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日本の農業は、海外産農作物の輸入増加、経営不安定、就農者の高齢化と後継者不足、有害鳥獣被害などにより危機に瀕している。当社は日本の荒茶生産量の約4分の1以上を取り扱っているが、茶園についても減少傾向にあり、高品質原料の供給困難化や耕作放棄地の増加という問題にとどまらず、地域雇用の減少、地域活力の低下にもつながっている。
このような状況のもと、①大規模茶園造成と耕作放棄地の活用、②高品質茶葉生産の安定化、③農業経営の安定化、④生産地における雇用創出などの課題の解決が必要であると思料されたことから本事業を開始した。
茶産地育成事業(特に新産地事業)は、日本の農業の課題に対する解決の一助となることを目指し、①耕作放棄地などの活用による食料自給率向上、②安定した農業経営、③雇用創出など、地域活性化への寄与を図るものである。
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①JA都城茶里(平成18年度 農業・食品産業競争力強化支援事業)
②JA都城茶里(平成20年度 強い農業づくり交付金事業)
③山口農産(平成20年度 強い農業づくり交付金事業(繰越))
④カヤノ農産(平成23年度 強い農業づくり交付金事業(繰越))
⑤メルヘン農園(平成28年度 産地パワーアップ事業)
⑥豊後大分有機茶生産組合(平成28年度 産地パワーアップ事業)
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地元の市町村、事業者、現地に設立した茶農家(地元法人)等
前述10項のとおり
①農業組合との連携(農事組合法人カヤノ農産)
地元農業組合にとって、本事業は契約取引のため生産計画が立てやすく、経営の安定につながっている。また、教育システムもしっかりしており、後継者となる新人を毎年採用することができる。
②行政との連携(大分県)
県では、農業の担い手育成対策として、企業の農業参入を積極的に進めており、伊藤園の茶生産技術の助言や全量買い取りの制度などにより生産者との信頼関係が築かれ、農業振興と雇用創出に役立っている。
当社は、高品質な原料茶葉の安定調達を事業目的とし、社員が茶産地の方々とともに茶葉の品質向上に取り組む「契約栽培茶園」に加えて、農業者や行政等と協働して耕作放棄地などを活用して畑づくりから茶葉を育成する「新産地事業」などの「茶産地育成事業」を展開している。
①産官学連携・6次産業化による革新的取り組み
全国におよぶ契約栽培に加え、2001年から、「新産地事業」という全く新たな手法として、(1)地元の自治体、組合、生産者と協力し、(2)耕作放棄地などを活用した茶産地を育成、(3)機械化やIT化を含めた生産技術の提供と、(4)収穫茶葉の「全量買い取り方式」という革新的な方式を導入して新産地を育成し茶葉の品質向上やコスト低減を進めてきた。
②「Win-Win-Win関係」による事業の仕組みづくり
当社は、従来の個々の茶農家との契約栽培に次いで、新たに「新産地事業」として、生産者、地域社会、当社の間の「Win-Win-Win関係」を目指した大規模な茶産地の育成への取り組みを開始した。地域社会は、耕作放棄地減少、雇用創出等、生産者は、契約取引による安定的な農業経営、後継者の事業継承等、当社は、茶葉原料の安定調達と品質向上、生産の低コスト化による原価低減などのメリットを、それぞれ享受している。
③固定観念や既成概念にとらわれずに新たな社会価値を創造
「高品質な国産緑茶原料の安定調達」という企業の要求のみならず、「生産農家の育成」、「遊休農地の積極的な活用」という社会的観点から、他に先駆けて、「新産地事業」を開始した。
土地利用型の永年作物である茶が、遊休農地などを長期間活用できる作物であることに着目し、茶農家のみならず、建設業などの異業種の参入による新規農業生産法人の設立を促し、生産の効率化を推進した。
新産地事業を推進するにあたり、行政との連携を重視して、関係する県、市等と「茶産地育成協定」を締結し、生産者とあわせて、より効率的かつ長続きする仕組みを構築した。
④生産の効率化と雇用の安定
本事業の特徴の一つに、生産の効率化と広い年齢層の雇用による安定した農業経営の実現がある。「新産地事業」では、栽培管理の効率化により、茶園10アール当たりの年間作業時間は20~60時間で、他地域の1/2から2/3まで短縮。新卒者の雇用やシルバー人材の活用により、就業者の平均年齢は、農業就業者の平均より約20歳若い約46歳(ただし、アルバイト、シルバーを除く)となっている。(ちなみに、一般的な茶園10アール当たりの年間作業時間は、東海123時間、九州86時間、農業就業者の平均年齢は65.8歳である(2012年、農林水産省)。)
