【背景・課題、目的・目標】
人口を維持していくためには、女性が個々の能力を発揮して自己実現を図れるよう、安心して子どもを預けることができる環境の整備が不可欠であり、その対応施策の一つが保育所の待機児童対策である。自治体が子育て支援策を進めるうえで、市境という行政区域の「見えない壁」が課題となることがある。保護者は自らが居住する市内の施設を利用することが基本であり、市内居住者の保育のニーズ量を的確に見込み、通勤動線なども踏まえて保育所等の整備を進めている。しかし、市境周辺においては、市内施設のみでは地域の保育ニーズに対応が追い付かず、また、保育所を増設しようにも整備に適した土地・建物を確保することが難しい地域が発生している。
横浜市と川崎市の間では、双方の市民が行政区域の垣根を越えて、施設を利用しやすくする仕組みを構築するなど、圏域全体を対象とした行政サービスの提供が課題となっていた。横浜市と川崎市は保育ニーズの急増への対応など共通の課題を抱えながらも、両市ともに「待機児童の解消」を目標としていることから、相互の待機児童対策の更なる促進に資することを目的に、平成26年10月27日に「待機児童対策に関する連携協定」を締結した。この協定に基づく取組により、市境という行政区域の「見えない壁」が取り払われ、子どもの預け先の選択肢が広がることとなり、生活圏や通勤圏を踏まえた保育サービスの利用が可能となった。このように市域の垣根を越え、仕事をしながら子育てを行っている保護者が、安心して子ども預けられる環境をしっかりと作り出し、「子育てしやすいまち よこはま・かわさき」をともに実現していくことが目標である。
【取組内容】
(1)「待機児童対策に関する連携協定」の締結
待機児童対策に関して、保育所の共同整備、保育士の確保対策等下記の事項について、連携・協力協定を締結した。
◎協定の連携・協力事項(第1条)
(1)市境における保育所等の共同整備
(2)特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに横浜保育施設及び川崎認定保育園の広域入所
(3)保育士の確保対策
(4)保育施策に関する研究及び情報共有
(5)国等への要請
(6)その他この協定の目的達成に向けて連携及び協力が必要と認められる事項
※横浜保育室:横浜市が独自に設けた基準を満たし、市が認定・助成をする認可外保育施設
(2)市境における保育所等の共同整備
市境周辺における保育需要を双方に補完し合える地域に、市有地や民有地等を有効に活用しながら、保育所等の共同整備を進めていく。第1弾で平成28年4月に川崎市側に定員90名の保育所を開所、第2弾として平成29年4月開所に向けて現在、準備中。施設概要は以下の通りである。
(3)横浜保育室と川崎認定保育園の相互利用
平成27年4月から、横浜市在住児童が川崎認定保育園を利用する場合、横浜保育室を利用した場合と同等の軽減助成額を横浜市から受けることが可能となった。また、川崎市在住児童が横浜保育室を利用した場合にも、川崎認定保育園を利用した場合と同等の保育料補助を川崎市から実施している。
この相互利用の仕組みを始めたことにより、保護者にとっては、子どもの預け先の選択肢が増えて、より施設を利用しやすい環境が整えられることとなった。
(4)保育士確保対策
保育士養成校の卒業生や潜在保育士等を対象として、両市共同での就職説明会や面接会等を実施し、保育士の就労促進につなげている。平成26年12月、平成27年11月にはミューザ川崎において両市合同で保育士養成校の学生向けの就職セミナーを開催、平成29年1月には、鶴見公会堂で、保育士の採用担当職員を対象に求職者にとって魅力的なPRの方法等を学ぶセミナーを開催。
【成功要因】
①社会的ニーズにマッチした共通の課題への効果的取組
少子化対策の対応施策の一つである保育所待機児童について、政府においても「待機児童解消加速化プラン」の中で、平成29年度末までに国全体としての待機児童解消を目指し、各自治体の取組に最大限の支援を行うこととしている。市民の生活圏や通勤圏が、行政区域にとどまらない首都圏においては、自治体単独の取組だけではなく、自治体間の広域連携も図りながら、圏域全体を対象とした行政サービスの提供やその調整などが効果的であり、この連携協定は社会のニーズにマッチしている。
②横浜市、川崎市ともに待機児童解消が喫緊の課題
横浜市、川崎市ともに待機児童解消が重点施策として挙げられ、ともにその解消が喫緊の課題であり、そのためにあらゆる対策を採ることが可能であった。
【成果】
①横浜市と川崎市の保育所待機児童数対策としての取組活用
