【背景・課題、目的・目標】
東松島市は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災において未曾有の被害を受けた。津波により1,100人を超える方が亡くなり、多くの家屋が流失した。浸水面積は東松島市全域の36%、市街地では被災市町村中最大の65%が浸水した。
市内には、ガレキ類だけで通常の100年分以上の災害廃棄物3,259千トン(ガレキ類1,098千トン、津波堆積物2,161千トン)が発生。市は発災1か月後に復旧復興指針を出し、災害廃棄物処理事業を品目ごとに分別した状態で受入を行うことを決定、資源化を企図し実施した。
取組みは震災ごみを徹底して分別、リサイクルすることで ①処理費用の削減、②被災者の雇用 を実現するものである。
【取組内容】
東松島市では、被災直後から資源化を企図、災害廃棄物の分別受入を即時に実施した。
被災家屋の解体では、事前に家財などを分別し仮置き場へ運ぶ、津波等により発生した混合ごみは機械によりガレキ類と土砂に分別、その後手選別により19品目に分別するなど徹底した分別リサイクルを実施した。コンクリート類は破砕して再生砕石に、土砂やヘドロは塩分と不純物を取り除いて再生土として、復興事業で再利用したばかりではなく、資源の売却や再利用につながり、トータルの処理コストを大幅に削減した。リサイクル率は97%を超えている。
また、手選別作業は,震災で職を失った地域住民の雇用創出にもつながった。1日平均1,500人の雇用が発生、うち約900人は震災で職を失ったり、生業の農業、漁業に従事できない方であった。
(1)搬入と分別について
1)災害廃棄物仮置場において、14品目に分別・仮置きを徹底
仮置場には入口に受付を設け、産業廃棄物や市外からの搬入を防止する一方、分別品目毎(14品目)の山(集積)を作り、山毎に分別支援員を配置して補助した。
①木材②プラスチック③タイヤ④紙⑤布⑥畳⑦石⑧コンクリ類⑨家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)⑩家電(4品目以外)⑪鉄類⑫有害ごみ⑬処理困難物⑭土砂
2)混合ごみの手選別による19品目の分別
ベルトコンベア等を設置せず、作業員が横並びになり、前進しながら分別作業を行った。能力に応じた作業速度、近くで作業する熟練者への確認等により、分別精度が向上した。
①土砂②ヘドロ③解体系木材④自然木⑤コンクリート類⑥アスファルト殻⑦石膏ボード⑧プラスチック類⑨繊維類⑩畳⑪粗大系(ベッドマットレス類)⑫金属類⑬家電⑭ガラス類⑮小型家電⑯消火器⑰油類⑱肥料⑲複合素材類
(2)分類品目ごとに有効活用(分別後のリサイクル)
災害廃棄物を焼却や埋立処理だけでなく有効活用(リサイクル)することとし、以下の取組みを実施した。
・金属(鉄類):鉄、アルミ、ステンレス、銅、その他に分別し有価で売却
・木材:木質チップに加工し、土木資材、助燃材として利用。
・アスファルト、コンクリート類:破砕し再生砕石に加工し、土木資材に利用。
・津波堆積物:フィンガースクリーン等により土砂からガレキ、石類等の除去を行った後、除塩し、セメントを混合して再生土として使用。
・廃タイヤ:固形燃料にリサイクルする事業者に処理を委託。
【成功要因】
①東松島市建設業協会と市との災害協定の締結
宮城県沖地震に備え、平成17年に協定を締結。協定に従い、地震発生時に速やかに応援処置を要請、災害復旧の取組が迅速に行われた。
②大規模施設を造らない可搬型の機械処理・手選別方式の採用による雇用創出
「東松島式震災ごみリサイクル(東松島方式震災がれき処理)」は、震災で発生した震災ごみを徹底した分別・リサイクルにより、処理費用の削減や被災者雇用を実現したものである。可搬型の建設機材・機械等を活用した処理スキームを独自に構築し、「手選別」という一見原始的な手法を用いることでリサイクルの精度をあげ、被災者を含めた新たな雇用を生んだ。このことが被災により職を失った方たちに希望を与えた。
また、リサイクルの促進は処理費用の削減につながったが、同時に処理費用として平成23・24年度で市内に約282億円が支払われたことが地域経済の復興に対し大きく貢献した。
③がれき仮置場等への未利用地や運動公園の活用
県から使用許可を得た8haの仮置場は分別品目ごとに積みあがってしまい、他に増やす必要が生じた。そこで未利用の近隣港湾施設用地12haの使用許可を得て仮置場とした。また、野蒜(のびる)地区の災害廃棄物を大曲浜地区まで運搬するのに時間を要することから、野蒜地区の市の運動公園を仮置場とすることで地区内のがれき処理をできるだけ地区内の少ない移動で行うこととした。
④地元での離職者支援(ハローワーク相談事業等の出張開催)
