○市の概要及び現状と課題
福岡県の南部に位置する本市は、肥沃な大地と温暖な気候を活かし豊かな農業のまちとして栄えてきた。一方、農業以外の特徴的な産業がないため、若い世代が結婚や就職を機に市外へ転出する傾向が強く、高齢化率は34.5%を超えるなど少子高齢化が著しい。
とりわけ若者の定住化をはじめとした人口減少問題に対応することが最大の課題である。
○取り組み内容
豊富な太陽の恵みを生かしたエネルギーの地産地消を実現する地域新電力。これを核とした市民サービス事業の展開により、地域経済を活性化させ、雇用を生み出し、課題の解決につなげる。市が関与するサービス事業会社だからこそできる、市民との対話から生まれる市民サービスが、住みやすさと安心感の行き届いたふるさとを再生する。
・環境との調和を図るための事業会社を自治体主導で創設し、地域経済を循環する
・すべての市民が参加し住みやすさが実感できるまちづくりにつなげる、まちを元気にする
・イノベーションを起こすことで、企業を呼ぶ、人を呼ぶ、雇用を生む
「地域に産業を興し、若者の定住化など人口減少問題に対応」
福岡県の南部に位置する本市は、肥沃な大地と温暖な気候を活かし豊かな農業のまちとして栄えてきた。一方、農業以外の特徴的な産業がないため、若い世代が結婚や就職を機に市外へ転出する傾向が強く、高齢化率は34.5%を超えるなど少子高齢化が著しい。
とりわけ若者の定住化をはじめとした人口減少問題に対応することが最大の課題である。
市が中心となり、市民と一体になって、地産地消の再生可能エネルギー活用インフラを整え、環境を保全しながら地域コミュニティと地域産業振興を進めている総合的な取り組みを推進。コンセプト・ビジョンは次の点である。
1) 環境との調和を図るための事業会社を自治体主導で創設
地域にある再エネ、市民が持つ再エネを最大限活用し、市民に対しては環境との調和の中で暮らしていくことを実感するための「見える化」を進め、市が事業会社を設立して、外部に委託することなく自らが運用までも計画する。市が主導して設立した事業会社は、市民、地域産業と一体になり、地域課題の解決に向けた活動を行い、地方創生につなげる。さらには、自治体主導で、他の自治体とも広域に連携し、自治体間で再エネを融通する仕組みを備えていく
2) エネルギーや地域経済を循環させる
地域の自然エネルギーを面的に利用し、さらに、FITに頼らない再エネの導入を目指していく。エネルギーの利用効率を高めるため家庭内のエネルギーデータを取得分析しビッグデータとして政策提案していく。また、キャッシュフローを地域にとどめ地域内で経済循環するべく、ごみやし尿などの排出物質の循環システムも構築する
3) すべての市民が参加し住みやすさが実感できるまちづくりにつなげる
市民が高いモチベーションを持って主体的に参加する場をいくつも生み出し、その市民コミュニティが広がることで市と市民、産学金官と市民が融合していく姿を創り出していく。「場(コミュニティ)」は世代を超えて支え合う郷土愛を育む一方で、高齢者等同じ世代同士のコミュニケーションのあり方を提案発信する場にもなっていく
4) 地域の商店主、地域の機関が一緒になって、まちを元気にする
商店が賑わい、モノが行きかい、人が集まる場を作ることにつなげる。エネルギーの地産地消と生活サービスの充実に向けた活動に参加する商店を増やし、人の交流が増え、モノは、地域外にも売れるようになり、まちを元気にする
5) イノベーションを起こすことで、企業を呼ぶ、人を呼ぶ、雇用を生む
電力・エネルギーマネジメント事業、データサイエンス、暮らしサービス事業、6次産業振興、スマートコミュニティ創造事業、など、地域発で地域の文化に即した活動を続けることで、地域の魅力として発信する。結果、企業が集まり、若い世代に魅力ある都市として進化を続けていくことで雇用を生み出す
6) 市民みんなが心豊かで、世代を超えて多くの人がいきいきと参加できる様々な場を生み出す
「みやまに住んでいて良かった」市民ひとりひとりが自らの言葉で幸せを表現している、そんなみやまに住んでみたくなる。市民は、市政とつながり、地元商店街とつながり、自慢できる農作物を生産している農家とつながり、産業とつながり、そして市民の手でコミュニティを作って絆を進化させていくことで、まちをさらに楽しく、快適に、便利に、幸せにしていくことを目指す。
市民を巻き込んだ目標達成への過程の中途にある。市の施策としては一貫して変化はないが、電力制度の改正等により、本プロジェクトの根幹である電力事業は少なからず影響を受け、翻弄される状況にある。また、電力自由化が実施されたが国民の動きとして電力切り替えの動きは緩慢で、本市においても同様である。
・FIT制度改正の動きが不透明
・電力託送料金が高額
FIT制度に頼らない電源調達を模索
国は再エネ普及促進へ更なる投資を
