1. プロジェクト名
若者チャレンジ「幸雲南塾(大人版)」 (島根県雲南市)

2. 概要

「課題先進地」から「課題解決先進地」へ。
島根県雲南市では、課題解決スキルをもつ若者の育成と課題解決ビジネスの創出が進んでいる。その中心的な場が、平成23年度から実施している「幸雲南塾(大人版)」である。塾生は地域課題の解決に向けたプランの企画・検討から、実践までを中間支援組織や社会起業家のサポートにより一貫して行う。地域自主組織との連携により、在宅医療の空白地に訪問看護ステーションを起業した例や地元酒造との連携によるコミュニティビジネスの創出など、地域の課題を克服する活動を展開。こうした動きに飛び込んでくる若者が全国から集まりだしている。

「若者チャレンジ「幸雲南塾(大人版)」 (雲南市).pdf

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

雲南市は、人口減少が著しく、高齢化率が全国の25年先を進んでいる。課題先進地である。「持続可能なまち」に向け、若者の流出抑制と移住・交流人口の増加を図り、まちづくりを担う「人材の育成・確保」を進めていく必要があった。平成16年11月の雲南市誕生以来、子ども世代のチャレンジ(市独自のキャリア教育プログラムによる、保幼小中高一貫したキャリア教育の取組)、大人世代のチャレンジ(行政との協働のもと、地域住民が主体となり、地域づくり・地域福祉・生涯学習を推進していく地域自主組織の取組/第1回プラチナ大賞特別賞)と二つの世代のチャレンジを推進し、一定の成果を上げてきた。その一方で、雲南市内には高等教育機関がなく、多くの若者が進学等で市外に転出する状況があった。そこで、子どもチャレンジと大人チャレンジをつなぐ世代である、若者世代のチャレンジとして、若手人材育成塾「幸雲南塾」の取組をスタートさせた。この塾は、市内外の志ある若者が、地域の課題について調査・研究し、課題解決に資する取組を計画・実践することで、課題解決スキルをもつ人材の誘致・育成を図るとともに、若者が地域とともに課題解決にチャレンジする総働のまちづくりを推進することを目的としている。
また、「子どもチャレンジ」、「若者チャレンジ」、「大人チャレンジ」の推進により、チャレンジの連鎖が生まれ、持続可能なまちづくりへとつなげる。そして、課題先進地である雲南市が課題解決先進地となることで、当市だけでなく、他の自治体に横展開することで、日本全国の地方創生の取組にもつなげていく。

4. プロジェクトの達成目標

・コンセプトは、社会起業家や地域課題解決に繋がる仕事づくりを志す人材の育成及び確保。
・将来ビジョンは、「10年後に100のチャレンジが起きるまち」。
・課題解決スキルをもつ若者の育成と課題解決ビジネスの創出

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

・若い世代(主に20代30代)の地域づくり活動の活発化
・まちづくりスキルを持った人材のネットワークが広がり、移住する塾生も出てきた。
・地域貢献活動を更に継続的なものにするため、ビジネス展開も支援
・さらに若い世代(高校生・大学生)へのまちづくり活動への参画増加、人材・育成確保の推進
・若者によるチャレンジを更に推進していくための政策が充実。地方創生の取り組みとして『子ども×若者×大人チャレンジの連鎖』を中心にした政策を展開

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

(未入力)

7. 上記規制をどう解決、回避したか

(未入力)

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

島根県中山間地域活性化支援事業    (平成23年度/1,900千円)
       〃           (平成24年度/2,390千円)
新・地域再生マネージャー事業     (平成25年度/2,900千円)
緊急雇用創出事業(地域人づくり事業) (平成26年度/10,151千円)
       〃           (平成27年度/903千円)
地方創生先行型交付金         (平成27年度/36,761千円)
地方創生加速化交付金        (平成28年度/54,536千円)

9. 補助金に対する報告書のファイル

(未入力)

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

・地域自主組織(小さな拠点)との連携
・市内NPOや企業との連携
・市外のプロフェッショナル人材との連携

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

中間支援NPO(おっちラボ)
人材育成・組織基盤強化支援企業(株式会社PubliCo)

