1. プロジェクト名
雲南市小規模多機能自治による持続可能型“絆”社会の構築(島根県雲南市)

2. 概要

【背景・課題、目的・目標】
雲南市は過疎地域に指定されており、人口は右肩下がりに減少、高齢化率もH22の32.9%から平成32年には約4割に達し、島根県の10年先、全国の20年先を行く高齢化先進地域である。平成16年に6町村の対等合併により雲南市が発足したが、人口減少・少子高齢化により地域社会崩壊の危機に直面していた。このようななかで行財政基盤の確立と「地域崩壊」の危機を「住みよい地域づくり」を目指す契機とし、“豊かさ”を実感できた昭和の大合併以前のかつての“ムラ”型地域社会を再興することとした。この地域社会は、住民一人ひとりの個性と力を発揮する、市民が主役の協働型社会となることを目指した。具体的には以下の2点である。

◆ 集落機能を補完する新たな自治組織の確立
◆行政主導ではなく地域の主体性に基づき自治組織が活躍できる環境づくり

【取組内容】
①新たな地域づくり組織として地縁組織「地域自主組織」の組織化
平成16年11月の雲南市発足後、概ね小学校区域で自治会や町内会の地縁組織、消防団や営農組織等の目的型組織、これにPTA,高齢者や女性の会など属性型組織を一体化した広域的な地縁組織=「地域自主組織」への再編を雲南市から各地域に促していった。地域自主組織はそれぞれの集落の課題に対応して活動がはじまり、平成17年~19年にかけて各地域で自主組織が設立され、19年には市内全域で結成を完了、現在30組織を数える。
②まちづくり基本条例の施行、活動拠点「地域交流センター」
平成20年には自治基本条例を制定、雲南市のまちづくりの基本姿勢である”協働のまちづくり”を掲げるとともに、協働の仕組みとして「地域自主組織」を位置づけた。同時にそれまで各地域にあった公民館を、地域自主組織の活動拠点とするため、地域の「交流センター」とする構想を雲南市が打ち出し、準備期間を経て平成22年から交流センターに移行、地域活動の拠点とした。公民館は生涯学習の活動拠点であったが、これを交流センターとすることで所管も教育委員会から市長部局へ変更し、幅広い市民活動の拠点となった。
各地域自主組織ではそれぞれの課題解決のための特徴ある事業が実施されている。
③地域自主組織の活動基盤の強化と小規模多機能自治の確立
その後、平成25年度からは各地域自主組織を公設の交流センターの指定管理者にして一定のルールに基づき交付金を交付、一定の活動資金の支援を行い、持続性・安定性を担保している。また、交流センター配置職員についても地域での直接雇用方式へ切り替え、社会福祉協議会で組織していた地域福祉活動組織等も地域自主組織に一体化するなどあらゆる地域での取組が地域自主組織での活動となるよう地域自主組織の体制を強化、小規模多機能自治の仕組みを整えた。
④地域委員会の発展的解消による『地域円卓会議』の導入
地域自主組織とは別に旧町村単位のまちづくりの提言等を行う地域委員会も一定の役割を果たしてきたが、地域自主組織の成熟とともに地域委員会の役割はこれと重なる部分が大きくなり、より直接的に市民と行政の協働により課題を解決していくため、地域委員会を発展的に解消、地域と行政の対等での協議の場として『地域円卓会議』を設置した。
ほとんどの地域自主組織には、地域づくり、地域福祉、生涯学習を中心に専門部があり、「地域円卓会議」により、防災や地域福祉、生涯学習・社会教育の推進方法など一定のテーマについて、市の各分野所管部署と対等な立場で直接協議するのを特徴としている。