横浜市では、平成22年4月時点で1,552人の待機児童がいたが、市長直轄の「保育所待機児童解消プロジェクト」を立ち上げ、定員1万人を超える保育所を整備するなど「待機児童ゼロ」に向けた取組を強力に推進した結果、平成25年4月に待機児童ゼロを達成した。翌年度以降も受入枠の拡大と保護者からの相談対応や情報提供を行う保育・教育コンシェルジュを中心としたきめ細かい対応等により、待機児童数は平成26年4月が20人、平成27年4月が8人、28年4月が7人となっている。
川崎市においても、平成22年4月時点で1,076人の待機児童がおり、平成23年度から3か年で4,400人を超える受入枠の拡充を図るなど、年々待機児童数の縮減を図ってきたが、武蔵小杉等の大型再開発による転入者の増加等により平成25年4月時点での待機児童数が438人と神奈川県内ワーストであった。そこで、平成25年12月に市長をトップとした「待機児童ゼロ対策推進本部」を立ち上げ、保育所整備や川崎認定保育園の積極活用による保育受入枠の拡大や相談体制の充実等により、待機児童数は平成26年4月に62人と大幅に減少、平成27年4月には初めて待機児童解消を達成した。(平成28年4月の待機児童数は6人)
【参考】表 待機児童数等の推移 (単位:人)
②連携による用地・保育施設等リソースの補完による効果的活用
保育ニーズの高まりに対応するため、施設の整備を進めていかなければならないが、川崎市側に活用できる土地があっても、従来までは横浜市の待機児童対策として活用できなかった。また、川崎市においても同様の問題を抱えていた。こうした市境地域の保育ニーズに対応していくためには、自治体間で連携を図りながら、保育所の整備に向けた公有地や保育施設などの両市のリソースを補完し合いながら活用していくことが効果的である
③相互利用による保護者の施設選択肢の拡大及び施設整備量の適正化
既存の保育施設(横浜保育室と川崎認定保育園)の相互利用については、平成27年4月から制度開始しており、市境の住民を中心に利用実績が堅調に伸びている。また、市民からも子どもの預け先の選択肢が広がることについて、好意的な反応が寄せられており、相互利用の実績も堅調に増加している。
<相互利用の人数(実績)>(平成28年10月1日時点)
◎川崎認定保育園に入所している横浜市民 52人
◎横浜保育室に入所している川崎市民 31人
今後、保育ニーズの減少時期の到来も見据え、自治体間で既存のリソースを共用し合うなどにより投資の最小化を図り、持続性のある行政サービスを提供していく。
④先進的かつ自治体の枠に縛られない新たなソーシャルビジネスの契機
先進的かつ自治体の枠に縛られないこの取組は、待機児童対策、放課後児童育成事業等の一貫した子育て支援分野において、例えば送迎サービス、子ども向け弁当のデリバリーなど新たなソーシャルビジネスなどを生み出す可能性があると考える。
【今後の課題・方向等】
①連携事業の推進と効果検証、協定内容の充実等PDCAサイクルの実施
協定の締結は両市が連携して更なる待機児童対策を推進していくスタートラインに立ったものであり、今後は、双方の市民に取ってメリットがある相乗効果の高い取組にしていくことで、一層円滑に進んでいくと考える。そのため、現在、両市は定期的に情報共有の場を持ち、緊密に連携を図りながら、協定の連携事項における取組を推進している。まずは成果を着実に積み上げていき、その効果を検証し、必要に応じて、協定内容の変更・充実を図っていく必要がある。
②保育士確保、効率的な施設整備等の新たな課題への対応
各自治体が待機児童対策に取り組むことで、保育士確保をめぐる都市間競争など新たな課題が出てきている。一方で、子どもの減少が予想される中、無駄な施設を整備しないという長期的視野及びエコロジーの観点も重要である。
③防災等子育て以外の分野への波及
今後とも両市で連携・協力を図りながら指定都市間で初の取組となる今回の協定締結をより実のあるものとし、防災等、他分野への波及についても研究を進めていく。
人口減少社会においてサスティナブルな社会を目指すには、労働力人口はもとより人口を維持していくことが大切である。それには、女性が個々の能力を発揮して自己実現を図れるよう、安心して子どもを預けることができる環境の整備が不可欠であり、その対応施策の一つが保育所の待機児童対策である。
自治体が子育て支援策を進めるうえで、市境という行政区域の「見えない壁」が課題となることがある。
保育所への入所に際しては、保護者は自らが居住する市内の施設を利用することが基本であり、各自治体においては、市内居住者の保育のニーズ量を的確に見込み、通勤動線なども踏まえて保育所等の整備を進めている。しかし、市境周辺においては、市内施設のみでは地域の保育ニーズに対応が追い付かず、また、保育所を増設しようにも整備に適した土地・建物を確保することが難しい地域が発生している。
