1. プロジェクト名
「70歳現役社会づくり」(福岡県)

2. 概要

【背景・課題、目的・目標】
少子・高齢化は世界に類を見ないスピードで進行しており、社会保障制度を維持するための現役世代の負担は増え続け、社会経済の活力喪失が危惧されている。
今日の高齢者は、非常に元気で意欲的である。元気で、社会に貢献をしたいと考えている多くの高齢者に応えるためにも長寿社会の新しいモデルを創ることが求められている。
このプロジェクトの目的は 「70歳現役社会」の実現であり、以下のを施策の2本柱とし、「いつまでも活躍し続けるための土台づくり」「社会全体の意識改革」「高齢者が活躍できる環境整備」に取り組むものである。
①年齢にかかわりなく、それぞれの意思と能力に応じて、働いたり、NPO・ボランティア活動で社会で活躍し続けることができる選択肢の多い社会「70歳現役社会」の実現を目指す。これにより高齢者を「支えられる側」から「支える側」に転換し、豊かで活力ある新しい長寿社会を実現する。
②「いきいきと働くことができる仕組みづくり」と「共助社会づくりへの参加促進」

【取組内容】
従来、高齢者の就業と言えば「ボランティア的な就労」が中心であったが、高齢者の多様なニーズに応えるためには企業などで「現役」として活躍しつづけることができる「就業支援」に向けた施策が欠かせない。「福岡県70歳現役応援センター」では、高齢者と企業のそれぞれから、希望する仕事、求める人材について相談に応じ、きめ細かなコーディネートを行うことで成果を挙げている。取組は以下の通り。
(1) 官民が連携した「福岡県70歳現役推進協議会」の創設
平成23 年9 月、官民一体となって「70歳現役社会」づくりを推進することを目的に地元経済団体、労働者団体、高齢者関係団体、NPO・ボランティア団体、行政の計17 団体により「福岡県70歳現役推進協議会(会長:福岡県知事)」を創設した。
協議会は、① 「70 歳現役社会」の実現に向けた施策の協議、② 「70 歳現役社会」に関する啓発、③ 規制緩和や政策提案など政府への提言活動
 の役割を担い、参加組織やその傘下団体は、率先して「70歳現役社会づくり」に取り組むこととする。
(2)全国初・高齢者のための総合支援拠点「福岡県70歳現役応援センター」開設
平成24年4月福岡市に全国初・高齢者のための総合支援拠点「福岡県70歳現役応援センター」をオープン。①高齢者の活躍の場の拡大、②就業・社会参加支援、③社会の意識改革、④「ふくおか子育てマイスター」の認定 の4つに取り組んでいる。
平成25年5月「北九州オフィス」を、平成27年6月「久留米オフィス」、「飯塚オフィス」を開設、県内4地域すべてに相談体制を整備し、下記を実施。
1)高齢者の活躍の場の拡大-応援センター職員が企業を訪問し、「高齢者向けの求人開拓」や、「70歳まで働ける企業の開拓」を行っている。。
・企業を訪問して高齢者雇用の有用性、優良事例、助成金制度等を説明し、「70 歳まで働ける制度」の導入を働きかけ。「70 歳まで働ける制度」を導入した企業に対し、県の入札参加資格審査において加点する制度を導入・実施(平成25 年度から)。
2) 就業・社会参加支援
・専門相談員が、高齢者の経歴や技能、希望などを聴き、一人ひとりに適した再就職先やNPO・ボランティア活動など、多様な選択肢を提案・仲介
3) 社会の意識改革
商工団体の経営指導員などを対象に高齢者雇用の有用性などをテーマとしてセミナーを開催、一方で企業経営者や人事担当者を対象に優良事例、人事給与制度の改善・助成例を説明するなど労使両面から意識改革を進める。
4)「ふくおか子育てマイスター」の認定
豊かな経験を持つ高齢者に、地域の子育て現場で活躍してもらうため、最新の保育知識等に関する研修(7日間)を実施、修了者に認定証を交付。 
(3) 高齢者の知恵と活力を地域活性化や過疎化対策などの解決に生かす補助制度「70歳現役社会づくりモデル地域事業」を創設(平成24年度)。
(4) 高齢者のためのNPO・ボランティア情報サイト 「生きがいづくりナビ」の開設(高齢者向けNPO・ボランティア団体の登録、高齢者が参加しやすいボランティア体験会の案内など)
(5)「九州・山口“70歳現役社会づくり”研究会」の設置
福岡県が取り組んでいる」「70 歳現役社会づくり」を、「九州・山口“70 歳現役社会づくり”研究会」を設置することが九州知事会で決定した。