現在、4県6地区で7法人が立ち上がっており、各法人の雇用状況は、平均20~30名(うち約半数は契約社員・パート)である。また、生産者の事業成績例として、「新産地事業」を行っている都城地区のJA都城は、当社との契約取引開始当初(2006年)の茶の販売高は2.7億円だったが、2012年には約3倍の8.0億円と、本事業の効果もあり大きく伸長した。
平成13年 新産地事業開始
平成29年 九州4県6地区にて実施しており、佐賀県でも展開開始。
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①耕作放棄地の活用や、機械化・IT化を含めた生産技術の提供、さらには収穫茶葉の「全量買い取り方式」という革新的な方式を導入することにより、茶葉の品質向上やコスト低減が実現されていること
②生産の効率化により幅広い年齢層の雇用による安定した農業経営が実現されていること
③茶農家に対するきめ細やかな栽培指導や情報提供による環境保全型農業を推進していること
④地域で排出される食品残さや畜産廃棄物を活用した循環型農業を推進していること
⑤調達、製造・物流、商品企画・開発、営業・販売までの一連の流れとそれを支えるバリューチェーンが構築されていること
⑥SDGsの目標に合致した、持続可能な農業や持続可能な生産と消費が実現され、社会的価値が創造されていること
⑦地元の市町村、事業者、現地に設立した茶農家(地元法人)などとの協力体制が構築されていること
①新産地事業の推進
2017年4月現在、当社の国内の茶園面積は1,226ha(契約栽培850ha、新産地事業376ha)、茶葉生産量は4,371トン(t)である。
新産地事業としては、宮崎県都城地区(150ha規模)、大分県臼井・杵築・宇佐地区(140ha規模)、鹿児島県曽於地区(30ha規模)、長崎県西海地区(50ha規模)の九州4県6地区において、緑茶飲料「お~いお茶」の高品質原料茶葉を育てる大規模茶園を造成している。
②新産地事業/茶産地育成事業(契約農家を含む)の生産量および茶面積の推移
当社の緑茶飲料市場シェア(金額ベース)は2016年度で約33%であり、日本の荒茶生産量の約4分の1以上を取り扱っている。そのうち茶産地育成事業による当社の茶葉の取扱量に占める割合は2013年で13.9%である。今後、茶産地育成事業の規模が目標の2,000haに達すれば、緑茶飲料市場シェアのさらなる拡大と、本事業の占める割合が、当社の茶葉使用の30%程度、国内の7%程度までの増大が期待でき、農業経営の安定化や雇用拡大等、地域活性化や農業振興に貢献できる。
③「Win-Win-Win関係」を構築
生産者:当社との契約取引により、安定的な農業経営が実現し、肥料・農薬の適正な使用など環境保全型農業の推進にもつながっている。さらに、後継者への事業継承や、地元での農業生産法人の設立などによる地域の雇用創出により、地域活性化にも貢献している。
地域社会:耕作放棄地の減少や、農業の振興、食糧自給率の向上、雇用創出による地域活性化、技術向上による効率的かつ環境保全型農業の実現、有害鳥獣被害の減少などのメリットがある。
当社:茶葉原料の安定調達、品質向上の実現、トレーサビリティの確保と、一貫した品質管理体制の実現、生産の低コスト化による原価低減などのメリットがある。
前述19項のとおり
他地域への横展開の検討を継続して行うとともに、既に推進中の産地においてもより一層の品質向上と生産量増加を図り、農村の活性化や遊休農地の有効活用を進めていく。
また、各産地で順次J-GAPを取得しており、適正な農業の推進と安心安全な原料調達を行うことで、持続可能な農業としての基盤を更に強化していく。
前述21項のとおり
「新産地事業」は活用しうる有休農地と茶生産への適性を備えた地域であれば新たな産地として取り組みを開始する可能性を有している。
現在は九州を中心に展開しているが、他地域も含め横展開の可能性は常に検討を続けており、本年度からは佐賀県でも新たな産地を立ち上げ、生産を開始している。
また、当社は、「世界のティーカンパニーへ。」を長期ビジョンとして掲げており、そのために将来の緑茶原料の需要増を考えて良質な茶葉の安定した確保が必要と考え、日本とは季節が逆で、風土が似ているオーストラリアのビクトリア州に、「ITO EN AUSTRALIA PTY. LIMITED」を1994年に設立し、茶産地育成事業(新産地事業)を立ち上げた。
日本と同様に、州政府と茶生産家、「ITOEN AUSTRALIA PTY. LIMITED」が協力して茶葉栽培の技術的な工夫を施し、社員が現地を定期的に訪問することで信頼関係を築きながら取り組んでいる。
ここで生産された茶葉は、オーストラリアやアメリカ向けの製品の原料や、伊藤園のトクホ製品の原料として使用されている。
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