離職予定者の就職相談会は石巻ハローワークが仮置場に出張して実施、離職後は会場を設けハローワークの職員の出張により雇用保険受給の手続を行うなど離職者に配慮かつ迅速に実施した。
【成果】
「東松島式震災ごみリサイクル(東松島方式震災がれき処理)」により、以下の成果が得られた。
①手作業により選別の精度を上げ、災害により発生したガレキの97%以上をリサイクルにより資源化。
②津波堆積物2,161千トンを再生土として、全量リサイクル。
③分別作業により、平成25末時点で金属類の売り払い金額として 約5億9千万円の歳入。
④災害廃棄物の処理後、必要なくなる施設等の建設をせず、経費を削減。23年~26年4カ年で645億円と見込んでいた事業費を588億円で完了、9%にあたる57億円を削減。
⑤全体で1500人、うち約900人の被災者の新規雇用雇用を創出。
⑥極力、市内で処理が完結する仕組みをつくり、地域経済の復興に寄与。
以上、東松島市の取組みは実績として公的な資金の削減につながり、取組みは今後の有事の際でも、市の建設業協会という地元の産業を生かし、予めがれきのストックヤードの候補地を準備するなど今回の見直しを行うことで、さらに発展させることが可能となる。
東松島市は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災において未曾有の被害を受けた。沿岸部においては、最大で10mを超える津波により、1,100人を超える方が亡くなり、多くの家屋が流失した。浸水面積は東松島市全域の36%にも及び、市街地に至っては被災市町村中最大の65%が浸水した。
これにより、市内には、ガレキ類だけで通常の100年分以上の災害廃棄物3,259千トン(ガレキ類1,098千トン、津波堆積物2,161千トン)が発生。市は発災1か月後に復旧復興指針を出し、建設業協会との間で結んでいた「災害時における応急措置の協力に関する協定」(平成17年7月1日締結)に基づき、災害廃棄物処理事業を実施した。また、大曲浜県有地と奥松島運動公園の2箇所を災害廃棄物仮置場として確保し、受け入れ態勢を整え、平成15年の宮城県北部連続地震の教訓を活かして品目ごとに分別した状態で受入を行うことを決定した。
震災で発生した100年分以上のがれき震災ごみを早期に、しかも徹底して分別、リサイクルすることで以下を実現する
①処理費用の削減
②被災者の雇用の実現
(未入力)
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では再委託を禁止しているため建設業協会と一括の直接契約をせず、協会に加入する業者と一件づつ入札・契約締結(12業者)をした。結果的には、協会加入業者がそれぞれの事案で入札することで、入札に競争原理を働かすことができた。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では再委託を禁止しているが、その後平成23年環境省令第15条(平成23年7月8日交付、同日施行)により、東日本大震災に伴う災害廃棄物処理に限定し、一次下請けまでは再委託を認められた。このため業務実施可能な協会加入業者を下請けとして認め、早期の処理を可能とした。
東日本大震災に係る廃棄物処理にあたり下記の国庫補助金、県補助金が支出された。いずれも補助率は90/100以上、地方財政負担額には交付税措置があり、地方負担は実質ない。
東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業費国庫補助金
平成23年度事業分 14,812,765千円
平成24年度事業分 14,635,606千円
平成25年度事業分 22,560,603千円
平成26年度事業分 150,144千円
グリーンニューディール基金(県補助金)
平成23年度事業分 1,678,476千円
平成24年度事業分 1,243,029千円
平成25年度事業分 1,916,112千円
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東松島市職員および東松島市建設業協会加入42社
宮城県(処理が難しい自動車、船舶、処理困難物等については東松島市を含む周辺市町村が共同して宮城県に処理を委託した)
特になし
東松島市では、被災直後から早期にがれき処理を目指し災害廃棄物の分別受入を即時に実施した。
その後の被災家屋の解体時にあっても、事前に家財などを分別してから仮置き場へ運ぶなど徹底した分別・リサイクルを行った。津波等により発生した混合ごみは機械によりガレキ類と土砂に分別。その後、手選別により19品目に分別した。リサイクル率は97%以上となっている。
