齢社会総合研究機構
〇 独立行政法人 都市再生機構
〇 柏市 の3者が平成21年6月に柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会を発足、研究会を重ね、平成22年5月三者協定を締結
(1)在宅医療推進のための取組み
-柏市医師会を中心に3師会および訪問看護ステーション連絡会、栄養士会等が参加し、の在宅医療の研修を進めている。
① 一般社団法人 柏市医師会/ ② 一般社団法人 柏歯科医師会/ ③ 一般社団法人 柏市薬剤師会/ ④ 柏市訪問看護ステーション連絡会/ ⑤ 柏市介護支援専門員協議会/ ⑥ 病院ソーシャルワーカー/ ⑦ 柏市在宅リハビリテーション連絡会/ ⑧ 東葛北部在宅栄養士会/ ⑨ 柏市介護サービス事業者協議会/ ⑩ 地域包括支援センター/⑪ 社会福祉法人 柏市社会福祉協議会/⑫ 柏市ふるさと協議会連合会
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組合せ
-URがサービス付き高齢者向け住宅の事業者を募集、これに応募した㈱学研ココファンが拠点施設の整備を実施した。1階には診療所、薬局、在宅療養支援診療所、24H訪問看護・訪問介護施設、地域包括支援センター等の医療・介護サービスを組合せた包括ケア拠点施設が設けられている。
① ㈱学研ココファン -全体管理
② (社福)長岡福祉協会-訪問介護等を実施
③ スギメディカル㈱-訪問看護を実施
④ 豊四季診療所(豊四季台で既営業の診療所、施設整備を機に入居頂く)
⑤ くわのクリニック(訪問医療専門・在宅療養支援)
⑥ 豊四季ファーマシー(豊四季台で既営業のテナント)
⑦ 柏西口地域包括支援センター(7つの地域包括支援センターのひとつ-豊四季台・周辺を対象)
(3)高齢者の生きがい就労の創成
-当初は東大IOGと柏市とがコーディネート役であったが、これをシルバー人材センターに移管
① 柏農えん有限責任事業組合-高齢者の雇用先(働き先)
② 学校法人くるみ学園-同上
③ 杉浦環境プロジェクト㈱-同上
④ 東京海上日動ベターライフサービス㈱-同上
⑤ (社福)小羊会 特別養護老人ホーム 柏こひつじ園-同上
⑥ (公社)柏市シルバー人材センター:東大・柏市が行っていたコーディネート業務を引継ぎ実施
⑦ (一社)セカンドライフファクトリー:定年退職後の活動の情報収集・紹介/セカンドライフプラットフォーム事業を実施(求人情報/カウンセリング/紹介)
柏市(行政)、東京大学(学)、UR都市機構(民)の3者が協定を結び中心となって実証事業等に取組む。
①医療と介護に関する多職種の連携、地域医療拠点の整備等
②サービス付き高齢者向け住宅を豊四季団地内に整備するとともに一階に様々な医療・介護サービスを併設
③定年退職者のセカンドライフを豊かにするため、無理なく、楽しく、できる範囲で働き、地域課題の解決に貢献できる分野に高齢者が就労する仕組みづくり
(1)在宅医療推進のための取組み
柏市においては,行政である市が主体性を持って,医師会等の地域のキーパーソンと連携を取りながら,以下のとおり,在宅医療のための仕組・(全体構想)を描出し、このもとに具体の取組みを進めている。
① 主治医・副主治医制
主治医の訪問診療を補完する副主治医機能を設け,主治医・副主治医が相互に協力して訪問診療を提供するシステムを構築する(多くの診療所が少しずつ訪問診療を実施することで多くの患者を支えるシステムを構築、市が窓口を担い医師会を中心とした多職種による委員会が主治医・副主治医・多職種を推薦する。副主治医は在宅療養支援診療所等を中心に実施しており数的には少ない。)
② 病院のバックアップ体制の構築
在宅患者の急変時等への対応や在宅医療に向けてスムーズに患者の退院を進めるために,病院のバックアップ体制を確保することが必要になる。
③ 医療と介護に関する多職種の連携
平成24年度に市内の在宅医療・介護に関わる全関係者が一堂に会した「顔の見える関係会議」を設置し,年4回程度開催、医療と介護の連携を図っている。
④ 在宅医療研修の実施
柏市では医師会との共催で、東京大学の協力により、開業医が在宅医療に取組む動機付けを与えることを主たる目的とした研修会を開催、在宅医療を行う医師の増加、多職種連携を推進している。在宅研修を受けた医師のみが訪問リハビリの指示ができる。
⑤ 訪問看護ステーションの充実強化
在宅医療において主要な役割を担う訪問看護を強化すべく,24時間対応可能な様々な施策を実施している。
⑥ 情報共有システムの構築