【成功要因】
①集落を考慮した適正な規模と一人1票制で個人が参加しやすい地域自主組織
地域自主組織は概ね小学校区であるが、子どもの時からの結びつきやお互いの人間関係が一定程度あり、一定の人材・資源も見込める適度なバランスを保てる範囲である。加えて、地域自主組織では一人1票制の考え方のもと、老若男女がそれぞれの持てる力を発揮し、多種多様な地域課題を自らの力で解決していこうと取り組んでいる。
②幼少期からのふるさと学習で育まれた地域への愛着
幼少期からふるさと学習を通じて地域への誇りや愛着をもち、住民一人ひとりが自らの地域は自らで守り、創ろうとする意識を共有、地域の多様な人材の交流と協働がある。
③地域住民が自ら決定し、行動する住民主導の組織であること
地域自主組織はイベント型ではなく、地域課題解決型の組織であり、住民自らが地域課題を把握し、その解決を図ろうとするものである。地域課題の優先順位、課題解決の事業展開等地域住民が決議し、住民意思に基づき活動する住民が主役の組織となっている。その結果地域の創意工夫による課題解決の多様な活動が生まれている。
④資金面や運営面での地域の自主性を育む体制
地域自主組織の活動を支援するため指定管理料および地域づくり活動交付金を交付し、各地域の運営資金を一定程度支援している。地域自主組織ではこれら資金を事業支出等にあてており、事業選定も地域主導であり、交流センター職員も地域が直接雇用している。これにより、地域自主組織がプロセスと結果に対しその責任を持つ体制となっており、資金も含めた地域の創意工夫が生まれ、地域の自主性を取り入れた効率的・効果的な運営が行われている。
⑤「地域円卓会議」を活用した地域課題解決事業に関する情報共有
まちづくりは、地域か行政あるいは第三者がそれぞれ必要な役割を果たすべきという考えのもと、地域自主組織の専門部署と市の所管部署が直接、対等に、「地域円卓会議」で、各地域課題を共有した上で、建設的に議論を深めている。また、地域福祉や地域防災等分野別の「円卓会議」において、地域横断的に各地域で実施した活動成果の発表を行うことで各地域の事業内容・成果を共有し、他地区での事業展開の参考に資することが可能となる。

【成果】
①地域自主組織による地域課題に即した創意工夫の活動の実践
市では各地域で取組む活動の柱として、地域づくり、地域福祉、生涯学習の主要3本柱を掲げ、それぞれの地域課題に応じた取組みを促した。その結果、地域住民の課題解決に向けた創意工夫ある多様な取組が生まれている。また、自治会、営農組織や消防団、PTA、女性団体など地域内の多様な主体が参加し、執行体制(役員体制)、議決機関、監査機関があり、自治組織体制が確立されてきている。
<具体の取組例>
・市から水道のメーター検針を受託し、毎月各世帯を訪問する際に声掛けをすることにより、地域の安心安全見守りを継続的に実施(独居高齢者などに緊急通報用の携帯電話を配布し、緊急時の安全の確保、日常生活の不安事や相談への24時間対応で常時役員が携帯、住民の安心安全確保につなげている-地域自主組織「躍動と安らぎの里づくり鍋山」)
・JAの空き店舗を活用し、地元農産物の産直市場を開設し、日用品等も扱うことで高齢者の買い物支援を行うとともに、住民の憩いのスペースを設置し、住民の触れ合い、憩いの場を提供し、地域住民から非常に喜ばれている(この市場は“笑んがわ市”と称し、地区外からの立ち寄りも増えるなど、賑やかな縁日の様相を呈しており、黒字経営である)
②活動拠点の設置や指定管理の受託等による地域自主組織の活動強化
地域自主組織の運営、活動を進めるため、行政(市)からは一定のルールに基づく財源(自由度の高い交付金)を交付しているが、各地域では、会費負担の徴収やコミュニティビジネスへの展開などにより積極的に自主財源の確保に努めており、安定的に事業を継続・発展できる持続可能な仕組みを創出している。
③成果の向上及び成長できる仕組みを構築
地域と行政(市)が『地域円卓会議』を通じて、地域福祉や防災、生涯学習・社会教育をはじめとする様々な地域課題の解決を協働により図っていく仕組みを導入しており、お互いに毎年少しずつであったとしてもスパイラル的に成果向上に繋がる、成長できる仕組みを構築している。

【今後の課題・展開等】
①行政(市)で担っていた領域を従来の行政コストの範囲内で地域自主組織が担うモデルも考えられ、一部の地域からは、住民票の発行、行政文書の取次ぎ等を取り扱いたいとの希望が出ている。こうした動きが実現した場合、公共サービスの役割分担を見直す契機となり、行政のあり方、自治のあり方そのものの最適性を追求できるようになる可能性を持つ。
②地域の活動拠点である29の交流センターの今後の施設整備計画(整備基準、建替え・改修等の優先性の判断、個別施設の今後の方針など)を各地域からの意見も反映して行政(市)で策定した。この中で超高齢化社会への対応を考え、平屋建てを基本に、複層階にせざるを得ない場合は集会室をできるだけ1階にすることとしたほか、原則木造とし、内装の木質改装とする方針を打ち出した。また、木造化にあたっては、地域産材や雲南市産材の利用を優先することとした。
③地域自主組織が任意団体のままでは抱えきれない課題が生じてきている(契約行為が代表者の私的契約となってしまう、多額の金額の扱いが個人責任になってしまう、寄付控除ができず寄付金が集まらない等)ことから、他の自治体とも共同で「スーパーコミュニティ法人」の制度創設を提言、実現を目指している。