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

①官民協働の取組み
市役所内の関係部署からなる横断的なプロジェクトチームに事業パートナーとなるNPOも参加し、KPI達成に向け、官民協働で取り組みを進めている。

②外部委員の参画
外部委員として産官学金労言の各方面から有識者にご参画いただき、KPIの設定やその見直しをご議論いただくなど、PDCAを回し常に有効な取組が実践できるような体制を構築している。

③各種勉強会の開催
産業(起業、事業承継等)、金融(民間資金の調達・活用を含む)など、産業・金融機関の関係者を交え各種勉強会を開催している。

④若者会議の開催
高校生、大学生と塾生を交えた若者会議を開催。地域課題とその解決策について議論し、そこで検討した取組を地元イベントで実践している。

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

市内外の志ある若者を募集し、以下の取組を半年間行う(平成28年度は10ヶ月間)
① 地域の課題とその解決策について仮説を立て、その仮説のもとに地域課題解決プランを作成。その後、実地調査・研究(雲南市内もしくは全国の先進地の住民へのヒヤリング等)のフィールドワーク。
② ①の結果を基に地域の課題と向き合い、仮説・計画・実践のブラッシュアップ+小さな実践の積み重ね。
③ 毎月1回、定例の講座を開催。既にチャレンジを実践している若手起業家や専門スキル・ノウハウを持った都市部の人材を講師として迎え、講義を受けることで、自分たちの想いやモチベーションを高める。また毎回、全塾生からプランの進捗状況を発表してもらい、講師や講義の一般聴講者(地域住民や市内外の実践者等)、他の塾生等からコメントをもらうことで、新たな気づきにつなげ、プランをブラッシュアップする。
④ ①、②について半年間取り組んだ内容を最終報告会として、地域の高校生・大学生、地域住民、商工会、地銀、県内外で同様の取組を行う実践者等に向けて発表。評価やアドバイスをもらうだけでなく、関係者から「ヒト・モノ・カネ」の支援をもらうなどのPRの場とすることで、塾終了後のプラン継続につなげる。
※塾全体を通じて、塾生にはメンター(伴走者)をつけ、定期的に面談を実施。各塾生のプランが「My Plan(個人のプラン)」ではなく、「Our Plan(複数の人が関わるプラン)」であるということを意識させることで、孤立することなく、プランの実践にまい進できる体制を整えている。

14. スケジュール(行程表)

平成23年 幸雲南塾(大人版)事業開始(第1期)
平成25年 幸雲南塾運営をNPO法人おっちラボに委託(幸雲南塾第3期)
平成27年 地方創生事業(「子ども×若者×大人チャレンジの連鎖」を中心としたまちづくり)開始(幸雲南塾第5期)
      訪問看護ステーション「コミケア」創業
平成28年 6期までを終え98人の卒業生を輩出

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

(未入力)

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

・弁護士
・医師
・地域づくりコーディネーター
・地域づくり応援隊

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)
18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

① 人づくり、地域づくりのアイディアを、実現させるサポート環境(市との連携、地元商工会、金融機関、地元住民の支援等)の整備
② 塾卒業生の活動
③ 全国の地方創生の取組に繋げていく目標に対して、積極的な活動を展開

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

①専門家による刺激が新たな発想を生む
地域で活躍する先輩実践家や都市部の専門スキルを持った人材による講義と、塾生のプラン作成・実践への専門家からのアドバイスにより、それまでになかった新たな発想が出てきている。

②地域課題を解決する事業の創出
新産業の創出という点では、地域医療の空白地であったエリアに、20代のIターン者3名が塾生となり訪問看護ステーションを立ち上げた事例や、都市部の専門スキルを持った人材によるアドバイスを基に、地域資源(米)の活用と地元酒蔵の協力によるコシヒカリからの地酒づくりを実践し、新たなコミュニティビジネスに繋がった事例など、確実に成果に繋がってきている。また、地酒作りの事例については、周辺の地区でも同様の事業が始動するなど、波及効果も生まれてきている。

