全国の地方同様、石川県も1次産業の衰退などで森林・里山の荒廃、人口の漸減などが次第に顕在化してくる中、コマツ・石川県・森林組合などは地産地消型バイオマスを核として森林資源を賢く活用し、地域の林業サイクルを大きく育て、地方を元気にしていく活動に取り組んでいます。
特に、コマツは石川県が創業の地であり、地域に根差す企業として、バイオマスによる省エネや環境負荷低減で地域と共盛する工場を実現し、地域社会への貢献を果たしていきたいと考え、2013年より、エルダー社員の経験・知識を積極的に活用し、この活動を県などと協働で推進しています。
○地域の森林組合においては、従来、無価値なものとして放置されていた未利用間伐材などを収集し、チップ燃料として有価な材に転換してコマツ粟津工場のバイオマスボイラに供給するとともに、森林整備を拡大し、地域林業活性化に繋げる活動を実施しています。
○コマツにおいては、チップ燃料を工場内で高効率バイオマスボイラシステムにより多目的なエネルギー(電気、熱など)に変換して利用することにより、購入電力量や重油使用量の削減を行い、省エネや環境負荷軽減(CO2削減など)で地域と共盛する工場を実現しています。
○石川県においては、活動を行政面から支援することで、大雨時の放置材流木化被害軽減や洪水被害の防止を図るとともに、県内の林業振興、里山保全、環境改善などに繋げています。
○上記に関わる設備製造、チップ輸送業務、工事などは、地元業者と連携して行い、産官連携で地域全体にバイオマス運用効果がもたらされるよう地域産業全体の活動参画を進めています。
○このような活動を現在まで継続実施してきた結果、森林組合においては収入増や若者の雇用増が図られ、森林整備意欲が高まってきており、これに関連して、地域の他産業においてもバイオマス運用効果が認められるようになり、地域全体の活性化が促進されてきております。
○今後も地方創生という大きな課題に対し、小さいながらも地産地消型バイオマスを核に県全体の林業の循環サイクルを再整備し、地域活性化を促すことにより、着実に課題解決していきます。
・全国の地方同様、石川県も1次産業の衰退などで森林・里山の荒廃、人口の漸減などが次第に顕在化
(状況)
① 創業地である地域へのご恩返しと1次産業活性化支援の責務
コマツは石川県が創業の地であり、地域の支援により成長してきた。一方、近年の都市部への過度な集中により、県内の人口は減少傾向であり、特に、地域の1次産業従事者は減少し、林業等の衰退に伴う森林や里山の荒廃が顕著になってきている。
このような状況下、地域内で工場の操業を維持し発展させていくためには、林業などの地域1次産業を再生・活性化させて、良好な住環境や自然環境を維持し、人口(特に若者)の増大を図っていくことが不可欠と考え、地域へのご恩返しとともに地域に根差す企業の責務として、バイオマスの利活用を通じた林業支援を計画した。
② 東日本大震災を契機とする電力供給の逼迫化と電力使用量半減活動
2011年の東日本大震災を契機とした電力供給の逼迫化により、コマツでは「電力使用量半減活動」を推進している。
その中で、地域の森林にある未利用材や放置間伐材に着目し、バイオマス燃料として有効利用することで工場内の電力使用量や重油使用量を削減できるものと考え、バイオマスの利活用を計画した。
(課題)
① バイオマス利活用のための利害関係者の共助体制構築
バイオマスの利活用にあたっては、利害関係者、すなわち、石川県(森林整備促進、環境保全、防災など担当)、森林組合(森林整備、未利用材収集、チップ燃料化など担当)、コマツ(バイオマス施設稼動と利用)、2次産業者(設備開発など)などが、互いにウイン・ウインの関係でメリットを享受できることが必要であり、共助の体制を地域内で確立することが継続的な運用に繋がる。
そのため、地域全体での共助の体制をどのように確立するかが最初の課題として認識された。
② チップの供給量、消費量、供給単価に関する当事者間の事前合意形成
バイオマスの利活用を円滑に運用するためには、地域内での木材産出量、チップ供給可能量、供給単価、チップ消費量などの一連の関連情報を関係者が共有し、産出・供給・消費等で互いに齟齬(乖離)のないよう運用することが重要である。(全国のバイオマス運用事例の中でも産出・供給と消費の間で乖離などが発生し、行詰まっている案件も見受けられる)
このため、特に、供給量、消費量、供給単価などに関しての当事者間の事前の合意形成が大きな課題として認識された。
③ エネルギー利用効率が高く投資回収性が良好な設備の開発・導入