「絆」社会の構築(雲南市).pdf

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

雲南市は過疎地域に指定されており、人口はH22年までの5年間で5.6%減少し、さらに右肩下がりに減少していくと推計されている。また、高齢化率はH22の32.9%から平成32年には約4割に達し、概ね20年後には現役世代と高齢世代の人口差が1千人程度に縮小すると推計され、島根県の10年先、全国の20年先を行く高齢化先進地域である。
平成16年に6町村の対等合併により雲南市が発足したが、行財政基盤の確立と「地域崩壊」の危機を「住みよい地域づくり」を目指す契機とし、“豊かさ”を実感できた昭和の大合併以前のかつての“ムラ”型地域社会を再興することとした。この地域社会は、住民一人ひとりの個性と力を発揮する市民が主役の協働型社会となることを目指した。

4. プロジェクトの達成目標

“豊かさ”を実感でき、持続可能な”絆”社会の構築のための具体的目標は下記の通り。
◆ 集落機能を補完する新たな自治組織(地域自治組織)の確立
◆ 行政主導ではなく地域の主体性に基づき自治組織が活躍できる環境づくり

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

・「まちづくり」の原点は、主役である市民が自らの責任により主体的に関わること。これに、”協働のまちづくり”をその基本姿勢としてまちづくり基本条例に掲げ、地域自主組織の設立・活動を促してきた。その結果、地域自主組織は地域課題解決のために大きな役割を果たすようになった。一方で、旧町村のまちづくりの推進や提言を行うため地域委員会を設置、区域の地域振興のための計画や事業の実施を行ってきた。しかし、地域自主組織が成熟・地域の中心の役割を担うようになると、地域委員会と地域自主組織との重複の問題が生じてきた。すなわち、市全体および町全体の自治会連合組織と地域の自治組織である地域自治組織の役割について競合性(ダブり)が生じてきた。
・そこで、2012年地域委員会についての検証を実施した結果、それまであった市全体、町全体の自治会連合組織(地域委員会)は発展的に解消、地域自主組織の連合体が地域の代表的役割を担い、そのぞれの地域自主組織の専門部と市行政部局が対等の立場で議論をする『地域円卓会議』が組織された。

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

規制は特にない

7. 上記規制をどう解決、回避したか

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

特になし

9. 補助金に対する報告書のファイル

なし

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

・それぞれの自治地域の人材(地域自主組織を支える人材) …年代や性別、活動が異なる様々な組織や団体が地縁でつながり、連携を深めることでそれぞれの長所を生かし、短所を補完しあうことで地域課題を解決、自地域の振興・発展をはかるこれらの取組に参加する人々。人材育成研修、協働研修についても実施。
・地域相互に具体的に活動内容を発表し合う「地域自主組織取組発表会」を毎年開催。

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

・IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者 川北秀人さんをはじめ、学識者、識見者の方々からアドバイス等をいただいた。

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

国立大学法人 島根大学と包括連携協定を締結し、行政(市)が仲介することにより、大学側には中山間地域のフィールド演習の場として各地域自主組織の活動の場・ビジネスを提供し、各地域は学生の力を活用して活動推進に役立てている。
また、知と智の地域づくり事業として、早稲田大学理工学部建築学科の研究室と協力して事業を展開しており、廃校活用方法の検討、ワークショップ方式によるセルフビルド方式の活動拠点整備手法を実践し、研究室にはフィールド実務演習の場を提供している。

こうした活動は毎年度継続的に実施しており、これまでの活動の積み重ねにより、地域の夏祭りに、毎年複数の大学生が自発的に参加するようになるなど、継続的な交流の推進に役立っている。なお、こうした大学との連携は、今後も継続的に実施していく。