【成功要因】
①経済団体、労働組合等関係団体を集めた研究会での徹底した議論
検討にあたって、学識経験者や経済団体、労働組合、高齢者関係団体の代表による研究会を設置、国会議員(自民党、民主党、公明党の代表)や経済界、労働者団体の有識者も参加して、活発な意見交換を行った。1年間にわたり議論を重ねることで、事業の方向性を固めるだけでなく、官民一体となって「70 歳現役社会」の実現に取り組む気運の醸成を図った。
こうした取組の成果のもとに、平成23年9月に「70 歳現役社会推進協議会」を設立、官民一体となった強力な推進体制が構築された。
②応援センターによるきめ細かなコーディネート
「地域の高齢者や企業のニーズを十分把握し、例えば高齢者3人一組でのローテーション勤務を提案し採用に結びつける、就職後も定期的に訪問、定着に向けた支援を行うなどきめ細かなコーディネートを行っている。
③高齢者雇用企業に対する入札参加資格の加点
「70 歳まで働ける企業」を県の入札参加資格加点制度の対象に加えることで、導入促進の促している。
④地域の創意工夫を促すモデル事業実施と実効性ある取組とする条件設定
高齢者の知恵と活力を活かす「福岡県70 歳現役社会づくりモデル事業」も、地域の関係団体で協議会をつくり、主体的に議論することを補助の条件としており、地域での創意工夫を生かした取組を促している。

【成果】
①多様な選択機会の提供
プロジェクトの第一の成果は、『働きたい高齢者や社会活動を行いたい高齢者』が自らの意思や能力のもとに活躍できる『多様な選択を可能にした』点にある。「高齢者の活躍の場の拡大」のため、企業を訪問し、高齢者向けの求人開拓や、「70歳まで働ける企業」の開拓も行い、成果を挙げている。応援センターの支援により登録者5,756 人の4割弱の2,065 人の就職や社会参加が決まり、企業や地域で活躍している。
○高齢者向け求人開拓 1,865件(1,004 社)
○70 歳まで働ける企業 314 社(定年廃止 55社、定年延長 107社、継続雇用 152社)
②高齢者の知恵と活力を生かす事業の推進による70歳現役社会の機運醸成
商店街活性化や過疎化対策など、地域特有の課題を解決するために、高齢者の知恵と活力を活かす「福岡県70歳現役社会づくりモデル事業」も展開され、県内で「70歳現役社会」づくりに向けた機運が着実に醸成されつつある。
③高齢者の労働市場への参入による労働力人口減少の改善、 高齢者所得の向上による消費増、経済の活性化
④ 高齢者の社会保障制度の「支える側」への転換、就業や社会活動を通じた生きがいや健康の維持増進
⑤ 高齢者の地域活動への参加による地域コミュニティの活性化や再生、 高齢者の知恵や経験、技能を活かした「地域おこし」活動の活発化

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

 少子・高齢化は世界に類を見ないスピードで進行しており、20年後の2035年には3人に1人が高齢者の「超高齢社会」となる。生産年齢人口は大きく減少し、社会保障制度を維持するための現役世代の負担は増え続け、社会経済の活力喪失が危惧されている。