市民の生活圏や通勤圏は、市境をまたいで切れ目なく往来するものであり、横浜市と川崎市の間では、施設を双方の市民が行政区域の垣根を越えて、より利用しやすくする仕組みを構築するなど、圏域全体を対象とした行政サービスの提供が課題となっていた。
横浜市と川崎市は隣接しており、保育ニーズの急増への対応など共通の課題を抱えながらも、両市ともに「待機児童の解消」を目標としていることから、相互の待機児童対策の更なる促進に資することを目的に、平成26年10月27日に「待機児童対策に関する連携協定」を締結した。
市境における保育所の共同整備や、両市の既存保育施設を双方の市民がより利用しやすい仕組みを構築するなど、相互補完的に連携を図っていくことにより、効果的・効率的に待機児童対策を実施していきたいという思いから、川崎市側から働きかけを行い、このたびの協定の締結に至った。
この協定に基づく取組により、両市の市民においては、保育施設やサービスの利用に際して、市境という行政区域の「見えない壁」が取り払われ、子どもの預け先の選択肢が広がることとなり、生活圏や通勤圏を踏まえた保育サービスの利用が可能となった。このように市境の土地に共同で保育所を整備する、お互いの認定保育所を案内しあうなどで、保育所の待機児童解消という共通の課題に対して市域の垣根を越え、仕事をしながら子育てを行っている保護者が、安心して子ども預けられる環境をしっかりと作り出し、「子育てしやすいまち よこはま・かわさき」をともに実現していくことが目標である。
◎保育所等利用申請者数の推移
横浜市:平成22年4月以降、平成28年4月までの6年間で約2万人増加
川崎市:平成22年4月以降、平成28年4月までの6年間で約1万人増加
◎待機児童数
横浜市:平成22年4月1,552人(全国ワースト1位)、平成25年4月待機児童ゼロ達成
川崎市:平成22年4月1,076人(全国ワースト2位)、平成27年4月待機児童ゼロ達成
特に無し
ー
本プロジェクトのみを対象とした国、県の補助金・支援政策は特に無く、通常の保育所を整備、運営する際と同様の国や県補助金を活用している。
特に無し
特に無し
特に無し
特に無し
(1)「待機児童対策に関する連携協定」の締結
待機児童対策に関して、保育所の共同整備、保育士の確保対策等下記の事項について、連携・協力協定を締結した。
◎協定の連携・協力事項(第1条)
(1)市境における保育所等の共同整備
(2)特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに横浜保育施設及び川崎認定保育園の広域入所
(3)保育士の確保対策
(4)保育施策に関する研究及び情報共有
(5)国等への要請
(6)その他この協定の目的達成に向けて連携及び協力が必要と認められる事項
※横浜保育室:横浜市が独自に設けた基準を満たし、市が認定・助成をする認可外保育施設
(2)市境における保育所等の共同整備
両市の保育需要への対応を目的として、市境周辺における保育需要を双方に補完し合える地域に、市有地や民有地等を有効に活用しながら、保育所等の共同整備を進めていくことにより、保育受入枠を安定的に確保していくことが可能となる。第1弾で平成28年4月に川崎市側に定員90名の保育所を開所、第2弾として平成29年4月開所に向けて現在、準備中。施設概要は以下の通りである。
★施設概要
◎共同整備保育所(第1弾)
①施設名称 幸いづみ保育園
②住 所 川崎市幸区南幸町3丁目149番3
③開 所 平成28年4月1日
④定 員 90人(定員按分:横浜市30人・川崎市60人)
◎共同整備保育所(第2弾)
①施設名称 (仮称)尻手すきっぷ保育園
②住 所 横浜市鶴見区矢向四丁目556番3他
③開 所 平成29年4月1日予定
④定 員 59人(定員按分:横浜市39人・川崎市20人)
(3)横浜保育室と川崎認定保育園の相互利用
平成27年4月から、横浜市在住児童が川崎認定保育園を利用する場合、横浜保育室を利用した場合と同等の軽減助成額を横浜市から受けることが可能となった。また、川崎市在住児童が横浜保育室を利用した場合にも、川崎認定保育園を利用した場合と同等の保育料補助を川崎市から実施している。
この相互利用の仕組みを始めたことにより、保護者にとっては、子どもの預け先の選択肢が増えて、より施設を利用しやすい環境が整えられることとなった。
★制度概要
◎横浜市民が川崎認定保育園を利用する場合
①対象者 横浜市在住(転入予定者を含む)で保育が必要な子ども