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

(1)新たな地域づくり組織として地縁組織「地域自主組織」の設立
平成16年11月の雲南市発足後、新たな集落の地域づくり組織として「地域自主組織」の組織化を、概ね小学校区単位で雲南市から各地域に促していった。地域自主組織は自治会・町内会等の地縁型組織に加え、消防団・営農組織・文化サークル等の目的型組織、そしてPTA・女性グループ・高齢者の会等の属性型組織など年代や性別、活動の異なる様々な組織や団体が地縁で繋がり、連携を深めることにより、それぞれの長所を活かし、短所を補完しあうことで地域課題を解決し、地域の振興・発展を図るものである。このため地域自主組織は1世帯1票ではなく1人1票制とし、幅広い世代が関わることができるようにしている。
平成17年以降、それぞれの集落の課題に対応して各地域で自主組織が設立され、その活動は多岐にわたっていった。そして平成19年にはこれらの住民発意による「地域自主組織」が市内全域で結成された。
(2)まちづくり基本条例の施行、「公民館」から活動拠点「地域交流センター」へ
平成20年には自治基本条例を制定、雲南市のまちづくりの基本姿勢である”協働のまちづくり”を掲げるとともに、協働の仕組みとして「地域自主組織」を位置づけた。また、それまで各地域にあった公民館を地域自主組織の活動拠点とするため、地域の「交流センター」にする構想を雲南市が打ち出し、準備期間を経て平成22年から交流センターに移行し、地域活動の拠点とした。公民館では所管が教育委員会であったこともあり、生涯学習に利用されてきたが、交流センターに移行することにより「地域福祉」や「地域づくり」までも含めた幅広い市民活動の拠点として機能するようになっている。
また、交流センターのセンター長、センター主事等は雇用協議会で任命しており、地域の自主性を重んじた組織体制となっている。
(3)地域自主組織の活動基盤の強化と小規模多機能自治の確立
その後交流センターの検証を実施した結果として、平成25年度からは各地域自主組織を公設の交流センターの指定管理にして一定のルールに基づき交付金を交付、活動の予算措置を講じ、持続性・安定性を確保している。また、交流センターの配置職員も地域の直接雇用方式に切り替え(従来は雇用協議会を組織して雇用)、併せて人員体制を拡充するとともに、社会福祉協議会で組織していた地域福祉活動組織も地域自主組織に一体化し、地域自主組織が活動の中心となるよう地域活動の体制を強化した。
④地域委員会の発展的解消による『地域円卓会議』の導入
合併前の町村単位にまちづくりの推進や提言を行う地域委員会を設けていたが、地域自主組織の活動が展開されるとともに地域委員会の役割は希薄化したことから発展的に解消し、地域と行政とが対等で協議する場として「地域円卓会議」を設置した。各地域自主組織の専門部と行政(市)の各主管部局が、対等かつ直接対話方式で、地域自主組織と同じ卓を囲み地域横断的に協議していくことを特徴としている。

14. スケジュール(行程表)

平成16年度  雲南市発足後、概ね小学校区単位での組織化(地域自主組織)を市より各地域に促す
平成19年度  住民発意により市内全域で「地域自主組織」が結成
平成22年度  公民館を交流センターに移行し、地域活動の拠点に再編
平成25年度  地域の課題に対処するため、交流センター配置職員を地域の直接雇用方式に切り替え
   同   地域自主組織(市民)と行政の協働により課題解決していくための「地域円卓会議」を設置

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

プロジェクトに係る予算 
 地域づくり活動等交付金、指定管理料合計 年総額約2億4千万円(1地域800万円、30地区)。
 

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

特になし

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)

〇地域委員会を発展的に解消、地域自主組織を中心とする運営
〇「地域円卓会議」により地域自主組織及び市の各所管部署と対等な立場で直接協議
-地域自主組織には、地域づくり、地域福祉、生涯学習など専門部があり、防災や地域福祉、生涯学習・社会教育の推進方法など一定のテーマについて、市の各分野所管部署と対等な立場で直接協議する体制をとっている。地域自主組織・市の双方が共通認識を持ち、対等な立場で建設的に協議するが特徴である。