在宅療養する市民を担当する主治医、副主治医、訪問看護師、介護支援専門員などが、レベルの高い情報セキュリティ環境のもとでタブレット端末を使用してリアルタイムで情報共有できる様々な機能を持つ情報共有システムを構築している。
⑦ 市民への啓発
在宅医療について市民の理解は十分ではなく,市としては,在宅医療の意義や可能性について,市民目線で,分かりやすく伝える努力をしている。
⑧ 地域医療拠点の整備
上記のような様々な取り組みを総合的に実施し,在宅医療を含めた柏市の地域医療を支える拠点として,地域医療拠点を豊四季台団地内に整備する(平成26年5月完成、施設開業)。
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組合せ
サービス付き高齢者向け住宅を豊四季台団地内に整備するとともに,様々な医療・介護サービスを同住宅建物の一階部分に併設することとしている。これらのサービスは,サービス付き高齢者向け住宅の居住者だけでなく,地域に展開していくことを公募の条件としており,豊四季台地域全体を支える拠点としての機能を果たす役割を持つ。平成26年5月豊四季台団地に拠点が整備・開設される。
(3)高齢者の生きがい就労の創成
生きがい就労とは,主に定年退職者のセカンドライフを豊かにするため,無理なく,楽しく,できる範囲で働き,地域や社会に貢献する「生きがい」と,慣れ親しんだ「働く」という生活スタイルを両立させ,セカンドライフを豊かにするための事業である。
具体的には,地域課題解決につながる分野として,①農業,②生活支援,③育児,④福祉,⑤地域の食の5分野を設定し,高齢者が就労するための仕組みづくりを行っている。
平成21年6月 柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会発足(柏市・東京大学・UR都市機構)
平成22年5月 三者(柏市・東京大学・UR都市機構)協定締結
平成24年度 「顔の見える関係会議」を設置、年4回開催中
平成26年4月 「柏地域医療連携センター(柏市,医師会,歯科医師会,薬剤師会が同居する地域医療を推進する拠点施設)豊四季台に開所(医師会等が建設、これを市に寄付、市で運営を行う)
在宅医療 生きがい就労
平成22年度: 0千円 0千円
平成23年度: 0千円 13,900千円(高齢者雇用に当初市が補助)
平成24年度: 2,396千円 6,008千円( 同上 )
平成25年度: 46,205千円 6,008千円( 同上 )
平成26年度: 57,362千円 9,360千円
(※地域医療拠点整備のため平成25年度、26年度に柏市はURの土地の賃貸料、備品、管理委託料等の支出となる。医師会等はURから市が賃貸した土地に建物を建設・寄付する)
社会福祉士(メディカルソーシャルワーカー):臨時職員1名(平成24年11月~)
臨床心理士 :臨時職員1名(平成26年 4月~)
看護師(介護支援専門員資格有り) :臨時職員1名(平成26年 4月~)
平成26年4月現在、プロジェクトで調達した人材は3名となっている
(1)官学民の連携による実行体制の確立
けるまちづくりについて検討する 『柏市豊四季台地域高齢社会総合研究会』 を,平成21年6月に発足、それぞれの役割は以下の通りである。
〇柏市(官)
・ 都市部において進む超高齢化の中でのまちづくりのあり方の検証
・ 自治体における高齢者が安心して元気に暮らすことができるまちづくりの具体化
〇UR都市機構(民)
・ 今後の超高齢化を迎える団地のあり方及びそのまちづくりの検証
〇東京大学高齢社会総合研究機構(学)
・ 人口の超高齢化に対応する社会,システム,技術の提案
・ 超高齢社会のトップランナーである日本における取り組みの検証と,世界への発信
(2)各事業の具体的な関係者
〇在宅医療の推進
・柏市医師会 ・柏歯科医師会 ・柏市薬剤師会 ・病院関係者
・柏市訪問看護ステーション連絡会 ・柏市介護支援専門員協議会 ・地域包括支援センター
・東葛北部在宅栄養士会 ・柏市在宅リハビリテーション連絡会 他
〇生きがい就労の創成
・柏市シルバー人材センター ・柏農えん有限責任事業組合(LLP) ・杉浦環境プロジェクト㈱
・学校法人くるみ学園 他6園 ・東京海上日動ベターライフサービス㈱
・特別養護老人ホーム柏こひつじ園 他6園 ・セカンドライフファクトリー
①事業横断の担当行政組織の設置
今回の取り組みに対して,平成22年度から行政が担当部署を設置し,医療から高齢者就労まで広く事業横断的に,また,庁内の関係部署も連携することで,順調に推進してきた。