 「65歳以上を高齢者」と国連が定義したのは1956年(昭和31年)。その年のわが国の平均寿命がおおむね65歳であり、言わば、私たちは平均寿命以上の人を「高齢者」と呼んできた。それから半世紀以上を経た現在、わが国の平均寿命(2014年)は男性80.2歳、女性86.6歳と大幅に延びている。内閣府が平成21年に「何歳以上の人が『高齢者』『お年寄り』だと思うか」との調査(「高齢者の日常生活に関する意識調査」)を行ったところ、「70歳以上」からという人が約8割。高齢者の定義である「65歳以上」と回答した人は1割に過ぎなかった。「65歳以上を高齢者」という定義は、実態に合わなくなってきている。

 今日の高齢者は、非常に元気で意欲的であり、内閣府の調査(平成20年「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」)によれば、7割以上の高齢者が「70歳くらいまで」か、それ以上の年齢になっても働きたい、社会で活躍したいと希望している。こうした元気で、社会に貢献をしたいと考えている多くの高齢者の気持ちに応えるためにも、そして生産年齢人口が大きく減少する中、社会の活力を維持していくためにも、長寿社会の新しいモデルを創ることが求められている。

4. プロジェクトの達成目標

“「65歳=高齢者」の定義を地方から変える” 「70歳現役社会」の実現
①高齢者が年齢にかかわりなく、それぞれの意思と能力に応じて働いたり、NPO・ボランティア活動などを通じて社会で活躍し続けることができる選択肢の多い社会「70歳現役社会」の実現を目指す。これにより高齢者を「支えられる側」から「支える側」に転換し、豊かで活力ある新しい長寿社会を実現する。
②「いきいきと働くことができる仕組みづくり」と「共助社会づくりへの参加促進」を施策の2本柱とし、「いつまでも活躍し続けるための土台づくり」「社会全体の意識改革」「高齢者が活躍できる環境整備」に取り組む。

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

・地方自治体が行う出張相談事業等で職業紹介が可能となるよう規制の緩和
・高齢者の派遣労働期間の制限撤廃

7. 上記規制をどう解決、回避したか

・雇用に関する事業実施に伴う規制や資格取得等はいずれも地域固有というよりは全国的課題であり、その解決は制度改変等全国一律で実施すべきものである。従ってこれまで同様、国に対し提言や要望を行い規制緩和等を求めていく。

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

9. 補助金に対する報告書のファイル

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

・職業紹介事業等のマッチングを進める職業紹介コーディネーター
・「70歳現役社会モデル事業」に参画・推進する各地の商工会議所等のトップや団体

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

「福岡県70歳現役社会づくり研究会」において委員長を務めた藤村博之法政大学大学院教授および顧問清家篤慶応義塾大学塾長
「福岡県70歳現役推進協議会」参加の各団体

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

特になし

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

65歳を超える高齢者への就職支援は、言わば「未開拓」の分野である。従来、高齢者の就業と言えば、シルバー人材センターに代表されるような「ボランティア的な就労」が中心であったが、高齢者の多様なニーズに応えるためには、企業などで「現役」として活躍しつづけることができる「就業支援」に向けた施策が欠かせない。高齢者への就業支援は、(現役世代への支援が中心となる)ハローワークでも対応が難しい分野である。「福岡県70歳現役応援センター」は、高齢者と企業のそれぞれから、希望する仕事、求める人材について丁寧に相談に応じ、きめ細かなコーディネートを行うことで成果を挙げている。これまでの取組は以下の通りである。

(1) 官民が連携した「福岡県70歳現役推進協議会」の創設
平成23 年9 月、官民一体となって「70歳現役社会」づくりを推進することを目的に地元経済団体、労働者団体、高齢者関係団体、NPO・ボランティア団体、行政の計17 団体により「福岡県70歳現役推進協議会(会長:福岡県知事)」を創設した。
協議会は、
① 「70 歳現役社会」の実現に向けた施策の協議
② 「70 歳現役社会」に関する啓発
③ 規制緩和や政策提案など政府への提言活動
といった頭脳の役割を担い、協議会に参加するそれぞれの組織やその傘下団体は、率先して「70歳現役社会づくり」に取り組むこととしている。

