1. プロジェクト名
広域多摩地域産業活性化戦略-TAMAネットワーク

2. 概要

(未入力)

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

東京都心を取り巻く神奈川県央部、東京都多摩地域、埼玉県南西部(国道16 号線沿線地域で、以下TAMA地域と略す)には、製品開発型製造業とそれを支える基盤技術型企業、および大手企業の研究所が多数集積し、また世界的にも類例を見ないほど高等教育機関(大学等)も集積している。しかし地域の持つ工業的・工学的ポテンシャルを十分には発揮しえてこなかった。そこで当時、関東経済産業局は、関係する自治体、商工会議所等、民間企業、大学等、さらには金融機関に働きかけ、わが国はもとより世界をリードできる産学官金共同による先進産業クラスターを構築することとした。当時、企業は相互にビジネス上の関係を持っていたにも拘わらず、それらの連携は質量ともに限定されたものであった。そこでTAMA地域に存在する企業・大学等研究機関が相互連携を密にできるインフラを構築し、従来にないオンリーワン、ナンバーワン技術を創出していこう、そのために関東経済産業局、3都県、自治体がインフラ作りに協調していこうとの合意に達した。その中核組織としてTAMA 産業活性化協議会を位置づけることにした。
TAMA 産業活性化協議会は1998年任意団体として産学官のコーディネート機関として設立され、その後2001年社団法人化、2010年一般社団法人化した。新興国の追い上げ、国内産業の競争力確保のための国内産業の海外移転等により国内産業の空洞化が進んでおり、地域産業の高付加価値化、新たな分野への取り組みなど依然として現状からの改革が求められていた。

社団法人首都圏産業活性化協会
http://www.tamaweb.or.jp/

4. プロジェクトの達成目標

わが国の産業技術の中核的地域として一層の発展を目指すため、第一期ではイノベーションのインフラ作り、第二期ではイノベーションプログラムの実現を達成し、第三期では「環境ものづくりのメッカとして世界ブランド化する」をビジョンとして活動を行い、第四期では「環境配慮ものづくりを推進し、TAMAエコクラスターを形成する」と定め、活動している。第三期では地球温暖化や低炭素社会の実現などの環境問題に対する会員の総意として「TAMA環境ものづくり憲章」を定めて、いち早く環境に配慮したものづくりの推進を標榜するとともに、TAMA産学官金サミットを開催して、日常的に研究開発を行い、地域の産学官金による環境ものづくりを推進する連携ができました。第四期にあっても連携を推進し、活力ある地域づくりや日本の産業競争力に資するTAMAブランドを定着させ、TAMAエコクラスターの形成を進めていくことで、グローカルな産学官金のネットワークを形成・発展させ、持続的にイノベーションを創出する仕組みを開発してきた。このネットワークは案件の創出から事業化までを一気通貫で支援する体制を構築している。
これに加えてグローバル経済化とこれまでの産業空洞化の中で、新たに海外で発生する開発ニーズ情報(日本企業の海外拠点で発生するニーズを含む)を把握する必要がある。TAMA協会の海外展開支援事業は、これまでは販路開拓というビジネス支援が中心であった。今後は、海外で発生する開発ニーズ情報にアクセスするという開発支援の要素を取り込んで活動の質を高める。

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

TAMA協会の活動に対しては、法的な位置付けも整備され、TAMA協会は平成22年3月に埼玉県、東京都、神奈川県ほか関係自治体・商工団体とともに「首都圏産業活性化協議会」の構成員として国の法律に基づく「首都圏西部地域広域基本計画」を策定し経済産業省の同意を受けました。また、平成23年には文部科学省に「地域イノベーション戦略推進プログラム」の申請が採択され、地域産学官金の14機関からなる「首都圏西部イノベーション推進協議会」の総合調整機関として、イノベーション創出の基盤を整えました。

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

規制等はない

7. 上記規制をどう解決、回避したか

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

経済産業省産業クラスター計画補助金 
経済産業省 戦略的基盤高度化支援事業補助金 

9. 補助金に対する報告書のファイル

平成24年度事業のあらまし(平成20年度~24年度)参照
TAMA第4期5か年計画 参照

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

TAMA協会事務局組織 28名4部体制(役員・総務部6、産学連携・研究開発部11、販路開拓・海外展開部3、人材育成・人材確保部7)
商工会議所、会員自治体

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

東京都立産業技術研究センター・都振興公社
首都大学東京、電気通信大学、東京農工大学
金融機関(西部信用金庫等)

