1. プロジェクト名
「地域の寺子屋」事業 ~地域ぐるみで子どもの育ちを支える仕組みづくり~ (神奈川県川崎市)

2. 概要

本事業では、教育委員会から地域の団体に事業を委託して、学校施設を活用しながら、放課後、週1回の学習支援と、土曜日等に月1回の体験活動を実施している。また、子ども達の学習や体験を指導してくれる方(寺子屋先生)を地域から広く募って、多くの地域の方や保護者の参画を得ながら事業を実施している。
1.寺子屋の開講状況
 現在、市内で38か所の寺子屋が開講しており、地域や学校の実情に即した様々な形態の団体に委託をしながら、寺子屋ごとに特徴のある活動を展開している。
2.放課後の学習支援
 放課後、週1回実施している学習支援は事前登録制で、学校内の特別教室を会場に、地域の方、元教員、保護者、学生などの寺子屋先生が、子ども達の宿題や学習のサポートを行っている。多いところで100名を超える登録があるが、会場のキャパシティーや寺子屋先生の確保の問題から、今週は2年生、来週は3年生…というようにグループ分けをして実施せざるをえない寺子屋がほとんどである。
 対象学年については、学校と実施団体との話し合いにより、各寺子屋で決めている。
 また、複数学年の子どもが1つの問題を一緒にといてみたり、掛け算九九の練習をしたりなど、色々な工夫をしている寺子屋もあり、さらには、寺子屋先生達の特技を活かして、囲碁や折り紙、コマ回し、紙芝居の時間などをもっている寺子屋もある。
3.土曜日等の体験活動
月1回、土曜日等に実施している体験活動では、各寺子屋が自由な発想で様々な体験活動を実施している。地域の中で活かしたい趣味や特技を持った方を寺子屋先生としてお招きするもの、企業や大学、団体と連携したプログラムなど、多様な体験活動の機会を提供している。
 体験活動については、その都度参加者を募集しているが、非常に人気があり、たびたび抽選となってしまう状況である。また、親子参加のプログラムも積極的に行われ、親子のふれあい、保護者同士の交流、保護者世代と地域の方々との交流など、世代間交流の機会となっている。
4.寺子屋事業を推進する取組
①地域の寺子屋推進フォーラムの開催
 寺子屋事業について広く市民に周知し、「我々の地域でも寺子屋を立ち上げよう」という機運を高めるために、フォーラムを開催している。
 平成27年度から毎年1回開催しているフォーラムでは、各寺子屋からの実践報告、実際の寺子屋の体験、子どもの育ちに関わる団体の代表者や学識によるパネルディスカッション、寺子屋の体験活動に協力いただいている企業・団体と、各寺子屋とのマッチング、市内大学の学生と寺子屋関係者の交流などを行った。
②寺子屋先生養成講座、寺子屋コーディネーター養成講座の開催
 放課後の子ども達の学習をサポートする寺子屋先生や、寺子屋の運営を担うコーディネーターの養成講座を実施している。
寺子屋先生養成講座は、退職をして今後は地域で何か活動を始めたいという方や、子どもの活動に関わってみたいけれど勉強を教えられるか不安があるという方、寺子屋事業に興味がある方など、20代から80代まで幅広い年代の受講があり、平成26年度から現在まで9回の講座を実施してきた中で、これまでに178名の寺子屋先生としての登録者があった。
③寺子屋情報交換会の開催
 既存の寺子屋同士の情報交換と交流を促進するため、情報交換会や、寺子屋コーディネーター、寺子屋先生の研修会なども開催している。

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

いじめや不登校、青少年による犯罪などの子どもを取り巻く問題、家庭における過干渉や虐待などの子育ての問題などとともに、少子化や核家族化、都市化、地域における地縁的なつながりの希薄化などが指摘され、地域や家庭における「教育力」の向上が求められている。さらには、こうした問題が、子ども達の学力や体力、自尊感情やコミュニケーション能力の低下、若者の引きこもり等の課題にも影響していると言われており、家庭や地域の教育力を高めるための様々な支援が求められている。
 本市における、全国学力・学習状況調査の結果では、学力については国語・算数とも全国値を上回っているものの、自己肯定感や将来への夢や希望といった点について課題があった。また、放課後や土日の勉強時間からは、学習塾に通わせたり家庭で熱心に勉強をさせたりしている場合と、そうでない家庭の二極化している状況があり、学校以外での学習習慣が身についていない子どもへの対応が必要となっていた。
 さらに、共働き家庭の増加に加えて、本市では9割以上が単独世帯・核家族世帯となっており、日常的に祖父母の年代と接する機会の少ない子どもや、放課後、家で、1人で過ごしている子ども達に、地域の方との交流の機会や、放課後の居場所を提供していく必要があると考えていた。
 寺子屋を開講する学校では、事前に保護者アンケートを実施し、保護者が何を期待しているのかを調査しているが、勉強のサポートを求める以上に、祖父母世代との交流、地域の人とのふれあいを望んでいる声が多くあった。さらに、学校だけではできないこと、家庭だけではできないことがたくさんあり、教育は学校や教師、或いは家庭だけに責任を持たせるのではなく、地域ぐるみで子ども達の育ちに関わっていく必要がある。
 一方、地域にはシニア世代を始めとした様々な知識や経験のある方、元教員や学生、子ども達や地域のために活動をしている方々がおり、地域による子どもの育ちを支える活動を支援し、地域の多様な大人と子ども達をつなぐことで、家庭学習の支援や子ども達のコミュニケーション能力、豊かな人間性の形成を図っていく仕組みづくりを進めることで、地域の教育力向上にもつなげていくことができると考え、平成26年度から本事業を開始した。