需要側の施策として一般消費者向けの省エネ施策を
・平成26年度~27年度 経済産業省「大規模HEMS情報基盤整備事業」参画
・平成26年度 地域活性化:地域住民生活等緊急支援交付金(地方創生先行型交付金)先駆的事業分 (タイプⅠ)
・平成27年度 経済産業省「地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金」活用
・平成27年度 総務省「地域経済循環創造事業交付金」活用
(未入力)
高柳メガソーラー
一般家庭余剰電力
みやま産農産物
みやま市民
① 自治体主導で事業会社を設立、運営。地域課題の解決につなげる事業に取り組む
② 地産地消エネルギーの活用 メガソーラー、家庭の太陽光余剰電力より電力を調達
③ 事業推進に必要なノウハウを持つ民間事業者、大学等の連携
(産)・データ連携プラットフォーム NTT東日本
・HEMS情報 NTT東日本、東京電力
・エネルギーマネジメント 富士電機
・再エネモジュール、デバイス 京セラ、オムロン、パナソニック、
・アプリケーション開発 富士通、スマートエンジニアリング、NTTコムウェア、ティップネス
・通信技術 IIJ、NTT西日本
・食、農業 ワタミファーム&エナジー
・サービス コープおきなわ、生協連
・水素コミュニティ コベルコ技研、バイオコーク技研
(官)
みやま市(またはみやまスマートエネルギー㈱)がエネルギー協定を締結
・東京都(環境公社)、鹿児島県いちき串木野市、鹿児島県肝付町、大分県豊後大野市、
みやま市との連携で、事業モデルの検討を開始している自治体は以下のとおり
福岡県柳川市、福岡県八女市、福岡県大木町、福岡県筑後市、兵庫県淡路市、沖縄県那覇市、東京都港区
(民)みやま市民40,000人
(学)九州大学と協定、九州大学共進化拠点と協定、兵庫県立大学と共同実証調査、琉球大学と共同実証調査
(金)筑邦銀行
(1)環境との調和を図るための事業会社を自治体主導で創設
取り組みのコンセプト、ビジョンを達成するために、みやま市が主体となって、事業会社「みやまスマートエネルギー株式会社」を創設(2015年3月)
1)電力事業
市内需要家との売買取引による財源創出で、地域への還元産業投資の原資の一部にも役立て、一方で、サービス事業を両輪で育て上げ、新たな雇用創出を目指す
①活用再エネ:みやま市と市民・市内企業が保有する太陽光発電施設(5.5M)および、個人保有太陽光発電の住宅余剰電力を活用。今後はバイオマス発電(H30年稼働予定)や小水力・風力発電(可能性調査予定)の新規設置を検討。さらに、非FITによる再エネ普及も計画中
②電力販売先:市民・商店など低圧電力 約1800ヶ所(H29年2月時点)
公共施設、病院、など高圧電力 約200ヶ所(H29年2月時点) 再エネ率約35%(平均)
平成28年度販売(見込み) 7.6億円
2)市民サービス事業、地域振興事業
電力事業の収益を、暮らしやすさのためのサービス提供として還元し、市民と一体になった取り組みにつなげていく。高齢者が参加でき、地域で人が育ち、快適で、安全なまちづくりを行う。
提供済みのサービス内容
電力データ利活用サービス・高齢者見守りサービス・電力見える化・太陽光余剰電力買取サービス
暮らしサポートサービス ・健康づくりサービス・暮らし御用聞きサービス・天候配信サービス
行政連携サービス ・行政情報配信サービス・地域情報配信サービス・観光案内サービス
地域振興サービス ・バーチャル商店街・コミュニティ館での交流・各種集いの企画・地域うまいもの提供
*家庭向けサービス加入世帯 286世帯(H29年2月時点)目標:全世帯加入
(2)エネルギーや地域経済を循環させる
1) 九州大学とエネルギー協定を締結
エネルギーの利用効率を高めるために、ビッグデータの解析技術を市自らが保有することが大切と考え、九州大学とエネルギー協定を締結した(2015年11月)
(主な活動実績)
2,060世帯のモニター(大規模HEMS基盤整備事業)から得た、電力データと個人属性データを解析し、各人のエネルギー消費に関するデータベースを整備。電力料金プランの設計に活用、エネルギー利用に関する経済効果分析に活用。今後は、エネルギーの最適利用に関する自動化ソフトの開発につなげる予定
2)地域内経済循環システムの構築
バイオマス産業都市認定(H26年7月)
(3)すべての市民が参加し住みやすさが実感できるまちづくりにつなげる
各種サービス提供は今後、市民との対話の中からサービス開発をすることで真に必要なサービス展開へとつなげていく。さらに連携する自治体とアイデアを共有し、広域展開を図る。
(4)地域の商店主、地域の機関が一緒になって、まちを元気にする
バーチャル商店街には、現在市内の40店舗が参加して、Webショッピングサイトを構築している。今後はさらに多くの店舗の加入や、農家が直接参加するなどして、サイトの魅力を高めて行く。