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

首都圏西部イノベーション推進協議会

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

1.域内の自治体等とタイアップした地域産業活性化
ひと・もの・カネ・情報の総合的な産業支援により強力な自立エンジンとしてのクラスター政策を活用、自治体、商工団体、TAMA協会などの地域の支援機関が機能分担を図り産業活性化を支援、この拡大・高度化により創業・売上・雇用の拡大につなげ地域活性化を図った。
2.案件の創出から事業化までの一気通貫の支援
専門家派遣事業・情報提供事業による市場調査、戦略策定を実施し、産学連携コーディネートを行い、技術シーズ調査で欠けた技術を導入し、研究開発・技術開発を行い、マーケティング・販路開拓を地域金融機関との連携のもと実施、資金調達・人材確保も合わせて行い、一気通貫で事業創出から事業化までを支援する体制を整えた。
3.環境に配慮したものづくりの推進
TAMAの特徴あるものづくりを推進するため、日本のものづくり産業の優位性を発揮できる「環境分野」に着目、低炭素社会や循環型社会の実現、環境負荷低減に向けた取り組みを重点的に進める。このため、「TAMA環境ものづくり研究会」を組織し、環境経営や環境技術開発等の研究分科会活動を行うとともに、環境経営事例集を作成、HP、冊子等で発信した。環境配慮型商品の開発に取り組み例としては、軽量化の取り組み、従来品より10%軽量化したボルトの製品化、トラックフレームの軽量化設計などにより軽量化を達成、経費の削減、CO2の削減につながったものがある。
4.地域中核産学連携拠点事業
環境と調和し環境と共生するものづくり産業が集積する、「世界で最も環境負荷の少ない都市(地域)」の実現を目指す。地域の大学、自治体および関連公社、そして地域振興のTAMA協会が連携する広域多摩イノベーション案件会議で産官学連携・研究開発を実現する。
5. TAMAブランド宣言の制定(第4期~)
「TAMAの総力を結集した産学官金の連携によるものづくりの支援を行う」という協会の原点に立ち返り、TAMAが日本や世界のものづくりをリードしていく存在を目指し、地域と世界の発展に奉献していくことをTAMAブランドとして宣言し、その実現(TAMAブランド企業の創出)に向け、会員の主体的な活動を促進し、GNT(グローバルニッチトップ)企業を連続的に創出していくことを目指している。
6.地域イノベーション戦略プログラムの導入
TAMA協会が総合調整機関となり、7大学・4自治体・1金融機関・1産技センターの14機関でSQOL(ローコストで生活の質を上げる技術開発と定義)をテーマに地域イノベーションプラットホームを構築する。特に、大学研究者と地域中小企業との接点・連携の場づくり重点的に実施する。

14. スケジュール(行程表)

「域内の自治体等とタイアップした地域産業活性化」-クラスター政策の支援 2001年~
「案件の創出から事業化までの一気通貫の支援」 2006年~
「環境に配慮したものづくりの推進」       2008年~2012年
「地域中核産学連携拠点事業」          2009年~
「TAMAブランド宣言の制定(第4期~)」     2011年
「地域イノベーション戦略プログラムの導入」  2011年~

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

年度    事業費計(収入計) うち補助金
2001年   84,188千円    11,679千円
2002年   62,751       32,169
2003年   76,596       26,534
2004年   78,494       26,090
2005年   89249       38,301
2006年  117,088       44,137
2007年  129,686       57,299
2008年  104,308       48,548
2009年  148,260       58,873
2010年  289,452       71,317
2011年  229,245       95,437
2012年  222,503      102,829

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

連携コーディネート(TAMAコーディネータ)
 1.大企業等の退職者人数    84名
 2.海外展開専任人数      19名

なんといっても地域振興プロデューサーとも言うべき岡崎英人氏の獲得がこのプロジェクトの最大の成功要因である。
http://sangakukan.jp/journal/center_contents/author_profile/okazaki-h.html

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)

TAMAのネットワーク
産業・企業-製品開発型・基盤技術型 企業272
自治体等(官)-自治体21、商工会議所12、商工会20
大学等-大学等39、TAMA-TLO
金融機関-金融機関9
団体・個人等-団体33、個人24、BI施設6
TAMAコーディネータ:コーディネー167