②医師会、在宅ケア団体、高齢者就労等関係事業者との協力関係の確立
関係団体とも検討を重ねて,医療の面では,医師会をはじめとする在宅ケアに関する各団体と,就労の面では高齢者就労に理解をいただいた事業者と協力関係を築けた事が大きな強みとなっている。
③地域包括ケア構築の一環として、市町村(介護保険者)が在宅医療の推進に取り組むことが重要
救急医療や病院ベット数管理等の地域医療の施策は,県単位で推進されている。しかし,在宅医療に関しては,地域の診療所から訪問するため,県単位で把握することは難しい。また,医療と介護の連携を図る際,市町村が介護保険者であることから,都道府県からの支援を受けながら,関係団体と協力して市町村が積極的に推進する必要がある。そのため,プロジェクトを推進するための部署を庁内に設置し,必要な事業を推進した。
④多職種と行政との推進体制の構築後は、多職種における関係づくりとルールづくりの確立が必要
地区医師会と行政が連携しながら,関係団体も含めた強力な推進体制を構築することで,主治医・副主治医制や多職種による在宅ケアチームの編成等、市町村行政の管轄エリアの患者及びその家族が望む療養生活を実現することが可能となる。
病院内であれば、各専門職がひとつの法人組織の中で情報共有や症例検討が行われるが,在宅医療は多くの場合,各専門職が別々の法人に所属、チームを編成するため共通のルールが必要となる。そのため,各専門職団体の長で構成する連携WGを開催し、多職種連携のためのルールを策定し,実際の在宅患者に対して試行的な多職種連携ルールに基づいたケアを行い,それを検証、ルールの改善を繰り返して完成に至っている。
①市の在宅医療推進体制の整備とこれいよる病院・診療所の役割分担の確立
介護保険は市町村が保険者であり、在宅医療についても県がきめ細かには見られない。この点で主体性を持った在宅医療推進のための体制が整備されたことは大きな成果であった(在宅医療に対する負担を軽減するバックアップシステムの構築、在宅医療を行う医師等の増加と多職種連携の推進)
今後,高齢者(特に75歳以上高齢者)が増加するため、入院ベッドが高齢者で埋まってしまう状況になれば、救急医療体制にも影響が及ぶ。
そこで在宅医療を推進することで、急性期の治療を行なう病院と慢性期の治療を在宅で行なう診療所の役割分担ができ、医療政策の課題解決につながる。
②サービス付き高齢者向け住宅の整備とサービス活用による在宅ケアサービスの充実
「サービス付き高齢者向け住宅」のサービス基準は,安否確認サービスと生活支援サービスが必須となっているが,それ以上のサービスを付加することで,「サービス付き高齢者向け住宅」の住民への安心感と地域の在宅ケアサービス資源の充実に繋げている。
これらもサービスがあることでバリアフリー住宅に住む近隣住民は、医療,看護,介護が必要になった時でも、自宅に居ながら在宅サービスを組合せることで在宅生活を継続することができる。
また、事業者が「サービス付き高齢者向け住宅」を建設する際には、行政として24時間対応の在宅ケアサービスと連携することを提案することができる。
さらにリハビリテーション特区となることで、本来リハビリが必要な方に訪問リハビリを医師以外が提供できることによりサービス提供の頻度が高まり、寝たきり防止、充実した健康な生活を送ることが可能となる。
③高齢者の生きがい就労の創成による健康維持、介護予防
①農業,②生活支援,③育児・保育,④福祉の各分野は従事者が不足しており、地域課題となっていた。その不足部分を若者の就労機会を奪わない短時間勤務等高齢者の生きがい就労で補っている。また、これまでフルタイムで働いていた高齢者にとっても、地域(人)との関わりを持つためのきっかけや就労による外出機会の創出により生活リズムが整う等の効果があり、健康維持や介護予防にも繋がっている。
プロジェクトの開始時に、フィールドとなった豊四季台団地周辺地域を対象に説明会を実施し、事業の概要や将来像を示した。
在宅医療の推進については専門的な分野のため、体制の構築やシステム開発に地域住民が関わる余地は無かったが、関係者の連携強化を目的とした「顔の見える関係会議」では、自治会関係者も集めて議論に参加いただいた。
啓発活動では、在宅ケアを必要とする高齢者と関わりの深い民生委員や地区社協職員、健康づくり推進員等の制度ボランティアに対して、市内全地域で行われている会議の際に時間をいただき、当該プロジェクトの説明を行った。同時に、市報やホームページで掲載したほか定期的に織り込み広告を市報と共に全世帯に配布している。