②申込方法 保護者から施設への直接の申込
③保育料助成 0~2歳 所得に応じて月額0円~5万円(3歳児以上への助成は無し)
◎川崎市民が横浜保育室を利用する場合
①対象者 川崎市在住(転入予定者を含む)で保育が必要な子ども
②申込方法 保護者から施設への直接の申込
③保育料補助 3歳未満は所得に応じ月額2万円又は1万円、3歳以上は一律月額5千円
(4)保育士確保対策
保育士確保が喫緊の課題となっている中で、保育士養成校の卒業生や潜在保育士等を対象として、両市共同での就職説明会や面接会等を実施し、保育士の就労促進につなげている。平成26年12月、平成27年11月にはミューザ川崎において両市合同で保育士養成校の学生向けの就職セミナーを開催した。
また、平成29年1月には、鶴見公会堂で、保育士の採用を担当される職員の方を対象として、求職者にとって魅力的なPRの方法等を学ぶセミナーを開催した。
平成26年10月 横浜市・川崎市が「待機児童対策に関する連携協定」を締結
平成27年4月 横浜市保育室・川崎市認定保育園の相互利用開始
平成28年4月 横浜市・川崎市共同整備の保育所開所(幸いづみ保育園)
平成29年4月 横浜市・川崎市共同整備の保育所開所((仮称)尻手すきっぷ保育園)
認可保育所共同整備に要した費用(各市単独負担分)
横浜市 川崎市
平成27年度 9,000千円 21,000千円
平成28年度 15,646千円 8,023千円
特になし
横浜市・川崎市の運用組織は以下の表のとおり
表 横浜市・川崎市の協定の推進体制
①社会的ニーズにマッチした共通の課題への効果的取組
国全体において人口減少が進行する中、その流れに歯止めを掛けるためには、出生率を回復することが急務であり、若い世代の割合が多い首都圏の自治体が少子化対策において果たすべき役割は大きい。
少子化対策の対応施策の一つである保育所待機児童の課題について、政府においても「待機児童解消加速化プラン」の中で、平成29年度末までに国全体としての待機児童解消を目指し、各自治体の取組に最大限の支援を行うこととしている。
市民の生活圏や通勤圏の範囲が、行政区域にとどまらない首都圏においては、自治体単独の取組だけではなく、自治体間の広域連携も図りながら、圏域全体を対象とした行政サービスの提供やその調整などが必要であり、連携の結果、一人でも多くの保護者が安心して子どもを預けることができる環境の整備を進めていかなければならず、この連携協定はまさに社会のニーズにマッチしているものと考える。
②横浜市、川崎市ともに待機児童解消が喫緊の課題
横浜市、川崎市ともに待機児童解消が重点施策として挙げられ、ともにその解消が喫緊の課題であり、そのためにあらゆる対策を採ることが可能であった。
①横浜市と川崎市の保育所待機児童数対策としての取組活用
横浜市では、平成22年4月時点で1,552人の待機児童がいたが、市長直轄の「保育所待機児童解消プロジェクト」を立ち上げ、平成22年度から24年度の3年間で144か所、定員1万人を超える保育所を整備するなど「待機児童ゼロ」に向けた取組を強力に推進した結果、平成25年4月に待機児童ゼロを達成した。
ゼロの達成により、翌年度以降、保育所の入所申込みが伸びる状況の中、受入枠の拡大と、保育サービス等の利用に関する保護者からの相談対応や情報提供を行う保育・教育コンシェルジュを中心としたきめ細かい対応等により、待機児童数は平成26年4月が20人、平成27年4月が8人、28年4月が7人となっている。
川崎市においても、平成22年4月時点で1,076人の待機児童がおり、平成23年度から25年度までの3か年で4,400人を超える受入枠の拡充を図るなど、年々待機児童数の縮減を図ってきたが、武蔵小杉等の大型再開発による転入者の増加等により、平成25年4月時点での待機児童数が438人と神奈川県内ワーストであった。そこで、平成25年12月に市長をトップとした「待機児童ゼロ対策推進本部」を立ち上げ、保育所整備や川崎認定保育園の積極活用による保育受入枠の拡大や、区役所窓口の相談体制の充実等により、待機児童数は平成26年4月に62人と大幅に減少し、平成27年4月には初めて待機児童解消を達成した。(平成28年4月の待機児童数は6人)
【参考】表 待機児童数等の推移 (単位:人)
②連携による用地・保育施設等リソースの補完による効果的活用
保育ニーズの高まりに対応するため、施設の整備を進めていかなければならないが、横浜市では川崎市に隣接する鶴見区内や港北区内に保育所整備に適した土地が枯渇している一方で、川崎市側に活用できる土地があっても、従来までは横浜市の待機児童対策として活用できなかった。