4. プロジェクトの達成目標

・地域ぐるみで子ども達の教育や活動をサポートする仕組みづくり
・シニア世代をはじめとする地域の様々な方の知識と経験を活かした、多世代で学ぶ生涯学習の拠点づくり
・子ども達に豊かな学びや体験の機会を提供することによる学ぶ意欲の向上や豊かな人間性の形成

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

同時期に、文部科学省において外部人材を活用して子ども達の土曜日等の教育活動を充実する補助メニューがスタートしたことで、新規事業立ち上げに向けての財源確保がしやすくなり、スムーズに本事業をスタートすることができた。

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

7. 上記規制をどう解決、回避したか

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

・文部科学省「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」補助金(平成26年~)
地域学校協働活動の中の「外部人材を活用した教育支援活動」への補助メニュー
指定都市については補助率1/3

9. 補助金に対する報告書のファイル

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

市、大学、民間企業、地元商店、小中学校、町内会・自治会、NPO、地域住民等

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

10項のとおり

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

川崎市教育委員会事務局生涯学習部生涯学習推進課が本事業を推進している。
当課では、学校施設開放事業や、大学との連携、地域教育会議といった学校・家庭・地域の連携を推進するための施策、各市民館(公民館施設)における社会教育振興事業を通じた地域づくり、退職教職員の会や市生涯学習財団における学校支援活動などの事業を所管しており、これまでの取組の中で培ったノウハウや、地域人材、地域団体、様々な組織とのパイプをフル活用して、本事業を進めている。
さらに、本事業に取り組んでから新たに企業や地元商店、町内会等との連携が進み、子ども達の学びや体験の内容が豊かになっている。
また、本事業を推進するために、学校教育を所管する部署とともに、「学校・家庭・地域の連携協力推進会議」(地域、退職教職員、PTA、学校、市民館、生涯学習財団などが構成員)を設置し、事業の評価・検証なども実施している。

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

本事業では、教育委員会から地域の団体に事業を委託して、学校施設を活用しながら、放課後、週1回の学習支援と、土曜日等に月1回の体験活動を実施している。また、子ども達の学習や体験を指導してくれる方(寺子屋先生)を地域から広く募って、多くの地域の方や保護者の参画を得ながら事業を実施している。
1.寺子屋の開講状況
 現在、市内で38か所の寺子屋が開講しており、地域や学校の実情に即した様々な形態の団体に委託をしながら、寺子屋ごとに特徴のある活動を展開している。
2.放課後の学習支援
 放課後、週1回実施している学習支援は事前登録制で、学校内の特別教室を会場に、地域の方、元教員、保護者、学生などの寺子屋先生が、子ども達の宿題や学習のサポートを行っている。多いところで100名を超える登録があるが、会場のキャパシティーや寺子屋先生の確保の問題から、今週は2年生、来週は3年生…というようにグループ分けをして実施せざるをえない寺子屋がほとんどである。
 対象学年については、学校と実施団体との話し合いにより、各寺子屋で決めている。
 また、複数学年の子どもが1つの問題を一緒にといてみたり、掛け算九九の練習をしたりなど、色々な工夫をしている寺子屋もあり、さらには、寺子屋先生達の特技を活かして、囲碁や折り紙、コマ回し、紙芝居の時間などをもっている寺子屋もある。
3.土曜日等の体験活動
月1回、土曜日等に実施している体験活動では、各寺子屋が自由な発想で様々な体験活動を実施している。地域の中で活かしたい趣味や特技を持った方を寺子屋先生としてお招きするもの、企業や大学、団体と連携したプログラムなど、多様な体験活動の機会を提供している。
 体験活動については、その都度参加者を募集しているが、非常に人気があり、たびたび抽選となってしまう状況である。また、親子参加のプログラムも積極的に行われ、親子のふれあい、保護者同士の交流、保護者世代と地域の方々との交流など、世代間交流の機会となっている。
4.寺子屋事業を推進する取組
①地域の寺子屋推進フォーラムの開催
 寺子屋事業について広く市民に周知し、「我々の地域でも寺子屋を立ち上げよう」という機運を高めるために、フォーラムを開催している。
 平成27年度から毎年1回開催しているフォーラムでは、各寺子屋からの実践報告、実際の寺子屋の体験、子どもの育ちに関わる団体の代表者や学識によるパネルディスカッション、寺子屋の体験活動に協力いただいている企業・団体と、各寺子屋とのマッチング、市内大学の学生と寺子屋関係者の交流などを行った。
②寺子屋先生養成講座、寺子屋コーディネーター養成講座の開催
 放課後の子ども達の学習をサポートする寺子屋先生や、寺子屋の運営を担うコーディネーターの養成講座を実施している。
寺子屋先生養成講座は、退職をして今後は地域で何か活動を始めたいという方や、子どもの活動に関わってみたいけれど勉強を教えられるか不安があるという方、寺子屋事業に興味がある方など、20代から80代まで幅広い年代の受講があり、平成26年度から現在まで9回の講座を実施してきた中で、これまでに178名の寺子屋先生としての登録者があった。
③寺子屋情報交換会の開催
 既存の寺子屋同士の情報交換と交流を促進するため、情報交換会や、寺子屋コーディネーター、寺子屋先生の研修会なども開催している。

