1. プロジェクト名
土佐山百年構想 ~中山間地域の未来は土佐の山間より~ (高知県高知市)

2. 概要

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3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

・全国の中山間地域と同様に、土佐山地域でも、近年若年者の減少、高齢化の進展が深刻であり、現状のままでは、今後更に状況が悪化し、将来的には地域の存続も危惧される状況が予想される事態となっていた。
・そのため、土佐山地域が人口減少を克服し、持続可能な地域として存続していくために、将来の地域のあるべき姿について地域住民、行政当局など関係者間で共有しつつ、地域の存続に向け、地域の資源や歴史・文化等をフルに活用した対策を、速やかに実施していくことが必要であった。

4. プロジェクトの達成目標

・本取り組みでは、地域の強みを活かした成功事例を創出することで、単なる土佐山地域の活性化にとどまることなく、同様の危機に直面する中山間地域において、人口減少に歯止めをかけ、持続可能な地域づくりのモデルとなることを目指している。

5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

国による自治体の地方創生の取組を支援するための交付金制度(地方創生先行型交付金、地方創生加速化交付金)が創設された。

6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

(未入力)

7. 上記規制をどう解決、回避したか

(未入力)

8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

・地方創生先行型交付金 ・地方創生加速化交付金

9. 補助金に対する報告書のファイル

(未入力)

10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

市、地域住民、地域コミュニティ団体、NPO、有識者等

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

地元区長会、土佐山夢づくりの会、土佐山ユズ生産組合、一般財団法人 夢産地とさやま開発公社、特定非営利活動法人 土佐山アカデミー ほか

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

・土佐山百年構想は、核となる3つのプロジェクトにそれぞれ主体となる組織が存在し、有機的に連携し取組を進めている。
・このほか、地域住民や特定非営利活動法人等がプロジェクトに積極的に関わり、それぞれの取組を強化する役割を担っている。具体的には、土佐山学舎で実施されている「土佐山学」については、地域の住民や特定非営利活動法人土佐山アカデミー等のスタッフが講師となり、自然豊かな土佐山地域全体を教材とした学習を展開することで、児童生徒と地域とのコミュニケーションの促進につながっている。
・また、土佐山学舎は、「コミュニティ・スクール」として、保護者や地域住民、有識者等から構成されている学校運営協議会を設置しており、学校づくりを地域住民等との協働により進めている。
・他にも、地域の自治活動を担う区長会や土佐山夢づくりの会(自分たちの住む地域を自分たちの手で良くするための活動を行うために平成22年に組織された地域コミュニティ団体)等、地域活動に取り組む数多くの団体が、各プロジェクトの運営主体に積極的に協力しながら、地域が一体となって土佐山百年構想を推進し、持続可能な地域の実現に取り組んでいる。
・この土佐山夢づくりの会を中心に、旧土佐山村の村立記念日である4月29日を「とさやまの日」として定めて、土佐山百年構想にかかるそれぞれの活動発表や地域内外の人との交流の場となるイベントを開催し、連携の強化を図っている。

