・「やぶくる」とは、地域住民が登録ドライバーとなり、自家用車で市民や観光客の足となる、国家戦略特区を活用した新たな自家用有償旅客等運送事業。
・養父市には、鉄道、バス、タクシーなど複数の公共交通機関があるが、広い地域に集落が点在する地理的条件から、市内全域で細かなニーズに十分対応することは難しいのが現状。
・特に利用者を個別輸送するタクシーは、八鹿地域、養父地域にある拠点から、大屋地域、関宮地域に迎車の必要があり、短距離輸送では採算が合わず、両地域では、タクシーによる短距離輸送が実質的に困難な状況。
・この課題を解決するために生まれたのが「やぶくる」。実施主体はNPO法人養父市マイカー運送ネットワーク。
・市民及び観光客を対象とした持続可能で安全な個別輸送(短距離輸送)の仕組みを構築するため、タクシー事業者やバス事業者、地域自治組織、観光関連団体、行政等が官民一体となって取り組んだもの。
・地域の特性に応じ、最適で利用しやすい移動手段を創出し、高齢者等市民の生活支援とあわせ、観光振興にも繋げることを目的とする。
・やぶくる登録ドライバーにはアクティブシニア、子育て中のママなど幅広い世代が参加。地域社会へ参加する機会を創造しつつ所得の向上を図るという、隙間時間を活用した新しい地域貢献のカタチである。
(1)タクシーによる短距離輸送が実質的に困難
・養父市には、鉄道、バス、タクシーなど複数の公共交通機関があるが、広い市域に集落が点在する地理的条件から、市内全域で細かなニーズに十分対応することは難しいのが現状。
特に、利用者を個別輸送するタクシー事業者は市の東部である八鹿地域、養父地域に集中し、市の西部に位置する大屋地域、関宮地域に迎車しての短距離輸送では採算が合わず、両地域では、タクシーによる短距離輸送が実質的に困難である。
(2)観光行動への対応の遅れ
・養父市は年間の観光人口が約150万人で一般的なローカル地域と比べると非常に多いものの、その大半が冬のスキーシーズンであるウィンタースポーツと学校の研修や合宿などに依存。
・一部地域にその観光資源から生み出される利益が依存してしまい、域内全体に利益を享受できることが困難、日本のローカルの課題そのものでもある。
・二次交通の便が悪いため、自家用車を使わない移動には向いていない。
・路線バスについても市の中心部を発着点とする路線が主であるため、点在する観光施設の移動には向いていないのが現状。
(施策の方向)
・課題対応として、養父市では、市内の事業者と連携し観光客の市内周遊を促そうとH27年度から「定額観光タクシー」を開始。H28年度に「やぶくる」の運行を開始。
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国家戦略特区(道路運送法の特例)を活用 ※現行の自家用有償旅客運送制度を拡充
道路運送法
・運送対象 地域住民のほか観光客も運送することが可能になった
・実施手続 関係者が協議した上で、区域会議が運送区域等を迅速に決定した
H29年度 養父市新たな自家用有償旅客運送事業補助金
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・タクシーやバスなどの旅客運送事業者、観光関連団体、地域自治組織などでつくる、特定非営利活動法人養父市マイカー運送ネットワークが事業の実施主体
・ドライバーの安全運行対策・運行管理、経営ノウハウはタクシー事業者が提供、観光客への新たな観光ルートの提案、市内観光施設の相互連携は観光関連団体が実施、
・市民ニーズの反映、ドライバーの確保への協力は住民自治組織が実行し、それぞれが持てる力を十分に発揮できるような体制・仕組となっている。
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・「やぶくる」は、市の西部に位置する大屋地域、関宮地域を運行範囲として事業を実施することにより、タクシー事業者による短距離輸送が実質的に困難な地域においての細かなニーズに十分対応できる仕組み。
(1)実施主体 特定非営利活動法人養父市マイカー運送ネットワーク
※一般旅客自動車運送事業者、観光関連団体、地域自治組織、賛同する者で構成
(2)役割等
・ドライバーの安全運行対策・運行管理、経営ノウハウの提供 ⇒タクシー事業者
・観光客への新たな観光ルートの提案、市内観光施設の相互連携 ⇒観光関連団体等
・市民ニーズの反映、ドライバーの確保への協力 ⇒地域自治組織
・市も役員として参画(事業開始時の支援)
(3)事業スキーム
・利用者が市内タクシー事業者のいずれかに連絡することで「やぶくる」を利用できる仕組みを構築