その結果,平成26年4月に開所した「柏地域医療連携センター(柏市,医師会,歯科医師会,薬剤師会が同居する地域医療を推進する拠点施設)」では,在宅医療を始めとする医療・介護にかかる相談が毎月90件ほど入るようになっている。
平成26年5月に開所した豊四季台のサービス付き高齢者向け住宅の入居に際しては、「豊四季台地域」→「柏市内」→「市外」という順で段階的に募集をかけたため、住み慣れた近隣地域からの住み替えが多い(柏市内61%,そのうち豊四季周辺地区は21%)。
生きがい就労では、地域の高齢者が自転車や徒歩で通勤できる範囲で仕事を見つけることで定期的な外出が確保される。その効果は、時間を守り、身だしなみを整えることで生活リズムが整う、通勤及び就労が適度な運動となり介護予防に繋がる、適度な運動が空腹を誘い規則正しい食生活となる、職場の同僚や関係者と知り合い新たなコミュニティーが生まれる、就労で得た収入で趣味等の活動が充実するなど、一石が何鳥にも拡がっている。
その他、団地の建替えに合わせて公園整備を行った際、新たな公園のあり方、活用の仕方、管理の仕方を学ぶ「公園づくり勉強会」を開催し、豊四季台周辺地域の住民約30名が平成23年度から平成24年度に掛けて7回参加し、そこで提案された案を参考に新しい公園が設置された。
公園が完成した時点で「公園づくり勉強会」は解散したが、その後「まちづくり連絡会」に発展し、当該プロジェクトに関する施策を地域に伝える役割を担っている。
いずれも地域住民が参加する契機がうまくその後の住民参加型の活動に結びついている。このように住民の積極参加が地域でみられるようになっている。
①在宅医療推進のための取り組み
•市民に対して行政と医師等の専門職が手を組んで啓発することにより、在宅医療に関する理解を広く普及させることが可能となる。さらなる進展のためにも医師会と行政との一層の連携が必要である。
②高齢者の生きがい就労の創成
・事業者にとっての採算性を確保し、高齢者就労の事業モデルを確立する。
・地域の同業他者に対する啓発活動を行ない,雇用の場及び高齢者就労の拡大を図る。
・生きがい就労事業を統括する就労支援組織(例:シルバー人材センターなど)のあり方について検討が必要。
①在宅医療推進のための取組み
•医師会と行政が緊密に連携することにより、関係団体も含めた強力な推進体制を構築し、点ではなく面としての展開を実施していく。
②高齢者の生きがい就労の創成
・求人の多い業務については、就労高齢者の事前研修などを行い、予め事業者が求めるスキルを習得してから就業することや、早朝や夜間の正職員の残業となる時間帯に短時間の就労高齢者を充てること等の工夫で、採算性の取れる事業モデルを確立していく。
・上記で確立した採算性の取れる事業モデルを以って、保育関係であれば保育園や幼稚園の連絡会で、福祉施設であれば介護事業者の連絡会等で営業の機会をいただき、地域の同業他者に対する啓発活動を行ない、雇用の場及び高齢者就労の拡大を図っていく。
・上記の営業活動は、高齢者就労に長けた事業者が行うことが望ましく、生きがい就労事業を地域で定着させるためには地域のシルバー人材センターとの連携は避けることができない。シルバー人材センターは、請負(委任),職業紹介,派遣等により事業者と就労高齢者を繋ぎ、多様な働き方を実現することが出来ることから、就労を希望する高齢者の募集、高齢者の求人を希望する事業者の募集、両者を繋ぐコーディネートについて行政と検討を行っている。
(1)在宅医療推進のための取り組み
医療施策はすべて都道府県の領域ではない。特に在宅医療は対象範囲が2次医療圏よりも小さい地方自治体のエリアであること、在宅医療を利用する患者は通院ができないので高齢者であれば必ず介護保険の認定も受けることから、介護保険の保険者である地方自治体が在宅医療の推進役となる国の方向性が定まれば、柏市方式(行政と地区医師会の連携による推進体制)の他地域への展開が可能となる。
(2)高齢者の住まいと医療・介護サービスの組み合わせ
サービス付き高齢者向け住宅を誘致する際に、研究会が採用したような公募を他の地域でも実施することができる。
公募の条件は、その地域によって充足しているサービス、不足しているサービスを把握した上で検討することが必要となる。
(3)高齢者の生きがい就労の創成
地域課題を把握した上で、高齢者の就労が解決の一助になることを事業者に提案することが必要となる。
その際、柏市で行なった分野であれば、就労モデルを提案することが可能である。
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