(2)全国初・高齢者のための総合支援拠点「福岡県70歳現役応援センター」開設
平成24年4月23日、福岡市JR博多駅そばに全国初・高齢者のための総合支援拠点「福岡県70歳現役応援センター」をオープン。官民一体となって設立した「福岡県70歳現役社会推進協議会」のネットワークを活かし、①高齢者の活躍の場の拡大、②就業・社会参加支援、③社会の意識改革、④「ふくおか子育てマイスター」の認定 の4つに取り組んでいる。
「福岡県70 歳現役応援センター」は、これまでの就業支援機関やNPO・ボランティアセンター等の縦割り的対応を改め、「福岡県70 歳現役社会推進協議会」の幅広いネットワークを活用して、再就職、シルバー人材センター、NPO・ボランティア活動など多様な選択肢を提供する、高齢者のための総合支援拠点として開設した。
その後、平成25年5月新たに北九州市に「北九州オフィス」を設置。筑後地域、筑豊地域でも平成27年6月、「久留米オフィス」、「飯塚オフィス」を開設し、県内4地域(福岡、北九州、筑後、筑豊)すべてに相談体制を整備した。また、大牟田、苅田、田川・直方などには定期で出張相談事業を行っている。具体的には以下の事業を実施している。
1)高齢者の活躍の場の拡大
応援センター職員が企業を訪問し、「高齢者向けの求人開拓」や「70歳まで働ける企業の開拓」を行うというもの。高齢者雇用の裾野を拡げる取組。
・企業への個別訪問など独自の求人開拓により、高齢者の雇用の場を拡大。
・企業を訪問して高齢者雇用の有用性、優良事例、助成金制度等を説明し、「70 歳まで働ける制度」(①定年廃止、②定年延長、③継続雇用制度のいずれか)の導入を働きかけ。
・「70 歳まで働ける制度」を導入した企業に対し、県の入札参加資格審査において加点する制度を導入・実施(平成25 年度から)。
2) 就業・社会参加支援
・専門相談員が、高齢者の経歴や技能、希望などを聴き、一人ひとりに適した再就職先やNPO・ボランティア活動など、多様な選択肢を提案・仲介
・就職支援員による求職者・求人企業とのマッチング(高齢者の経歴・資格等を踏まえた再就職の仲介、雇用条件の企業との調整・定着支援を実施
3) 社会の意識改革
企業経営者や人事担当者、商工団体の経営指導員などを対象に高齢者雇用の有用性などをテーマとしてセミナーを開催、一方で高齢者の能力開発方法を説明するなど労使両面から意識改革を進める。
①経営指導員向けセミナー
・商工会議所や商工会の中小企業経営指導員を対象に、「70 歳現役社会づくり」をテーマとしたセミナーを開催
・経営指導員は日常業務の中で高齢者雇用の有用性や県の取組を説明し、企業の意識改革を後押し
② 企業向けセミナー
・企業経営者や人事担当者を対象に、高齢者雇用の有用性、優良事例、人事給与制度の改善、助成制度などを説明
※県内4地域(福岡、北九州、筑後、筑豊)で開催
③ 従業員向けセミナー
・中高年従業員を対象に、得意分野や不足する能力の再確認(能力の棚卸し)、職場や地域で必要とされる能力の維持・向上方法について説明(企業・団体への出前方式により年間20 回程度開催)
4)「ふくおか子育てマイスター」の認定
豊かな経験を持つ高齢者に、地域の子育て現場で活躍してもらうため、最新の保育知識等に関する研修(7日間)を実施し、修了者に認定証を交付。応援センター内に「ふくおか子育てマイスター」コーナーを設置して実施
  
(3) 県内各地域で先進事業を拡大する県の補助制度を創設
① 県内各地域に「70歳現役社会づくり」を拡げるため、平成24年度に県による補助制度「70歳現役社会づくりモデル地域事業」を創設
② 高齢者の知恵と活力を地域活性化や過疎化対策など課題解決に生かす地域の自主的な取組に対し、事業費の2 分の1 を2 年間補助(初年度150 万円、2 年目200 万円を上限)
・補助制度創設を受け、地域の特色や創意工夫を活かした取組が県内各地域で展開されている