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

・「土佐山百年構想」は、人口減少に伴い中山間地域の持つ多面的機能の衰退等が危惧される中で、土佐山地域をモデルに、3つのプロジェクトを柱とする取組を地域住民及び各分野の関係者が有機的に連携して進めることにより、中山間地域の人口減少に歯止めをかけ、100年先も持続可能な地域づくりモデルとなることを目指し、高知市が平成23年3月に提案したものである。
【「土佐山百年構想」・3大プロジェクト】
①「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」
・旧土佐山村時代からの小学校と中学校を、平成27年4月に小中一貫教育校「土佐山学舎」として統合整備、平成28年4月からは、義務教育9年間を一つの学校として行う、義務教育学校に移行。現在、特認校制度※の活用により、市内全域から児童生徒を募集しており、地域内の子ども達だけでなく、市街地等からもスクールバスで児童生徒が通学している。
・「土佐山学舎」の特徴的な取組として、土佐山地域の住民等が講師を担当し、市街地では触れることの少ない自然の仕組みや地域の暮らし等について、直接地域の住民と触れ合う中で学習する「土佐山学」の授業が挙げられる。
・この授業は、地域内の人との交流や体験によって得られる気づき・発見・出会い・探究心を基に、児童生徒が主体的に物事を考え、社会に出る際に自分で判断し、行動・表現する力を引き出すための学習を行っている。この授業の一環として、最上級生では、地元の名所や特産品のPRを通じた地域活性化を図るため、東京証券取引所が進めている起業体験プログラムを活用し、グッズ販売のために2つの模擬株式会社を設立した。
・また、これに加えて、国際社会でグローバルに活躍できる人材を輩出するため、9年間の義務教育の課程を柔軟に運用した英語の一貫教育を行う等、土佐山地域の資源を活用しながら、特色と魅力ある教育活動を実践している。
・この土佐山学舎で学んだ子ども達が、将来的には、高校や大学進学で一度地域外に出た後、多くの経験を積んでいずれ地域に帰ってくる流れをつくり、地域振興や産業振興等の様々な分野で活躍し、新たな地域の担い手になっていく好循環の仕組みの確立を目指している。
・また、このような「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」の特色ある一連の取組が、市内外の若い世代の関心を呼んでおり、地域外からの子育て世代の土佐山地域への移住につながるなど、土佐山百年構想の推進を加速化する原動力となりつつある。
②「まるごと有機プロジェクト」
・本プロジェクトの中心的団体である一般財団法人夢産地とさやま開発公社は、旧村時代から高知市民の生活水を供給する清流・鏡川の源流域において、環境に配慮した資源循環型の有機農業の普及・促進活動を行うとともに、中山間地域のおける農業の特性を活かした、少量多品種の安心・安全な農産物を県内外へ販売し、生産者の所得向上を目指してきた。
・さらには、土佐山百年構想をきっかけに、農産物の付加価値を高めるために、地域内で生産された農産物をジンジャーエールや各種スイーツ等に加工し、製造・販売する6次産業化への取組も本格的に開始した。
・現在では、地域内に4店舗、高知市の中心市街地に1店舗の固定店舗を出店し、販売拠点としている。また、毎週日曜日には高知市の観光スポットでもある日曜市にも出店している。あわせて、毎週土日に東京都心部で開催されている青山ファーマーズマーケットにも出店しており、県内外において広く特産品の販売と地域の情報を発信し交流を深めることで、地域内の交流人口の増加につなげている。
・これらの取組により、有機栽培を取組の中心に据え、農地の適正管理を行う中で、農業者の所得向上と耕作放棄地の発生抑止を実現することで、周辺の森林や自然環境が適切に守られ、生活水の確保や河川流域の土壌環境の保全が図られる等、経済発展と自然環境の保全という、相反する目的を上手に両立させた独自性の高い取組が展開されている。
③「交流・定住人口拡大プロジェクト」
・本プロジェクトの中心的団体である特定非営利活動法人土佐山アカデミーは、土佐山地域内の産業振興や地域振興の担い手を育成していくことや、土佐山地域を中山間地域振興のモデルケースとして情報発信していくことなどを目的に、平成23年度に設立(平成25年度に法人化)。これまでに、交流・定住人口の拡大に向けた様々な研修・交流プログラムを実施してきた。
・中でも、移住者との交流プログラムである「土佐山夜学会」は、土佐山地域への移住者や、移住希望者を対象に、地域の人・歴史・文化を学びながら人的ネットワークづくりを行うことで、土佐山での生活をより楽しく豊かにし、さらなる移住拡大につなげていくことを目的に、地域内だけでなく首都圏でも開催している。
・また、土佐山地域の暮らしを支える農業における人手不足の解消をテーマとした「援農プログラム」を実施するなど、地域課題を資源とした「土佐山=学びの場」というコンセプトで、担い手育成につながる新たな交流事業も実施している。
・この他、これらの「交流・定住人口拡大プロジェクト」の推進を補完する観点から、地域内での新たな産業・雇用の創出につながる事業者を呼び込むために、平成28年度には、土佐山地域の中心部に位置する土佐山庁舎(旧村役場)の空きスペースを有効活用し、既存執務室を改修して2区画のシェアオフィスを整備した。