バイオマス燃料を発電のみに利用する場合、そのエネルギー利用効率は僅か15~20%程度であり、全国の運用事例からも、低効率で無理な運用により設備投資回収が困難となり、運用が頓挫して地域に多大な負債のみを残す結果となるケースも見られる。
このため、エネルギー利用効率が高く投資回収性が良好な設備をどのように開発・導入するかが、もう一方の大きな課題として認識された。
放置間伐材など未利用材をバイオマス燃料として地域内で多目的かつ高効率に有効活用することで、林業活性化、省エネ、環境改善などを図り、地域全体の活性化と地方創生を推進する。
主たる活動と目的は次のようなものである。
① 無価値な間伐材を活用した地域林業活性化
地域の森林組合において、従来、無価値なものとして放置されていた間伐材などを収集し、チップ燃料として有価な材に転換し、森林所有者や林業者への利益還元や森林整備を拡大し、地域林業活性化に繋げる。
② コマツ工場内での省エネ、二酸化炭素排出量削減
コマツにおいては、チップ燃料を工場内で多目的なエネルギーとして利用することにより、電力や重油使用量の削減を行い、大幅な省エネと二酸化炭素排出量削減に繋げる。
③ 県内の大雨時の災害防止と林業振興、里山保全、環境改善
石川県においては、上記活動を行政面から支援することで大雨時の放置材流木化被害軽減や洪水被害の防止を図るとともに、県内の林業振興、里山保全、環境改善などにも繋げる。
④ 地域の2次産業(中小機械産業)の活性化
上記に関わるチップ製造設備は、地域内の中小機械産業が開発することとし、1次産業(林業関係)だけでなく、地域の2次産業(中小機械産業)の活性化にも繋げる。
⑤ 木材生産量の増加、地域内産業全体の振興
未利用間伐材などを地域で一定量、安定的に活用していくためには、地元用材の需要拡大による木材生産量の増加を図る必要がある。そのため、バイオマスの地域内利活用促進にあたっては、地元用材の利用促進も三者(県、森林組合連合会、コマツ)で推進し、林業活性化と併せて地域内産業全体の振興に繋げる。
⑥ 地産地消型バイオマス循環サイクル活動を地方創生に繋げる
上記①~⑤の地産地消型バイオマス循環サイクル活動を通じて、森林整備促進、省エネ、二酸化炭素排出量削減、良好な自然環境の維持、災害防止などを地域内で推進し、併せて、地域産業全体の底上げと活性化を図り、地方創生に繋げていく。
-
-
-
林野庁「森林整備加速化・林業再生事業」補助金認定
(文書報告資料なし)
①コマツ、石川県、県森林組合連合会による「林業に関する包括連携協定」締結
コマツ、石川県、県森林組合連合会と協議し、2014年2月に三者間で「林業に関する包括連携協定」を締結し、三者が主体となって県内のバイオマスの活用や林業活性化を円滑に推進
②コマツ・エルダー社員の経験・知識の活用
2013年より、コマツのエルダー社員の経験・知識を積極的に活用し、この活動を県などと協働で推進
・石川県内の工事業者、機械設備業者など設備建設協力業者多数
-
①コマツ、石川県、県森林組合連合会による「林業に関する包括連携協定」締結(2014年2月)
石川県、県森林組合連合会と協議し、2014年2月にコマツを含めた三者間で「林業に関する包括連携協定」を締結し、三者が主体となって県内のバイオマスの活用や林業活性化を円滑に推進し、更には、地域全体の活性化や地方創生を図っていくこととした。
②「かが森林組合」によるチップ化事業と県による設備導入支援
森林整備、未利用材収集、チップ化業務は地元の「かが森林組合」が担うこととし、チップ化事業に向けた取りまとめや設備導入支援(設備費補助)は石川県が担うこととした。
③チップ製造設備(チッパ機)を県内機械製造業者が開発・納入
県内の2次産業関係にもバイオマス活用効果が波及するような取組みとして、チップ製造設備(チッパ機)は、県内の機械製造業者が開発・納入することとし、「かが森林組合」の設備導入費を抑制するとともに、県内外に広く拡販することとした。
④コマツにおけるバイオマス温水ボイラ設置(2014年4月)、バイオマス蒸気ボイラシステムの開発・導入(2015年4月)
コマツにおいては、第一次のバイオマス設備として、2014年4月に小規模(出力110kW)のバイオマス温水ボイラを設置し、従来のLPガス給湯機の代替えとするとともに、2015年4月には、発電と熱利用を兼ねた高効率(エネルギー利用効率約70%)のバイオマス蒸気ボイラシステムを開発し、導入した。
⑤バイオマス運用に関するチップの供給量、単価、利益還元額の合意