①利用者が市内タクシー事業者に電話
②タクシー事業者が登録ドライバーに連絡し車両を手配
③配車指示を受けた登録ドライバーがお客様を運送
④お客様が料金表に基づいた料金を支払い
⑤ドライバーが料金をNPO事務局へ入金
⑥NPO事務局がドライバー、タクシー事業者へ、手数料及び報酬の支払い
(4)市民・観光客の利用シーン
1)市民向けの交通手段として
◇主な対象者:自動車を運転していない(できない)市民
◇想定される利用目的:買い物、医療機関(受診、薬受取り)、行政・金融等の手続き
◇メリット
・短時間で複数の用事を済ますことが可能
・路線バスだけでなく、体調、天候、荷物等状況に応じた交通手段の選択肢が増
・ドア・ツー・ドアによる利便性向上
2)観光客向けの交通手段として
◇主な対象者:公共交通機関で来訪する観光客
◇想定される利用目的:域内観光スポット間の移動(宿泊施設含む)
◇メリット
・公共交通機関で来訪する観光客の周遊効率の向上
・観光スポット間の相互連携の促進
・外国人観光客の受け入れ体制の強化
(5)実施区域
自家用有償観光旅客等運送の実施区域は、一般旅客自動車運送事業者(タクシー事業者、バス事業者)による対応が困難な区域を設定。
・事業実施までの準備、検討に係る経費や事業開始後、事業運営に係る3年間の経費は補助金の交付を予定。
・事業経営については、利用料による収入によって運営できる計画、NPO法人養父市マイカー運送ネットワークに関わる複数のステークホルダーが連携し、安定した利用件数の確保を目指す。
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(1)タクシー事業者をはじめとした、地域住民の熱い思い
・養父市内のタクシー事業者は、高齢者等市民の生活支援のために、「移動販売」や「福祉タクシー(ヘルパー等有資格者によるタクシー事業)」などニーズを捉えた事業を展開してきた実績あり。
・事業者が、展開していない地域でも、「やぶくる」通じて、少しでも地域貢献したい、との意思が仕組み構築に大きく影響している。
・地域住民である登録ドライバーも同じ思いで手を挙げている。
(2)利用者にとって安心できる仕組み
・NPO法人養父市マイカー運送ネットワークが一番大切にしたことは利用者の安全確保である。タクシー事業者のノウハウを活かし、登録ドライバーの安全運行対策・運行管理を担うこととし、「やぶくる」では利用の受付窓口をタクシー事業者に置き、運行前の遠隔でのアルコールチェックや健康状態の確認等の点呼を行い。利用者が安心して利用できる仕組みを構築した。
(3)関係者全員のメリット
・タクシーによる短距離輸送が実質的に困難となっている地域を対象に、利用者(移動手段の充実)・登録ドライバー(収入)・タクシー事業者(サービスの拡大)の3者がWINとなる。
・地域住民がドライバーとして活躍。利用者とドライバーが顔見知りの安心できる関係となること、ドライバーが地域の観光資源のガイドでもある。
・「やぶくる」は、子育て中のママやアクティブシニアが地域貢献しながら収入を得ることができるシステムである。
・16人の登録ドライバーは30代から70代までの男性、女性で、地域のためにと手を挙げた。いずれもドライバーとは別にそれぞれの仕事や活動を行っており、隙間時間を活用した新しい地域貢献のカタチである。
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・「やぶくる」の登録ドライバーは地域住民であるという利点を活かし、現在注目されていない観光地をドライバーや地域自治組織の協力のもと発掘し、タクシーや路線バスとの組み合わせにより新たな観光ルートを提示していきたいと取り組んでいる。
・最終的には「やぶくる」のドライバー自身が観光ガイドを手掛けるなど、「やぶくる」ならではのサービス実現を目指す。
・人口減少・過疎化が進む地域における公共交通の問題は地域によって異なるが、養父市のように広範囲にわたって集落が点在する地理的条件で地域にとって、路線バスの便数や路線数が減少している等の課題は多くの自治体が抱えている問題である。
・「たとえ過疎化が進むとしても、「やぶくる」があれば安心して暮らすことができる」と言ってもらえるような持続的な交通手段として地域一丸となって創り上げていきたい。
・「やぶくる」のような地域住民の支え合いで成り立つ交通は、地域住民をはじめとした多くの利用者に愛される交通手段となり得る。全国で同様の課題を抱える地域へと展開していくことを期待している。
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