18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

(1)連携の強化による事業化
関東経済産業局の関連課・職員がTAMA協会と一体となって、平成10年度以来、2期10年間に亘ってTAMAクラスターの組織・ネットワーク形成、プロジェクトを実施してきた。この過程で、企業・大学・自治体等の連携が形成され、それが地域の産業経済の発展に寄与してきた。今後も引き続き連携事業を進めていく。実際、事業化件数は平成20年度は5件であったが24年度、25年度ともに24件と大きく増加している。
(2)公的施策案件への積極的応募等による戦略的活用
経済産業省の地域活性化、中小企業活性化等のプロジェクト、中小機構等のプロジェクトなどに積極的に応募し、TAMA地域の産業経済の発展に資する産学連携プロジェクトを実施してきた。また、経済産業省と文部科学省の承認によるTAMA-TLOを併設し、多くの「地域新生コンソーシアム」プロジェクト等に採択され、地域の新技術・製品開発を進めてきている。一方で地域新生コンソーシアムなどのプロジェクト成果が、現実の製品・技術に転化されている実例が少ない状況であり、これを変えていく必要がある。
(3)産官学金の連携
(4)市場調査から技術・研究開発、販売までの一気通貫の「事業化支援体制」の整備

1地域産業振興のキーマン育成-自治体職員にもより専門的な能力が求められることから、先進的な支援をOJTで学ぶことで、地域産業振興のキーマンを育成する
2.自治体内の企業ニーズに対し自治体だけで対応しにくい複雑・高度な技術課題、知的財産等の専門的な相談に対応した解決策を提示するとともに産学連携・産産連携による新産業創出の支援を行った
3.TAMAネットワークを用いた都県を越えた支援機関の連携体制を構築、広域連携を図った
4.首都圏外地域で埋もれていた中小企業の優れた製品・技術のTAMAネットワークを活用したテストマーケティングにより販路を開拓した
5TAMA協会の海外拠点を活用、海外企業とのマッチング、販路拡充支援、商談支援、海外情報提供事業等、海外への展開が難しい中小企業の支援を行う。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

(1)イノベーションの連鎖反応
TAMAクラスターでは、第一期5ヵ年(H10年~14年)において、TAMA協会にTAMA-TLO株式会社を併設し、関東経済産業局、東京都・埼玉県・神奈川県と、それら3都県に所在する自治体・企業・商工団体(商工会議所、商工会)・大学等を組織し、第二期5ヵ年(H15年~19年)においては、一期に引き続いてTAMAクラスタープログラムを策定し、その基で各種プロジェクトを実施してきた。その結果、プロジェクトそのものによるイノベーションと、プラスしてTAMAメンバー間、国内外のメンバー外企業や大学との協調体制が確立し、新たな連鎖による広域イノベーションがなされてきているが、その実数は未だ限られたもので、今後の量的拡大が求められる。
(2)産業の最適化と環境変化耐性の強化
TAMAクラスターにおいては、従来から蓄積されてきた計測・制御技術と産業の強みを一層強化し、高度メカトロニクス産業を成長させてきた。結果として、製品のグラム当たり単価を従来の1円/g(自動車産業レベル)から5~10円/g(情報家電など)産業レベルへと高度化し、内陸工業地域における土地と輸送コストの不利をカバーしてきている。
域内では、開発型中小企業を中心に、世界的なオンリーワン、ナンバーワン製品・技術を提供し、国際優位性を維持している。また、グローバル経済下にあってのものづくり産業と自然環境調和の実現を標榜し、率先してISO9000、14000の取得、知的財産の確保などに努め、国際的な経済環境変化に対する耐力増加に努めてきている。しかし最近に見るM&Aへの対処としての資本の充実と、事業継承などの中堅中小企業の財務経営への対処は、全く対策されていない状況にある。
また、域内における大手企業からの人材を中堅中小企業に移動させ、併せて大手企業の開発済み特許の中堅中小企業への移転等も実施してきているが、資本、人材、技術のダイナミックな流動性を実現し新技術・産業を創出するには至っていない。
(3)ブランド化による国際的集積の加速化と高品質化
TAMAクラスターは、国内的にはある程度の知名度を確保してきているが、我が国全体の産業経済社会における認知度はそれほど高いとは判断できない。また国際的には、既に連携してきている韓国やイタリアベネット州などの一部では知られているが、産業クラスターの国際的専門研究者の間ではほとんど未知の状況と思われる。
TAMAというブランド自体がTAMA域内でも定着していないし、国内的にはTAMAブランド製品が何であるか特定されていない状況にある。国際的にはTAMAブランドは全く未知と言っても過言ではない状況にある。
(4)連携による事業化件数の増大
連携を進めることによる事業化件数について第3期5か年計画では50件を目標設定したが、連携件数は2008年~2012年で累計件数689件、事業化件数は105件と目標大きく上回る成果を達成している。
また企業はTMA協会の行う事業を活用、製品の性能向上、新市場の開拓を実施、中国市場での事業開拓を進め、グローバルニッチ企業を目指して展開している。