バイオマスの運用に当たって、事前に石川県、森林組合、コマツの三者で協議し、地域での可能な材搬出量、無理のないチップ供給量、適切なチップ単価、林業者などへの利益還元額などを取り決め、地産地消型の運用体制を合意した。
⑥地元用材の需要拡大による木材生産量の拡大
未利用間伐材などを地域で一定量、安定的に活用していくためには、地元用材の需要拡大による木材生産量の拡大を図る必要がある。そのため、バイオマスの地域内利活用にあたっては、地元用材の利用促進を三者(県、森林組合連合会、コマツ)で併せて推進することとした。
(前項に掲載)
(非公開)
コマツ社内、森林組合、石川県の各専門分野の人材で詳細を決定
①企業・自治体・森林組合の三者一体の取り組みが、それぞれWIN-WINの関係となり、事業全体が継続発展のスキームで構成
②企業の大規模工場を核として自治体・森林組合が連携し木材資源を活用するモデルケースを構築
③事業当事者にとどまらず、地域の二次産業活性化、木材生産量の拡大、山林の災害防止等にも貢献
①コマツにおける省エネ、購入電力量削減等運用体制確立と地域の環境改善、地域林業振興等の継続実施が実現
コマツにおいては、上記記載のバイオマスボイラを稼動させることにより、チップを年間最大約7000㌧使用し、効果として、購入電力量削減約150万kWh/年、重油使用量削減約80万㍑/年、LPガス使用量削減約6,800m3/年、CO2排出量削減約3,000㌧/年を見込めるシステムの開発と運用体制を整備した。
これにより、投資回収をバイオマスの耐久年限である15年以内とすることが可能となり、また、省エネ、購入電力量削減、環境改善、地域林業振興等が継続的に実施できる見込みが立った。
(2015年実績は試験運転期間等もあり実運転期間が短くなり、実績効果は上記の約55%程度となったが、2016年度は上記の効果を回収できる見込みである)
②未利用間伐材の計画的回収と災害軽減による、森林所有者や林業者等の森林整備意欲の向上
未利用間伐材などの収集、運搬、保管の実務は石川県の支援のもと、上述の通り「かが森林組合」と地元林業者、森林所有者が相互に協力して担うものとした。
これにより、常時、「かが森林組合」の土場に約5,000㌧程度の未利用間伐材が収集保管され、地域の放置材が減少し災害の軽減にも役立つとともに、森林所有者や林業者等の収入増や若者の雇用増が図られ、森林整備意欲向上の源泉となっている。
③コマツにおける地元用材の活用、アピールによる「かが杉」需要拡大
コマツにおいては工場内施設や研修施設などの新設に当たっては地元用材を活用した施設作りを展開しており、県内外の来訪者、マスコミなどに「かが杉」利用のメリットをアピールし、需要拡大に繋げている。
特に、2016年4月には、現在着目されているCLT工法も用いた「かが杉」による新食堂を建築し、内外に地元用材活用を広くアピールしているところである。
①地産地消型バイオマス循環サイクル活動を通じた、地方創生の体制が県内で確立
地産地消型バイオマス循環サイクル活動を通じて、森林整備促進、省エネ、二酸化炭素排出量削減、自然環境の維持、災害防止などを地域内で推進し、併せて地域産業全体の底上げと活性化を図り、地方創生に繋げていく体制が県内で確立できつつある。
②地元業者との連携、産官連携による地域産業全体の活動参画が進む
設備製造、チップ輸送業務、工事などは、地元業者と連携して行い、産官連携で地域全体にバイオマス運用効果がもたらされるよう地域産業全体の活動参画が進む
地産地消型バイオマスを核に県全体の林業の循環サイクルを再整備し、地域活性化を促進
①同様の取組の県内での展開・普及
県内で同様な取組みが5~10例、実現可能なよう、石川県、森林組合連合会等と展開・普及を図る
②コマツにおける熱利用効率の更なる改善
コマツにおいては、更に熱利用効率を高める改善を実施中であり、地域が大切に育てたバイオマスエネルギーを無駄なく、有効に利用できるシステムを目指して、日々、努力中(折角の自然エネルギーを発電のみで無駄に利用することのないよう、高効率モデルを模索中)
・自治体を含め、事業関係者で事前計画を綿密に協議し、事業が破たんしないスキームを構築することが重要。
・特に、未利用材などが無理なく地域内で収集できる量やチップ供給単価、設備投資金額、事業採算性などを精査し、適切な事業規模を設定することが重要。
・発電だけに頼らないで、複合的な熱利用で熱利用効率の高いシステムを導入し、導入システムの採算性を高めることも重要。
(未入力)