その結果、コンクリート類は破砕して再生砕石に、土砂やヘドロは塩分と不純物を取り除いて再生土として、復興事業で再利用したばかりではなく、資源の売却や再利用につながり、トータルの処理コストを大幅に削減した要因となっている。また、手選別の作業は,震災で職を失った地域住民の雇用創出にもつながった。1日平均1,500人の雇用が発生し、うち約900人が震災で職を失ったり、生業の農業、漁業に従事できない方であった。
(1)搬入と分別について
1)災害廃棄物仮置場において、下記の14品目に分別・仮置きを徹底した。
①木材②プラスチック③タイヤ④紙⑤布⑥畳⑦石⑧コンクリ類⑨家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)⑩家電(4品目以外)⑪鉄類⑫有害ごみ⑬処理困難物⑭土砂
仮置場には入口に受付を設け、産業廃棄物や市外からの搬入を防止した。また、受入れ開始当初は、混雑を避けるため、地区別に搬入日時を定めた。
仮置場への市民の搬入に先立ち、市報に分別搬入について掲載したが、仮置場には、分別方法を分かりやすくするため、分別品目毎(14品目)の山(集積)を作り、視覚的に分別を訴えた。また、その山毎に分別支援員を配置して適切に分別搬入できるように補助をした。
2)混合ごみの手選別による19品目の分別
ベルトコンベア等を設置せず、作業員が横並びになり、前進しながら分別作業を行った。能力に応じた速度での作業、近くで作業する熟練者に確認しながらの作業ができたため、分別精度の向上にも繋がった。
①土砂②ヘドロ③解体系木材④自然木⑤コンクリート類⑥アスファルト殻⑦石膏ボード⑧プラスチック類⑨繊維類⑩畳⑪粗大系(ベッドマットレス類)⑫金属類⑬家電⑭ガラス類⑮小型家電⑯消火器⑰油類⑱肥料⑲複合素材類
(2)分類品目ごとに有効活用(分別後のリサイクル)
本市では災害廃棄物を焼却や埋立処理だけでなく有効活用(リサイクル)することとし、市の建設業協会と検討し、以下の取組みを行うこととした。
・金属(鉄類):鉄、アルミ、ステンレス、銅、その他に分別し有価で売却
・木材:木質チップに加工し、土木資材、助燃材として利用。
・アスファルト、コンクリート類:破砕し再生砕石に加工し、土木資材に利用。
・津波堆積物:フィンガースクリーン等により土砂からガレキ、石類等の除去を行った後、除塩し、平均約2%程度のセメントを混合して再生土として使用。
・廃タイヤ:固形燃料にリサイクルする事業者に処理を委託。
平成23年 4月 復旧復興指針策定
平成23年 4月~平成26年 3月 災害廃棄物の撤去回収
平成23年 5月~平成25年 6月 被災家屋等の解体撤去
平成23年 4月~平成26年 2月 仮置場の管理運営
平成23年 9月~平成26年 3月 中間処理(分別、破砕等)
平成25年10月~平成26年 9月 仮置場返還作業
平成24年 5月~平成26年 1月 県による二次処理(焼却等~最終処分)
平成23年度 16,874,252千円
平成24年度 16,436,860千円
平成25年度 25,293,118千円
平成26年度 166,828千円
特になし
東松島市が東松島市建設業協会との協定に基づき実施。市の担当窓口は市民生活部環境課。
災害廃棄物処理事業に従事した業者は下請けを含め42社と多数であったため、事業を進めるうえでの指示や報告の窓口を協会に一本化することで、効率的に密に連携を行なった。
地元を知り尽くした市の建設業協会と、建設業協会が積極的に雇用した被災者が労働者となり、市民の力を用いて災害廃棄物処理事業を行った。
①東松島市建設業協会と市との災害協定の締結
当時、20年以内に90%の確立で発生するといわれている宮城県沖地震に備え、平成17年に協定を締結。協定は、災害が発生した場合の応援処置について、東松島市が東松島市建設業協会に協議に基づいた協力を要請するといった内容で、実施や経費の負担など10条から成る。協定に従い、今回の地震発生時には速やかに応援処置を要請、災害復旧の取組が迅速に行われた。
②大規模施設を造らない可搬型の機械処理・手選別方式の採用による雇用創出
本市が今回提案した東松島式震災ごみリサイクル(東松島方式震災がれき処理)」は、震災で発生した震災ごみを徹底した分別、リサイクルにより、処理費用の削減や被災者雇用を実現したものである。通常、市で処理する100年分以上の震災がれきの処理問題を、費用を削減して解決することができた。
大規模な処理施設を建設することなく、可搬型の建設機材・機械等を活用した処理スキームを独自に構築したこと。また、震災ガレキの最終処理において、「手選別」という一見すると原始的な手法を用いたことが、災害復旧時の新たな雇用を生んだ。(※手選別は、今回の震災が、地震と津波により分別できない「混合ごみ」が発生したこと、リサイクルの精度をあげるという目的から創出できたもの。)