20. プロジェクトによる地域の変化

圏央道開通による埼玉県地域および神奈川県地域の拡大の動き、すなわち首都圏西部スマートQOLl技術開発地域プロジェクトの推進、さらにアジアの事業展開の進行、そしてシリコンバレーとの連携との好循環が始まっている。

首都圏西部スマートQOLl技術開発地域プロジェクト
http://sqipp.jimdo.com/
中国への展開
http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/ac0b/138824/

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

①経営人材育成、交渉力の強化
依然として研究開発・海外展開力が十分でない中小企業に対し、より本格的なグローバルニッチ企業に高まるためには人材育成が必要である。グローバルな経営人材の育成がさらに必要である。TAMA協会の活動の新たなキーワードとしては「交渉力」の支援が挙げられる。
②財政自立化の必要
TAMA協会の2012 年度予算収入構成を見ると、総額223 百万円のうち、補助金および受託事業収入は88%に相当する197 百万円を占めている。
補助金および受託事業収入の性格を2012 年度予算において見ると、2009 年度までの産業クラスター計画の下での「ネットワーク補助金」と同様、数年にわたって比較的安定的に交付される性格の補助金は計101 百万円である。他の90 百万円強は、国の競争的資金、自治体、金融機関等の個別の依頼による受託事業であり、TAMA協会の活動が評価されて獲得した財源である。
それにも関わらず財政自立化を必要とする大きな理由は、国等の公的資金による補助事業の実施や委託事業の受託は、これにより支援対象を会員限定とできなくなり、事務局の機能を分散させ、本来支援を受けるべき会員企業の支援が難しくなる可能性があるからである。
TAMA協会設立の理念は、地域の核となるような優れた企業およびそうなる意欲を持った企業が自社単独ではできない高次の目標を連携やネットワークの力によって実現していくこと、それによって地域経済の牽引力となることであり、それを推進する組織理念として重要なことは、TAMA協会が、会員が自主参画、自主企画、自律的活動で盛り上がっていく自助努力結集の仕組みであることである。これらの理念を共有するコアメンバーの輪を広げていくことが、財政自立化の方向に向かうためにも重要である。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

①財政自立化の方向
財政自立化の具体的方向性に関する論点としては、会員数増加の方向と受益者負担増加の方向がある。会員数増加を図ることについては、「量拡大よりも質を重視して、少数でも良いので世界に知られるような企業を海外にアピールしていけるような制度、ガバナンス、事業が必要、魅力ある事業の内容や成果が会員に十分に理解されていないとの趣旨の指摘も多い。したがって、事業の優先順位付けをしつつも優先度の高い事業については、その周知を図り、会員数の維持、拡大につなげることが重要である。
たとえば海外展開支援事業において、相手国にカウンターパート組織の支援を得て拠点を設け、会員に対して事務所スペースの有料での提供を行っていることはその例である。また、現在および将来のステークホルダーに出資を受けること、たとえば、海外展開支援等において金融機関や物流商社と連携し、連携先から出資を受けるというアイデアもある。
②グローバル経営等に関する実践的学習・意識の醸成
セミナー等を開催し、グローバル経営の基本を学び、実践力を養う、少人数制の経営講座を開催する、異なる視点を持ったメンバーとの切磋琢磨を行い、それぞれの意識を高める。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

(未入力)

24. その他関連情報、資料

首都圏西部スマートQOL技術開発地域と拡大したこの取り組みのシンポジウムでの講演資料も紹介しておく。

TAMA新生のシナリオ.pdf