18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

①集落を考慮した適正な規模と一人1票制で個人が主役の地域自主組織
地域自主組織の範囲は概ね小学校区であり、子どもの時からの結びつきが強く、お互いの人間関係が一定程度ありつつ、一定の人材・資源も見込める適度なバランスを保てる範囲で団体を結集しやすい範囲である。これに加えて、地域自主組織では一人1票制の考え方で個人参加型となっており、老若男女がそれぞれの興味で持てる力を発揮し、多種多様な地域課題を解決すべく取組むことが可能である。
②幼少期からのふるさと学習で育まれた地域への愛着
幼少期から地域におけるふるさと学習を通じて地域への誇りや愛着をもち、住民一人ひとりが自らの地域は自らで守り、創ろうとする意識を持つ地縁型社会が形成されており、地域の多様な人材の交流と協働に繋がっている。また、地域の課題解決に取組むことが地縁社会のきずなをさらに強くしている。
③地域住民が自ら決定し、行動する住民主導の組織であること
地域自主組織はイベント型ではなく、地域課題解決型の組織であり、住民自らが地域課題を把握し、その解決を図ろうとするものである。地域課題の優先順位や事業展開にあたっては、地域住民が皆で決議し、住民意思に基づき決定する住民主役の組織となっている。その結果、地域の創意工夫による課題解決の多様な活動が生まれてきている。
④資金面や運営面での地域の自主性を育む体制
地域自主組織の活動を支援するため指定管理料および地域づくり活動交付金を交付し、各地域の資金手当を一定程度支援している。地域自主組織ではこれら資金を事業支出等にあてている。その際の事業の選定も地域主導であり、また交流センター職員も地域の直接雇用としている。これにより、地域自主組織がプロセスと結果に対しその責任を持つ体制となっており、資金も含めた地域の創意工夫が生まれ、地域の自主性を取り入れた効率的・効果的な運営が行われている。自主性を育む仕組が、地域自主組織のさらなる効率的運営や新たな住民サービスの提供等事業の開発意欲に繋がっている。
⑤「地域円卓会議」を活用した地域課題解決事業に関する情報共有
まちづくりは、地域か行政あるいは第三者のいずれかが担うものではなく、それぞれが必要な役割を果たしていくべきであるという基本的考えのもと、地域自主組織の専門部署と市の所管部署が直接、対等に、「地域円卓会議」で協議する方式を採用している。これにより、市と地域および地域間で各地域課題を共有した上で、建設的に議論を深めていくことが可能になる。また、地域福祉や地域防災等分野別の「円卓会議」において、各地域で実施した成活動成果の発表会を行っている。これにより各地域の事業内容・成果を共有し、他地区での事業展開の参考に資することが可能となっている。
こうした取り組みは、過疎地域という条件不利地域であっても、それぞれの地域が輝き、住民一人ひとりが自らの住む地域に誇りを持って暮らせる地域社会をつくろうとするものであり、全国共通課題の少子高齢化社会における社会モデルとしての波及効果は大いにある。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

①地域自主組織による地域課題に即した創意工夫の活動の実践
市では各地域で取組む活動の柱として、地域づくり、地域福祉、生涯学習の主要3本柱を掲げ、それぞれの地域課題に応じた取組みを促した。その結果、地域住民の課題解決に向けた創意工夫ある多様な取組が生まれている。また、自治会など地縁型組織、営農組織や消防団など目的型組織、PTA、女性団体など属性型組織等地域内の多様な主体が参加し、執行体制(役員体制)、議決機関、監査機関があり、自治組織体制が確立されてきている。

<取組み例>
・市から水道のメーター検針を受託し、毎月各世帯を訪問する際に声掛けをすることにより、地域の安心安全の見守りを継続的に実施。自主財源を確保しつつ、創意工夫によるきめ細かな安心安全サービスを提供。また、独居高齢者などに緊急通報用の携帯電話を配布し、緊急時の安全を確保しつつ、緊急時だけでなく日常生活の不安事や相談にいつでも対応するために24時間常時役員が携帯し、操作の習熟と住民の安心安全確保につなげている。(地域自主組織「躍動と安らぎの里づくり鍋山」)
・JAの空き店舗を活用し、地元農産物の産直市場を開設し、日用品等も扱うことにより特に高齢者の買い物支援を行っている。併せて、地域住民の憩いのスペースを設置し、飲み物を百円・お替り自由で提供し、高齢化の進展によって触れ合う場が少なくなった住民の触れ合い、憩いの場を提供し、地域住民から非常に喜ばれている。この市場は“笑んがわ市”と称し、山間部にも関らず今や漁港から自発的に産地直送の魚介類も出店するようになり、地区外からの立ち寄りも増えるなど、賑やかな縁日の様相を呈している。過疎地域の自立運営は通常は難しいところであるが、経済循環が成立しており、黒字経営が続いている。(地域自主組織「中野の里づくり委員会」)
・そのほか、通学合宿や地域づくり講座、預かり保育、神楽や太鼓などの地域文化の伝承、自主防災活動、高齢者宅への配食サービス、田舎料理レストランの開設、都市部との交流など、多種多様な創意工夫による活動が展開されるようになった。