14. スケジュール(行程表)

1.寺子屋開講状況
平成26年度 寺子屋事業開始
市内小中学校8か所で実施
平成27年度 市内小中学校17か所へ拡充
平成28年度 市内小中学校30か所へ拡充
平成29年度 市内小中学校38か所へ拡充
2.寺子屋開講までのプロセス
本事業は、地域のNPO団体等が主体となり、以下のプロセスを経て開講している。
①寺子屋の立ち上げを希望する方が市教育委員会へ相談
②仲間集め(一緒に運営してくれる人、寺子屋先生として協力してくれる人など)
③受託団体としての体制作り、実施する学校への打診
④学校を交えた、具体的な内容の相談(何曜日にやろうか?どの教室を使えるの?)
⑤実施する学校でのニーズ調査
⑥開講に向けてプログラムや案内づくり 等

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

平成26年度 6,660千円
平成27年度 19,511千円
平成28年度 34,914千円
平成29年度 56,753千円
平成30年度 61,696千円
※予算ベース

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)
18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

1.アンケート調査による保護者ニーズの把握
実施前アンケート調査結果により、学習塾のような学習内容よりも基礎基本の定着を目指すとともに、シニア世代及び地域の方との交流ができるような事業内容としている。
2.無理なく継続できる実施体制
基本的にはボランタリーな活動であるが、全く無償の活動ではなく、コーディネーターや寺子屋先生に交通費程度のボランティア謝礼を支払える予算や、紙や消耗品、携帯電話の予算などをつけること、学校施設を活用することなど、持ち出しなどの無理がなく、継続していくことができる仕組みとなっている。
さらに、無理のない運営が図られるよう、寺子屋同士の情報交換会などを行い、事業の内容や運営方法についてともに学びあう機会としている。
3.養成講座等を通じた人材育成
事業スタートからまだ4年であるが、将来的に、運営団体の中での世代交代の課題が出てくることを考え、寺子屋先生やコーディネーターの養成を継続して実施していくことで、新たな人材を投入している。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

 参加した子ども達の感想から、寺子屋が楽しいという気持ちや、勉強が楽しいという気持ちにつながっている様子が分かり、寺子屋の取組は、学力の基礎となる意欲や関心を向上させることに効果が認められる。
 さらに、親や教員以外の大人から褒められたり、認められる経験は、子ども達の自尊感情を育み、地域の大人や異年齢の子どもとの交流は、人と関わる力やコミュニケーション能力の向上にもつながっている。
 さらに、まちで子ども達と地域の大人が挨拶しあえる関係が生まれていることが分かる。本市では平成27年に中学生が河川敷で殺害されるという痛ましい事件があったが、子どもを取り巻く事件や事故が多い現代社会において、小学生のうちから地域の大人とつながりができることで、地域の中で子ども達を見守る目が増え、ひいては子ども達が安心して育つことができる環境づくりにつながっていると考えられる。

20. プロジェクトによる地域の変化

19項のとおり

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

本市には小学校113校があり、保護者からのニーズも高い事業であるため、将来的には全校で寺子屋が展開できるように、事業を推進していきたい。そのためには、運営を担う人材や団体の発掘・養成と、多くの人に寺子屋の取組を知っていただくためのさらなるPR活動が必要だと考えている。
さらに、既存の寺子屋においても、参加者が多すぎて十分な学習支援の機会を与えられていないという課題があることから、引き続き寺子屋先生の確保に努め、より多くの地域の方に子ども達に関わっていただきながら、子ども達の学びの機会を充実させていきたい。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

21項のとおり

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

他地域からの寺子屋への視察や、寺子屋先生・コーディネーターの養成講座に他地域の方が受講されるケースが増えており、ご自身の地域での活動の参考にしていただいている。
国内の他地域においても実現可能な仕組みであり、市民と行政が協働して地域の教育力を向上させていく一つの方策として有用なものである。

24. その他関連情報、資料