14. スケジュール(行程表)

①「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」
平成23年 基本構想策定
平成27年 土佐山学舎整備完了・開校
②「まるごと有機プロジェクト」
平成23年 農業の6次産業化に資する取組の本格開始
平成29年 地域内に4店舗、高知市の中心市街地に1店舗の固定店舗を出店するなど、県内外において広く特産品の販売と地域の情報を発信
③「交流・定住人口拡大プロジェクト」
平成23年 特定非営利活動法人土佐山アカデミー設立
平成25年 特定非営利活動法人土佐山アカデミー法人化
平成28年 土佐山地域の中心部に位置する土佐山庁舎(旧村役場)の空きスペースを有効活用し、既存執務室を改修して2区画のシェアオフィスを整備

15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

「まるごと有機プロジェクト」…26、794千円
・(一財)夢産地とさやま開発公社が実施する有機農業等の実証栽培・普及活動、高齢農家を支える販売支援等、公益事業に対する支援(20、000千円)
・資源循環型農業の推進に向けた土づくりセンターの運営(6、794千円)
「交流・定住人口拡大プロジェクト」…11、000千円
・NPO法人 土佐山アカデミーが実施する地域資源を活用した講座・イベントの開催等、中山間地域の交流人口拡大に向けた取組みに対する支援(11、000千円)

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

経営コンサルタント、フードプロデューサー

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)
18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

①プロジェクト相互の有機的連携
土佐山百年構想の取組は、「まるごと有機プロジェクト」による地域内の雇用の創出、地域の魅力向上⇒「交流・定住人口拡大プロジェクト」による交流人口の拡大⇒「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」による将来の地域の担い手の育成⇒「まるごと有機プロジェクト」により新しい雇用の創出、地域の魅力づくり・・・というように、それぞれの取組が有機的に連携するだけでなく、取組の成果がその他のプロジェクトに還流していく仕組み(土佐山学舎による魅力ある教育の実践が移住者を呼び込む等)となっており、この一連の仕組みがその他のプロジェクトの推進力にもつながり、取組全体を持続可能なものにしている。
②各運営主体の財政的自立の実現
「まるごと有機プロジェクト」の取組主体である夢産地とさやま開発公社は、平成25年に一般財団法人に移行し、6次産業化などの収益事業を拡大することで財政的基盤の安定化を目指している。さらに、「交流・定住人口拡大プロジェクト」を担う土佐山アカデミーは、土佐山地域の自然と調和した暮らしと、地域課題を資源とした「土佐山=学びの場」に人が巡る仕組みを構築し、賛同会員を増やすことで財政基盤の安定化を目指すなど、それぞれのプロジェクトの運営主体も財政的に自立した形の運営体制づくりを進めている。