②活動拠点の設置と指定管理の受託等による持続性ある取組
地域自主組織の運営、活動を進めるため、行政(市)からは一定のルールに基づく財源(自由度の高い交付金)を交付しているが、各地域では住民からの会費負担の徴収、コミュニティビジネスへの展開などにより積極的に自主財源の確保に努めており、安定的に事業を継続・発展できる持続可能な仕組みを創出している。
③成果の向上と成長できる仕組みを構築
地域(自主組織)と行政(市)が、地域円卓会議を通じて地域福祉や防災、生涯学習・社会教育をはじめとする様々な地域課題の解決を協働により図っていく仕組みを導入しており、お互いに毎年少しずつであったとしても、スパイラル的に成果向上に繋がる、成長できる仕組みを構築している。

20. プロジェクトによる地域の変化

①行政(市)では、地域自主組織の活動拠点として公設の「交流センター」を全ての地域に設置し、地域自主組織が指定管理を受託することにより指定管理料等を受け、各地域自主組織では自己財源と合わせ、地域自らが地域人財を雇用し地域運営にあたっている。こうした仕組みにより、地域課題を解決しようとする様々な地域主体による住民サービスが生まれてきており、いわば新しい公共というような新産業の創出に繋がってきている。
②住民一人ひとりがその地域に生まれ、育ち、暮らすことに誇りを持ち、物質的な豊かさだけではなく心の豊かさも兼ね備えた持続可能性のある社会の構築を目指し、課題の解決や創造的活動に取り組もうとする意識が芽生えている。

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

本取組みは、様々な分野において地域課題の解決に繋がるものであるが、さらに行政の役割を代替する期待も出てきている。
①行政(市)で担っていた領域を従来の行政コストの範囲内で地域自主組織が担うモデルも考えられ、一部の地域からは、住民票の発行、行政文書の取次ぎ等を取り扱いたいとの希望が出ている。
行政(市)では、こうした事案に対応できるかどうか幅広く検討していくが、こうした動きが実現した場合、公共サービスの役割分担を見直す契機となり、行政のあり方、ひいては自治のあり方そのものの最適性を持続的に追求できるようになる要素をはらんでいる。
②人口減少に対応していくため、空き家改修による住宅確保と雇用の場として地域自主組織を基盤に、子育て世代のUIターン者の移住といった展開も徐々に出てきている。
③平成24年度には地域の活動拠点である29の交流センターの今後の施設整備計画(整備基準、建替え・改修等の優先性の判断、個別施設の今後の方針など)を各地域からの意見も反映して行政(市)で策定した。この中で超高齢化社会への対応を考え、建て替える場合は平屋建てを基本に、複層階にせざるを得ない場合は集会室をできるだけ1階にすることとしたほか、建て替える場合は原則として木造とし、改修する場合も内装の木質改装を検討する方針を打ち出した。さらに、地域密着型の施設であることも考慮し、木造化にあたっては、地域産材、もしくは雲南市産材の利用を優先するとともに、伐採、建築、植樹、育樹といった一連の循環型サイクルを教育面でも活用するよう計画に盛り込んだ。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

分野別の地域円卓会議や各地域自主組織と行政(市)とで直接対話を重ね、相互に課題を把握しながらお互いに解決策を考え、毎年改善を繰り返し、地域の最適性を追求していくこととしている。これにより、市民サイドの地域の最適性だけでなく、行政(市)の最適性も追求することができ、結果的に市民が主役となった地域全体の最適性をその時代に合った形で追求していくことが可能になる。
 その結果、市民一人ひとりが“このまちに生まれ、育ち、暮らすことに誇りをもつ”社会にしていけるよう、歩みを止めることなく取り組んでいくことが可能となる。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

取組みは、そこに住民がいる限り、どの地域においても導入可能な仕組みであり、普遍的要素を備えている。
とりわけ、高齢化の進行が世界的に先行している日本、そして日本の中でも雲南市が20年先行する中、取組みは“まちづくりの原点は一人ひとりの住民にある”という住民自治の原点と、その地縁による集合体としての地域自治、そしてその集合体としての行政区域における自治体としての団体自治とが相互に補完し合おうとする“協働自治”モデルであり、今後の自治の基本モデルとなり得るものである。

24. その他関連情報、資料

・地域自主組織は任意団体のままでは抱えきれない課題が生じてきている(契約行為が代表者の私的契約となってしまう、多額の金額の扱いが個人責任になってしまう、寄付控除ができず寄付金が集まらない等)ことから、他の自治体と共同で「スーパーコミュニティ法人」の制度創設を提言している。
・全国的にこうした仕組みを推進していくため、全国ネットワーク組織の設立を平成27年2月に設立した。