この方式により被災者を含めての雇用を実現しており、地域貢献度は非常に高くなっている。また、処理費用が平成23・24年度の2カ年で市内に約282億円が支払われたことにより、地域経済の復興に対し大きく貢献することができた。多くの雇用を生んだことは、被災により職を失った方たちに生活の希望を与えた。これによりリサイクルが促進され処理費用の削減につながったというのは、一挙両得の取組みであった。
③がれき仮置場の拡張利用の峻別
県から使用許可を得た8haの仮置場は分別品目ごとに積みあがってしまい、他に増やす必要は明白であった。そこで未利用地としてあった近隣の港湾施設用地12haの使用許可を得て仮置場とした。
また、野蒜地区の災害廃棄物を大曲浜地区へ運搬するのに時間を要していたことから、野蒜地区にあった市の運動公園を仮置場とした。また、隣接する県の少年自然の家の使用許可を得て仮置場とした。このようにすることで地区内のがれき処理を少ない移動で行うことができた。
④地元での離職者支援(ハローワーク相談事業等の出張開催)
離職者支援についてはハローワーク石巻、東松島市建設業協会(受託業者)、東松島市市民生活部環境課(発注者)の三者連携でまず離職者を雇用する契約業者への説明会を開催、その後、離職予定者への説明会を開催した。また、実際の離職予定者の就職相談会は石巻ハローワークが仮置場に出張して実施した。離職後は、会場を設け、ハローワークの職員の出張により雇用保険受給の手続を行った。
「東松島式震災ごみリサイクル(東松島方式震災がれき処理)」により、以下の成果が得られた。
①手作業により選別の精度を上げ、災害により発生したガレキの97%以上をリサイクル(資源化)した。
②津波堆積物2,161千トンを再生土として、全量リサイクルした。
③分別作業により、金属類の売り払い金額 約5億9千万円の歳入があった(585,859,314円H25末時点)。
④災害廃棄物の処理後、必要なくなる施設等の建設をせず、経費を削減した。最初の1年で232億円の想定費用を169億円にし、63億円を削減。23年~26年4カ年で645億円と見込んでいた事業費を588億円で完了、9%にあたる57億円を削減。
⑤全体で1500人、約900人の被災者の新規雇用を創出。
⑥極力、市内で処理が完結する仕組みをつくり、地域経済の復興に寄与した
東松島市の取組みは実績として公的な資金の削減につながっている。また、この取組みは市の建設業協会という地元の産業を生かしたもので、さらなる有事の際でも今回同様の取組みが可能であり、予めがれきのストックヤードの候補地を準備するなど今回の見直しを行うことで、さらに発展させることが可能となる。
震災により発生した震災廃棄物は、普通のごみとは異なり被災者の家や思い出の品がたくさん含まれている。手選別の作業員は、廃棄物としてではなく、未来への有効な資源として扱った。当初の震災ごみ処理が震災で職を失った地域住民の雇用創出につながったこととあわせ、この取組はこうした市民と事業者の故郷再生への強い思いとともに心の復興にもつながるのではないかと思っている。
〇復旧に留まらないあたらしい復興のまちづくり-環境未来都市「東松島市」の実現
-東松島市では新しい復興のまちづくりとして「分散型地域エネルギー自立都市プロジェクト」に取り組んでいる。環境や高齢化の問題を解決するべく国から指定された「環境未来都市構想」の計画事業としても位置付けており、新しい復興のまちづくりを住民、県、民間企業等とともに実現していく。
また、暮らしの一部(空間や時間など)を共有し、居住者同士が支えあう・助け合いながら住まう生き方、支えあう暮らしの計画を策定している。
持続可能な新しいまちづくりに向けて、東松島市では震災に強く環境に優しいシステムを構築する。それは、太陽光をはじめ、風力、バイオマスといった多様な再生可能エネルギーでの自給を目指すこと、多様な設備とその分散を図ることで震災時に起こり得るエネルギー供給の途絶を防ぐ、あるいはコミュニティ創成を検討組織を設け実践していく。
「東松島方式」という新しい震災ガレキ処理方法として、これまでに多数のメディアに取り上げられている。人口4万人程度の自治体が独自に処理可能な仕組みとして、さらに社会的認知度を向上させることにより、高い確率で発生すると思われる南海トラフ地震や日本各地で起こり得る地震や津波による被災時において、条件が整えば、活用されることが期待されるだけでなく、発展途上国などインフラが不足している地域での実施が無理なく可能である。
〈条件〉
① 発生する災害廃棄物の処理可能な業者の把握ができていて(市内、市外を問わず)、震災の際に処理の委託が可能である。
② 仮置場の確保ができている、または、計画している。
③ 処理困難物は、県または国に委託できる体制が構築できる。
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