(4) 高齢者のためのNPO・ボランティア情報サイト 「生きがいづくりナビ」の開設
平成25 年10 月、全国に先駆け、高齢者のためのNPO・ボランティア情報サイト「生きがいづくりナビ」を開設(「生きがいづくりナビ」は、平成27年7月福岡県70歳現役応援センター(http://70-f.net/)のホームページに移行、情報サイトではNPO・ボランティア活動・社会貢献活動などで活躍する高齢者の紹介や参加するきっかけとなるさまざまな情報等生きがいづくりのヒントを提供
・高齢者向けNPO・ボランティア団体の登録
・高齢者が参加しやすいボランティア体験会の案内
・NPO・ボランティアで活躍する「70歳現役人」の紹介

(5)「九州・山口“70歳現役社会づくり”研究会」の設置
九州は全国を上回るペースで高齢化が進行しており、超高齢社会への対応は喫緊の課題である。平成25 年8月に開催された九州地域戦略会議夏季セミナーにおいて、福岡県が取り組んでいる「70 歳現役社会づくり」が政策研究テーマとして取り上げられ、活発に意見交換が行われた。
その後、同年10 月に開催された九州地方知事会において、「九州・山口“70 歳現役社会づくり”研究会」を設置することが決定した。
研究会は、九州・山口の知事や、経済団体、労働組合の代表が参加。平成26年4月、九州・山口が一体となって「九州・山口“70歳現役社会づくり”研究会を設置(5回開催)した。
平成27年1月には東京で国会議員、政府、自治体関係者などの出席のもと、中間報告会を開催し、全国に情報発信した。
平成27年3月、最終報告書を取りまとめ、27年6月、九州知事会において研究会報告を行った。

14. スケジュール(行程表)

平成22年6月:学識経験者や経済団体、労働組合、高齢者関係団体の代表による研究会「福岡県70歳現役社会づくり研究会」を設置
平成23年9月:官民あげて取り組む「福岡県70歳現役推進協議会」の創設
平成24年4月:全国初・高齢者のための総合支援拠点「福岡県70歳現役応援センター」開設
平成25年5月:北九州市に「70歳現役応援センター北九州オフィス」を設置
平成25年10月:高齢者のためのNPO・ボランティア情報サイト「生きがいづくりナビ」を開設
平成26年4月:「九州・山口“70歳現役社会づくり”研究会」の設置
平成27年6月:九州知事会で研究会の成果を報告
         :福岡県70歳現役応援センターの「久留米オフィス」、「飯塚オフィス」開設

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

平成25年度県予算額                                   10,631万円
 ・福岡県70歳現役応援センターの運営                         7,063万円
 ・北九州オフィスの設置、筑後・筑豊地域での出張相談の実施(新規事業)  2,599万円 
 ・70歳現役モデル地域事業、70歳現役社会推進協議会等              969万円
平成26年度県予算額                                   15,232万円
 ・福岡県70歳現役応援センターの運営                        11,082万円
 ・北九州オフィスの設置、筑後・筑豊地域での出張相談の実施(新規事業)  2,708万円 
 ・70歳現役モデル地域事業、70歳現役社会推進協議会等           1,442万円
平成27年度県予算額                            16,456万円
 ・福岡県70歳現役応援センターの運営                   11,648万円
 ・北九州オフィスの設置、筑後・筑豊地域での出張相談の実施(新規事業)  3,788万円 
 ・70歳現役モデル地域事業、70歳現役社会推進協議会等          1,020万円

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

特になし

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)

「福岡県70歳現役社会推進協議会」(平成23年9月設立、会長:福岡県知事)での協議の下、構成団体をはじめとする関係機関など官民が一体となって、それぞれの立場で「70歳現役社会」づくりを進める全国的にもユニークな推進体制が構築されており、「福岡県70歳現役応援センター」を中心に官民一体となって高齢者に多様な選択肢を提案する「70歳現役社会づくり」を推進している。