・起業7件: NPO法人設立、ペットグッズの商品化、弁当宅配業者と連携した高齢者の見守り活動の事業化、雲南市産品等のネット通販ショップの立ち上げ、カフェ開業、憩いの場(カフェ)の開設、訪問看護の事業化
・稼業承継 3件: 漬物店(1期生)、養鶏業(1期生)、クリーニング業(2期生)

③中間支援NPO(おっちラボ)の誕生
塾生を中心に、若者の起業等を支援する中間支援NPO(おっちラボ)が誕生
幸雲南塾(大人版)を全国展開 NPO法人おっちラボが全国の姉妹塾を後方支援。全国15か所に拡大

④若者移住の加速
志ある若者(プロフェッショナル人材)の育成・流入: H27年度 22名移住

20. プロジェクトによる地域の変化

① 地域住民の未病や健康づくりに寄与
医療空白地に訪問看護ステーションが立ち上がり、住民の希望に沿った医療や看護のサービス提供が広がり、ステーションの利用者も増えてきている。また、毎月1回、地域自主組織と連携したサロンを開設し、地域住民の未病や健康づくりに寄与する活動も展開されている。
② 地域の新たなコミュニティビジネスの創出
ほぼ全世帯が稲作に取り組む地域で、収穫されたコシヒカリを活用した地酒作りを実践することで、地域の新たなコミュニティビジネスの創出に繋がっている。この事例は、地元の酒蔵との協働事業として実施することで、酒造業者にとっても新規販路開拓に繋がっている(完全受注販売とすることで、地域住民や農家が宣伝や取りまとめをするなど、地酒の販路開拓まで行っている。酒造業者にとっては大きな負担もなく新たな収入源となっている)。
③ 地域の課題解決や活性化への寄与
図書館のない地域に古民家をリノベーションして私設図書館を設置した事例や、飲食店が少ない地域に、「憩いの場」の創出というコンセプトで飲食店を開設することで、飲食の提供だけでなく地域住民の交流拠点の創出にも繋がった事例、多文化共生のまちづくりを推進するグループが活動を始めた事例など、住民サービスの向上に繋がるような公益性の高い事業や起業、コミュニティビジネスの創出に繋がった事例があり、地域の課題解決や活性化に一定の効果が認められる。

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

①公的な財源に頼り続けることのない財政的にも持続可能な体制を確立
今年度、コミュニティ財団(市民ファンド)設立に向けた調査・研究事業を、専門のリサーチャーに参画してもらいながら取り組んでいる。その調査結果に基づき、島根大学、(公財)ふるさと島根定住財団、県中山間地域研究センターなど地域の実情に精通した有識者で組織するチームで検討を重ね、持続可能な仕組みづくりを進めている。
 また、その他にも遺贈や寄付、企業版ふるさと納税の活用等、様々な可能性を検証し、継続的な若者チャレンジが創出できる体制の構築を進めている。
②起業スキル・マインドを持った人材の更なる獲得
ビジネスモデルの創出に向け、市外から起業スキル・マインドを持った人材の誘致に向け、その仕組みの構築が必要である。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

①雲南市産業振興センターや地銀、商工会等との更なる連携
雲南市産業振興センターや地銀、商工会等との連携をさらに進めることで、塾生のプランや実践がよりビジネス展開しやすい環境づくりに重点を置く。塾生の取組が課題解決ビジネスとして自走することで、持続可能なモデルを増やしていく。

②地元の高校や県内の大学との連携強化、またUCCや地域自主組織との協働
地元の高校や県内の大学との連携強化、またUCCや地域自主組織との協働を進めることで、より実践的で効果的な人材の育成・確保に努める。

③地方での起業を指向する人材獲得に向け、NPO等と連携し人材獲得に向けたネットワークを構築し、課題解決に向けた取り組みを加速する。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

・外部からの人材を呼び込むなど、「外からの風」を積極的に取り入れる
・当プロジェクトに関わるスタッフによるノウハウ提供も実施している(有料)

24. その他関連情報、資料

(未入力)