また、川崎市においても横浜市と隣接する幸区や中原区、宮前区などにおいて同様の問題を抱えていた。こうした市境地域の保育ニーズに対応していくためには、自治体間で連携を図りながら、保育所の整備に向けた公有地や保育施設などの両市のリソースを補完し合いながら活用していくことが効果的である
③相互利用による保護者の施設選択肢の拡大及び施設整備量の適正化
既存の保育施設(横浜保育室と川崎認定保育園)の相互利用については、平成27年4月から制度開始しており、市境の住民を中心に利用実績が堅調に伸びている。また、市民からも子どもの預け先の選択肢が広がることについて、好意的な反応が寄せられており、相互利用の実績も堅調に増加している。
<相互利用の人数(実績)>(平成28年10月1日時点)
◎川崎認定保育園に入所している横浜市民 52人
◎横浜保育室に入所している川崎市民 31人
首都圏においては、今後、団塊の世代を中心に急速な高齢化の進行が見込まれる中、様々な行政需要に対して効果的・効率的な対策を講じていくことが必要不可欠となっている。
保育所の待機児童対策についても、近年、高まり続ける保育ニーズに対して、従来と同様に自治体単独での施設整備等を推進するだけでなく、今後、保育ニーズが減少に転ずる時期の到来も見据えて、自治体間で既存のリソースを共用し合うなど相互に補完し合うことにより、投資の最小化を図り、その結果、持続性のある行政サービスの提供に資するものである。
④先進的かつ自治体の枠に縛られない新たなソーシャルビジネスの契機
自治体という枠を超えてのこの取組は先進的かつ自治体の枠に縛られない子育て支援、待機児童対策、放課後児童育成事業等の一貫した子育て支援分野において、例えば送迎サービス、子ども向け弁当のデリバリーなど新たなソーシャルビジネスなどを生み出す可能性があると考える。
連携協定の締結により生じた変化として、行政区域の境界を撤廃したことで、保護者にとって子どもの預け先の選択肢が広がったこともあり、両市の市境にお住まいの方などからこの取組への好意的な声が寄せられている。また、両自治体の職員にとっても、市民感覚をより強く意識するきっかけになった。結果的に、自治体の使命である「市民サービスの向上」に繋がったといえる。
①連携事業の推進と効果検証、協定内容の充実等PDCAサイクルの実施
協定の締結は、女性の社会進出を促進するため、両市が連携して更なる待機児童対策を推進していくスタートラインに立ったものであり、今後は、両市双方の市民に取ってメリットがある相乗効果の高い取組にしていくことで、一層円滑に進んでいくと考えている。
そのため、現在、両市は定期的に情報共有の場を持ち、緊密に連携を図りながら、新たな共同整備保育所の候補地の選定や保育施設の相互利用の更なる促進など、協定の連携事項における取組を推進している。まずは成果を着実に積み上げていき、その効果を検証し、必要に応じて、協定内容の変更・充実を図っていく必要がある。
②保育士確保、効率的な施設整備等の新たな課題への対応
現在、国を挙げて女性の更なる社会進出をバックアップする取組を推進している中、基礎自治体である各市町村が責任を持ってこの取組を進めているところだが、各自治体が待機児童対策に取り組むことで、保育士確保をめぐる都市間競争など、新たな課題が出てきている。一方で、子どもの減少が予想される中、無駄な施設を整備しないという長期的視野及びエコロジーの観点も重要である。
③防災等子育て以外の分野への波及
今後とも両市で連携・協力を図りながら、指定都市間で初の取組となる今回の協定締結をより実のあるものとし、子育て分野のみならず、防災等、他分野への波及についても研究を進めていくことで、自治体間連携の先進モデルとしていく。
①新たな課題への横浜市、川崎市及び保育施設が連携・協働による解決
今回の待機児童対策の協定については、全国初の試みということもあり、新たな課題等に対しては、横浜市と川崎市、及び子どもの預かり先となる保育施設とが連携・協働しながらその解決を図り、最終的には両市の市民が制度のメリットを享受できるよう取組を進めていく。
本協定の取組内容については、内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会において、「市町村間の水平的・相互補完的、双務的に適切な役割分担」を行う自治体間連携のモデル事例として取り上げられ、国内他地域においても実現可能な仕組みであり、効率的・効果的な行政サービスを提供する一つの方策として有用なものであると考えている。
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