18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

①経済団体、労働組合等関係団体を集めた研究会での徹底した議論
「70 歳現役社会」づくりを検討するにあたって、学識経験者や経済団体、労働組合、高齢者関係団体の代表による研究会「福岡県70歳現役社会づくり研究会」(平成22 年6月)を設置した。
研究会は東京でも開催し、国会議員(自民党、民主党、公明党の代表)や経済界、労働者団体の有識者も参加して、活発な意見交換を行った。1年間にわたり議論を重ねることで、事業の方向性を固めるだけでなく、官民一体となって「70 歳現役社会」の実現に取り組む気運の醸成が図られた。
こうした取組の成果のもとに、平成23年9月に経済団体、労働者団体、高齢者団体、NPO・ボランティア団体、行政で構成する「70 歳現役社会推進協議会」を設立した。各構成団体は、事業の企画、検討段階から参画し、活発に議論を行ったことで、問題意識や進むべき方向が共有され、官民一体となった強力な推進体制の構築につながっている。
②「福岡県70 歳現役応援センター」によるきめ細かなコーディネート
応援センターでは、地域の高齢者や企業のニーズを十分把握し、両者の調整を図ることで、大きな成果を挙げている。例えば、企業側はフルタイムでの勤務を希望しているが、高齢者側は短時間勤務を希望しているような場合、高齢者3人一組でのローテーション勤務を提案し、採用に結びつけるなど、きめ細かなコーディネートが特徴である。また併せて、就職後も定期的に訪問、定着に向けた支援も行っている。
③高齢者雇用企業に対する入札参加資格の加点
「高齢者の活躍の場の拡大」については、「70 歳まで働ける企業」を県の入札参加資格加点制度の対象に加えることで、導入企業が増加している。
④地域の創意工夫を促すモデル事業実施と実効性ある取組とする条件設定
商店街活性化や過疎化対策など、地域固有の課題解決のため高齢者の知恵と活力を活かす「福岡県70 歳現役社会づくりモデル事業」も、地域の関係団体で協議会をつくり、実効性のある取組となるよう主体的に議論することを補助の条件としており、創意工夫を生かした取組が展開されることで着実に成果をあげている。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