19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

①児童生徒数の大幅増
「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」において、特認校制度の活用及びスクールバスの運行により、市街地等に住んでいる校区外からの児童生徒を多く受け入れた結果、土佐山学舎開校前には56名であった児童生徒数が、平成27年度(開校初年度)は98名(うち校区外通学児童生徒40名)、平成28年度は129名(同71名)、本年度、平成29年度は141名(同87名)となっており、土佐山学舎開校前と比べ、約3倍に増えている。こうした目に見える形の成果が、地域の高齢者をはじめとする地域住民の百年構想への積極的な関わりを引き出すインセンティブとしても作用している。
②新規就農者の増加
「まるごと有機プロジェクト」においては、土佐山開発公社が有機・無農薬農業の実践の場として、新規就農者等の研修受け入れを行っており、平成28年度までに11人の受け入れを行い、そのうち6人が地域内で就農している。こういった取組を通じて生まれた、土佐山産の有機JAS認証ショウガを原材料とした土佐山ジンジャーエールも、各メディアや雑誌で取り上げられ、土佐山の知名度アップに貢献するとともに、農産物の販売額の増加にもつながっている。
③6次産業化推進による地域産業振興
また、産業振興、雇用機会の創出のために、平成28年度までに2期にわたる整備計画でジンジャーエール、四方竹、スイーツの加工場を整備。特に、全国的にも珍しい秋が旬の四方竹は、土佐山地域が一大生産地となっており、公社が加工場の整備及び加工作業の中心を担うことにより、生産者に将来への安心感を与えると同時に、作業の効率化による原材料の買い取り単価の増額も実現する等、地域の産業振興に大きく寄与した。
④土佐山地域への移住者の増加と住民の若返り
「交流・定住人口拡大プロジェクト」は、特定非営利活動法人土佐山アカデミーが中心となって、100年先も持続可能な地域をめざして、新たな出会いやアイデアを生み出す学びの場を創出し、地域の資源(人・自然・文化)を活かした研修プログラムの開発・運営や、土佐山地域の空き家を活用した移住・企業支援などの事業を実施。平成24年度からの5年間で約9、500人の都市住民との交流と延べ43名の移住者を呼び込んでいる。
・また、定住人口の更なる拡大を目指し、平成26年度から27年度にかけて土佐山地域において高知市が「地域活性化住宅整備事業」を実施。これまでに10戸の子育て世代向けの住宅を整備し、現在では10世帯35人が県外及び地域外等から入居するとともに、そのうち0歳から14歳までの子どもが19人居住し土佐山学舎へ通学するなどしている。
この結果、地域人口(977人)に占める子どもの割合は、整備を開始した平成26年度からの3年間で8.6%から10.1%(住民基本台帳による)になっており、これらの取組を実施することにより、地域の人口減少と高齢化の問題に一定の歯止めをかけることができている。

20. プロジェクトによる地域の変化

前述19項のとおり

21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

土佐山百年構想が開始され、平成29年で8年目を迎える。平成27年の土佐山学舎の開校を皮切りに取組が本格化したところであり、今後、取組の具体的な成果が目に見える形で顕在化してくると考えているが、この百年構想がめざす一番の目的は、「百年先も持続可能な地域をつくり、次の世代へ引き継いでいくこと」であり、そのためには地域の未来を担う「人財」を育てていくことが求められる。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

・「社学一体・小中一貫教育プロジェクト」では、土佐山学をはじめとする特色ある教育課程を通じ、地域の人材が関わり、「教え教わる」ことを通じて主体的に物事を考え、判断し、行動し、表現できる子どもを育てている。
・また、この百年構想を通じて地域外から多種多様な価値観を持っている人材が地域に移住し、地域内に根ざして住み続けている人との融合によるシナジー効果が生まれ、新たな取組も動き始めようとしている。
・今後は、3本柱のプロジェクトを着実に推進・拡大するだけでなく、これらの取組同士をつなぎ、一層の連携拡充を図るため、「人財」の育成に着目した取組を展開していくことが重要であると考えている。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

・土佐山百年構想を提唱した本来の目的は、地域の資源を活用した持続可能な地域づくりモデルを構築し、過疎化による地域の衰退という同様の課題を有する他の中山間地域に対し、その成果をフィードバックすることをめざしていることから、今後は、目に見える具体的な成果を検証しつつ、積極的な情報発信を行っていく。
・「まるごと有機プロジェクト」では、ジンジャーエールなどの加工品を海外でのイベントで販売するなどの取組も試行している。また、「まるごと有機プロジェクト」と「交流・定住人口拡大プロジェクト」が連携し、土佐山のショウガをカンボジアで栽培するために現地で指導する等、海外研修団体との交流など、幅広い事業展開を見せている。

24. その他関連情報、資料

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