また、みやまスマートエネルギー社が配達もおこなうことで、配達時の見守りにも一役買っていることから、今後は地域商店と市民をつなぐコミュニケーションの架け橋にもなっていくことができる。
この取り組みは、連携する自治体間で広げていく。筑後7国といわれる近隣の自治体のほか、すでに、鹿児島県いちき串木野市や鹿児島県肝付町とは、バーチャル商店街の連携を計画推進中であり、自治体間でのものの流れが広がっていくことも期待している。
この取り組みの効果として次のような活動につながっていく
・創造の連鎖を生む活気あるコミュニティが次々に誕生する
・交流人口が増加し、結果としてみやま市に住んでみたい人が増える
・みやま市が面白そうだから一度行ってみようと思う人が増えて、みやまブランドの発信になる
(5)イノベーションを起こすことで、企業を呼ぶ、人を呼ぶ、雇用を生む
(6)市民みなが心豊かで、世代を超えて多くの人がいきいきと参加できる様々な場を生み出す。
市民は、地方ならではの「コミュニティ」を求めている。みやま市の、エネルギーを軸にしたスマートコミュニティの取り組みは「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中で一体化し、対外的にはみやま市の魅力として発信する一方で、みやま市民に対しては、市民参加型の場を提供していく取り組みを行っている。
市民コミュニティの情報発信基地「さくらテラス」のオープン(H28年11月)
(7)みやまの取組みを子供たちに伝える活動
未来を背負って立つ、子どもたちへの教育を実施。子どもたちの反応に手ごたえを感じており、教育委員会と連携して出前授業を定着させていく。将来的には教育カリキュラムへの反映を要請していく。
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HEMS機器設置補助 H28(24,000千円)H29(3,000千円)
バーチャル商店街加入促進補助 H28(1,500千円)H29(1,200千円)
電力技術者
① 自治体主導で事業会社を設立、運営。地域課題の解決につなげる事業に取り組む
自治体主導でエネルギー会社を創設、FITの比重を減少させつつ、域外流出電気料金を地域内経済へ還流、併せて生活情報提供により市民サービス向上を図る
② 再生可能エネルギーを地域振興に最大限活用
メガソーラー、家庭の太陽光余剰電力より電力を調達
③ 事業推進に必要なノウハウを持つ民間事業者、大学等の連携
自社の電力需給管理業務ノウハウを核に、九州や東京の自治体・公社と業務提携、また周辺自治体との連携も強化
この取り組みによる具体的な成果は以下のとおりである
・電力販売金額 756,000千円(H28年度見込み)
・地産地消再エネ活用率 35%
・市民、企業電力切り替え件数 2,000件
・市民サービス申込者数 286件
・高齢者見守りサービス継続利用期待割合 30%
・みやま市マスコミ取り上げ件数 110件/6月末現在
・自治体(一部企業)視察件数 200件
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①PRを通じた認知度の向上・観光消費額の増加
この事業が先進的な取り組みとして注目を集め、エネルギー方面の学・官を含め、様々な企業とも接点を持つことができた。このような背景を積極的に利用し、新たな人の流れを誘導することで、全国からの訪問者向けに市特有の資源を活用したPRを行い、認知度の向上・観光消費額の増加等につなげていきたい。
②オープンなネットワーク型の取り組みを推進し、スマートコミュニティのさらなる推進を図る
地域経済の活性化及び雇用創出の課題解決は、地域の持つ力を使って、関心のある市民と一緒に引き出し、自らの事として考えていくことだと実感している。そのためには、本市の活動を地域に閉じた活動とせず、オープンなネットワーク型の取り組みとして推進し、さらに多くの方々と情報や技術やノウハウを共有してスマートコミュニティのさらなる推進を図りたいと考えている。
① バイオマス発電(着工計画中)や水力発電(可能性調査予定)の新規設置、非FITによる再エネ普及を計画中
② 大規模HEMS基盤整備事業を、エネルギーの最適利用に関する自動化ソフト開発につなげる。
③ バーチャル商店街への店舗加入、農家の直接参加等サイトの魅力度UP。みやまエネルギー社の配達による地域商店街と市民のコミュニケーション活性化。連携事態間への展開。物の流れにつなげる。
④ 子どもたちへの教育を、全市に拡大
市民啓発、十分な説明、コンセンサスの獲得
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