本プロジェクトの第一の成果は、『働きたい高齢者や社会活動を行いたい高齢者』など高齢者が自らの意思や能力のもとに活躍できる『多様な選択を可能にした』点にある。「高齢者の活躍の場の拡大」のため、企業を訪問し、高齢者向けの求人開拓や、「70歳まで働ける企業」の開拓も行い、成果を挙げている。応援センターの相談件数は開所1年目が5,000件、2年目は9,600 件、3年間で28,688件と口コミにより相談件数も増加。応援センターの支援により登録者5,756 人の4割弱の2,065 人の就職や社会参加が決まり、企業や地域で活躍している。
こうした取り組みを通じ、県内で「70歳現役社会」づくりに向けた機運が着実に醸成されつつある。
「70歳現役社会」の実現は経済面、社会保障面、地域活性化面で以下の効果が期待できる。
【経済面】
・ 高齢者の労働市場への参入が進み労働力人口の減少に歯止めがかかる。
・ 高齢者の所得が向上し、消費が活発化、経済の活性化に結びつく。
【社会保障面】
・ 高齢者が医療や年金といった社会保障制度の「支える側」に変わる。
・ 高齢者が就業や社会活動を通じて生きがいや健康の維持増進が図られる。
【地域活性化面】
・ 高齢者の地域活動への参加が促進され、地域コミュニティの活性化や再生が図られる。
・ 高齢者の知恵や経験、技能を活かした「地域おこし」活動が活発化する
具体的な成果を数値等で示すと以下の通りである。
(1)高齢者の活躍の場の拡大-高齢者の活動の多様な選択肢の創出
○高齢者向け求人開拓 1,865件(1,004 社)
○70 歳まで働ける企業 314 社(定年廃止 55社、定年延長 107社、継続雇用 152社)
(2)就業・社会参加支援
県とセブン‐イレブンは、平成25 年11 月に「高齢者スタッフの導入」に関する包括提携協定を締結し、全国で初めて県とコンビニエンスストアと連携した高齢者スタッフの導入を推進することとした。スタッフは、宅配先の高齢者世帯の見守り活動にも従事、各店舗では高齢者の視点で接客する。。
(※セブンイレブンでは本県と連携した取組を「福岡方式」として、全国展開していく考え)
○ 応援センターへの求人 361店舗、センターの紹介による就職 76人採用
(3)社会の意識改革
①経営指導員向けセミナー
 参加者数:平成24 年度358 名、平成25 年度579名、平成26年度 421名
②企業向けセミナー
県内4地域(福岡、北九州、筑後、筑豊)で開催、参加者数:平成24 年度124 名、平成25 年度108名、平成26年度 182名
③従業員向けセミナー
企業・団体への出前方式で年間20 回程度開催、参加者数:平成24 年度613 名、平成25 年度597 名
平成26年度 569名
(4)ふくおか子育てマイスター」の認定
認定  277人(平成24年度) 342人(平成25年度) 288人(平成26年度) 907人(合計)
(5)「70歳現役社会づくりモデル地域事業」
この事業を契機に、県内各地域で「70歳現役社会」づくりに取り組む機運が醸成されつつある。
平成24年度、平成25年度の採択プロジェクト事例は以下の通り。
〈平成24年度採択事業〉
① 飯(いい)まち生涯元気プロジェクト(飯塚商工会議所、飯塚市、飯塚医師会ほか)
・商店街の空き店舗を活用し、退職保健師や看護師による健康相談(医療、介護、食生活等)やNPO団体とのマッチングなどを行う「おたっしゃ倶楽部」を設置(のちに「おたっしゃ倶楽部」内に応援センターの出張相談窓口を設置)
・高齢向け市民農園を開放し、熟練高齢者が農作業を指導
・医師会と連携し「かかりつけ医」の普及に向けた広報事業を実施
② みやこ町高齢者買い物生活支援事業(みやこ町商工会、みやこ町、豊津まちづくり㈲)
・買い物が不便な中山間地域を対象とした高齢者スタッフによる宅配事業を実施
・町内の空き施設を活用し、高齢者スタッフによる弁当の配食事業を実施
〈平成25年度採択事業〉
① 恋のくにちくご どげんしよんね 元気でおるバイ事業
(筑後商工会議所、筑後市、筑後市シルバー人材センターほか)
・商店街とシルバー人材センターが提携、高齢者宅を巡回訪問し、商店街の注文取りや商品配送を実施
・商店街は、筑後市と見守り協定を締結し、巡回訪問時に安否確認を実施
・シルバー人材センターは、巡回訪問時に本来業務の家事援助や庭木の剪定などを受注
② かんだ70歳現役社会づくり応援事業(苅田商工会議所、苅田町、苅田シルバー人材センターほか)
・苅田町役場内に地元企業での就職やシルバー人材センターへの登録、ボランティア活動への参加など、高齢者の相談に応じる「かんだセカンドライフ応援センター」を開設
・商工会議所のネットワークを生かし独自に求人開拓を実施
〈平成26年度採択事業〉
① シニアパワーアップ塾
(そえだボランティアの会、添田町婦人会、添田町就農支援推進協議会、添田町)
・高齢者が知識・技術を活かして社会参加できるよう様々なボランティア活動や体験会・講座を開催、地域で活躍する高齢者の人材育成と社会参加の場を拡大する。
② きのこ村リニューアルオープンに向けた自然共生の里づくり業
(八女市、お茶の里公園きのこ村運営協議会、お茶の里記念館、杣人の会ほか)
・平成24年7月の九州北部豪雨災害で被災した八女市黒木町笠原地区において、地域の高齢者の知識と経験を活かして、地域観光資源(きのこ村)のリニューアルオープンを目指し、都市住民とのワークショップや交流事業、周辺環境の整備を実施

20. プロジェクトによる地域の変化

「年齢にかかわりなく、それぞれの意思と能力に応じて、働いたり、NPO・ボランティア活動に参加し、活躍し続けることができる選択肢の多い社会をつくる」との目的が徐々に社会に浸透していき、まちなかで高齢者の働く姿を目にする機会が増えるとともに、人々の意識とりわけ高齢者が自分に合った働き方などを選択するようになってきている。それは、本事業への登録者の増加や事業を利用して実際に就職やボランティア活動に参加する人の増加にも表れている。
「福岡県70歳現役応援センター」は、高齢者に対する支援から、高齢者雇用を考える企業への支援、社会全体の意識改革にまで取り組む全国に類を見ない総合支援拠点である。この取組みは、超高齢社会に対応する先進モデルとして内外の注目を集めており、NHK「団塊スタイル」や韓国KBSの報道番組「KBSスペシャル」で特集されたほか、自治体関係者の視察も相次いでいる。
このように先進的な取組として多くの報道機関に取り上げられ、政府の高齢社会白書でも先進事例として紹介された。高齢者の活躍の場等選択肢を増やす本取組みが高齢化社会での解決策の一つとして注目を集めている。

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

①現役応援センターの進路決定率及び定着率の向上
応援センター登録者の進路決定率は高い水準にあるとはいえ41%であり、6割が進路未決定である。これらの方々のニーズを見極め、同時に進路の斡旋が行えるよう高齢者が働ける企業の拡大、高齢者求人の開拓等を進めていく。また、センター支援の就職者の4人に1人が就職後に離職しており、体力・能力、意識等を勘案しつつきめ細かな支援を行っていく必要がある。
②NPO・ボランティア活動への参加促進・仲介機能の強化
高齢者はNPO・ボランティア活動への関心はあるものの参加までには至らないケースが多く、社会参加活動への理解を深め、機会を拡大する取り組みが必要である。今後、この取り組みに賛同するNPO法人(九州コミュニティ研究所)との協働により、社会参加活動の提案・仲介機能を強化することとしている。具体的には高齢者が活躍できるNPO・ボランティア団体を掘り起こし、交流会の開催等の実施や体験ツアーや見学会の企画・実施を通じて高齢者の社会参加を促していく。そのために県社会活動推進課「NPOと県との新たな公共サービス提供事業」を活用する。
③九州・山口地域での展開-各県・経済団体等の連携強化と情報共有
九州・山口では、本県の取組を参考に、本年4月に「九州・山口“70 歳現役社会づくり”研究会」を設置し、九州・山口が一体となって取組を進めることとし、27年6月には九州地方知事会において研究会報告を行った。今後も九州・山口の各県との連携のもと、量・質ともに取組みの向上を図る。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

①応援センターの利便性向上ときめ細かな支援体制の確立
「久留米オフィス」、「飯塚オフィス」を開設、県内4地域での相談体制が整った。大牟田、苅田などセンターから離れる市町には定期的に出張相談を行うなど利用がしやすいように運用体制を整備していく。また、オフィスでは相談・あっせん事業が行えるが、出張所では斡旋等は現状ではできないため、これを可能とするよう国等に求めていく。
②NPO等との協働による取組みの実施
NPOの持つ情報・企画を応援センターと共有し、センター登録者のボランティア体験会の案内など情報発信し、参加を推進していく。また、県立図書館との連携によるセミナー開催など「70歳現役社会」づくりへの気運の醸成等広く県民に周知していき、気運の醸成、利用を促進していく。
③九州・山口一体となった「70歳現役社会」実現への取組み
九州・山口“70歳現役社会”推進協議会を活用し、九州・山口で一体となった取組みを進めていく。これにより九州・山口地域全域での「70歳現役社会」づくりの実現に向けた機運を高めていく。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

全国の自治体からの視察も相次ぎ、本県の取組を参考に、新たに事業に取り組む自治体も出てきた。
団塊の世代が65歳に到達し、超高齢社会への対応は、全国の自治体にとって喫緊の課題である。

24. その他関連情報、資料