1. プロジェクト名
“医住”から“移住”へ~地域総出で支える安心医療のまちづくり・10 年の軌跡 (福井県高浜町)

2. 概要

人口減少社会である。問題は地方において深刻であることは言うまでもなく、効果的な移住促進対策が必要である。そのために必要不可欠なものの1つが医療機能の確保であるが、地方では医療機能・医療者の確保もまた、難しい局面にある。本取り組みは、医療関係者の移住=“医住”を促すための方略を地域総出で実施し、安心医療のまちづくりを実現することにより、一般住民の移住を促進させること、すなわち「健康で安心して加齢できる社会」を目指したものである。

(1)“医住”を促進させる魅力的なプログラム
1) 全国初の市区町村単独医学部寄附講座「地域プライマリケア講座」の設置
2) 医療も地域も体験する「夏だ!海と地域医療体験ツアー
3) 地域とのかかわりを学ぶ「コミュニティケアセンター」

(2)“医住”を定着させる地域総出のサポート
1) 地域医療を守り育てる住民活動「たかはま地域医療サポーターの会」
2) 第2の故郷をつくる「たかはま海の親プロジェクト」
3) 健康に詳しい住民が医療を支える「健康マイスター養成塾」

(3)“医住”の促進と定着、複合的な取り組み
1) 地域協働で進める健康市井会議「け
2) 地域協働で進めるまちづくりの実践「健康のまちづくりアカデミー」

3. プロジェクトを企画した理由・課題(状況)

・福井県高浜町では、2001 年に13 名いた町内の医師は、全国的な地方を中心とした医師不足の波にのまれ、2008 年には5 名にまで減少した。また、他の医療・介護関係職についても、慢性的な人材不足が続き、脱却の見込みのない状況であった。
・1990 年以降高浜町の人口は減少に転じ、2040 年には現在の人口の7 割程度の7,000 人ほどにまでになる予測が立っている。
・医療人材不足・人口減少の課題に対して、可及的に不足・現象を食い止めつつ、町に住み続けてくださる現住民がいつまでも健康で安心して住み続けられる町を目指すべく、高浜町と福井大学との画期的な連携が実現し、それに呼応した町内の医療関係者や住民とともに、さまざまな取り組みが展開された。

4. プロジェクトの達成目標

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5. プロジェクト実行に関連した政策(有れば)

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6. プロジェクト実行に関連した規制(有れば)

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7. 上記規制をどう解決、回避したか

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8. プロジェクトに対する国、県の補助金・支援政策(具体的な補助金事業名、年度、金額)

2016 年度地方創生加速化交付金
『「移住」と「医住」を目指した全国初のコミュニティケア特化部門の創設とコミュニティケア専門要員の育成事業』(高浜町)

9. 補助金に対する報告書のファイル

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10. プロジェクトに投入、活用した地域資源、地域人材

医療関係者、大学(福井大学)、住民(たかはま地域医療サポーターの会)、自治体(高浜町)

11. プロジェクト推進の協力者、協力団体(商工会議所、NPOなど)

町内のNPO 法人、一般企業

12. プロジェクト推進の産学連携や技術(有れば)

大学(福井大学)

13. プロジェクトを構成するプログラム(プロジェクトで実施した行動)

(1)“医住”を促進させる魅力的なプログラム
1) 全国初の市区町村単独医学部寄附講座「地域プライマリケア講座」の設置
・医療関係者を魅了するプログラムの開発に当たり、地元福井大学に市区町村単独では全国初となる医学部寄附講座「地域プライマリケア講座」を2009 年度に設置した。
・講座教員2名を中心に、高浜町内での診療活動の補助のみならず、医学教育・地域医療教育の推進、住民活動の支援、健康のまちづくりの推進を実施、行政、大学、医療現場が一体となり魅力的な教育・研修体制を実現している。
https://www.med.u-fukui.ac.jp/laboratory/primary/

2) 医療の地域も体験する「夏だ!海と地域医療体験ツアーin 高浜」
・アジアで初めてビーチの国際環境基準「ブルーフラッグ」を獲得した若狭和田ビーチを舞台に、平日の医療機関での研修と週末の海浜救護所でのボランティア研修を組み合わせたプログラムを、2009 年より本格稼働。高浜の自慢の海と海の幸、地域住民のあたたかさといった、身を以て地域の良さを感じていただいける工夫を行っている。
・北は北海道から南は沖縄まで、医療系の学生・若手専門職が年間20~30 名高浜町を訪れる、非常に人気の高いプログラムとなっている。

3) 地域との関わりを学ぶ「コミュニティケアセンター」
・近年、医療や介護、行政の現場だけでなく、地域社会活動に関心を寄せる医療関係者が徐々に増加してきているが、現実的には、地域社会活動で生計を成り立たせることは至難の業である。
・高浜町では、2016年より町内の全医療・介護系施設+役場内にコミュニティケアセンターを設置し、週4日の通常施設内業務と週1日の地域社会活動業務を組み合わせた勤務形態を保障している。これにより、地域社会活動や健康のまちづくりの学びを推進し、地域志向の医療関係者の移住( “ 医住” ) を促進させている。

(2)“医住”を定着させる地域総出のサポート
1) 地域医療を守り育てる住民活動「たかはま地域医療サポーターの会」
・地域の医療を守るために、地域の主人公である地域住民が主体的にできることを模索し実行する、住民有志団体「たかはま地域医療サポーターの会」が、2009 年より活動。
・主な活動は、か から始まる「地域医療を守り育てる五か条」(関心を持とう、かかりつけを持とう、からだづくりに取り組もう、学生教育に協力しよう、感謝の気持ちを伝えよう)と、カ行から始まる「地域を守り育てる五か条」(関心を持とう、近所付き合いを深めよう、くらしを楽しもう、健康長寿に努めよう、こどもたちとも仲良くなろう)を、町内のさまざまな集会やイベント等で啓発することである。
・その他、救急受診のフローチャート冊子の作成・配布や、地域医療フォーラムの開催など、長年にわたり幅広い活動を展開されている。これらの活動に“医住”者は、活動の支援を受ける・心の支えとなるなど、その定着に大いに寄与している。https://www.facebook.com/acahun/

2) 第2の故郷をつくる「たかはま海の親プロジェクト」
・(1)の“医住”を促進させる魅力的なプログラムにより、全国から多く高浜を訪れる研修生や“医住”者たち。彼らの高浜町滞在をより魅力的にするのが、2014 年に始まった地元住民によるホームステイのボランティア、「たかはま海の親プロジェクト」である。
・海の町・高浜で、産みの親のように接する地域住民とのかかわりは、“医住”者らに高浜町を第2の故郷のように感じていただくことに寄与している。

3) 健康に詳しい住民が医療を支える「健康マイスター養成塾」
・医療機関にかかるまででもないが、日常の健康面の不安や困惑を生活の中で解決に導き、医療現場・医療関係者に負担をかけないような仕組みは、本邦ではまだ少ない。
・高浜町では2016 年より、町内の医療介護関係者に講師を依頼し、認知症、季節の病気、生活習慣病など、多岐にわたる町民対象の健康の連続講座を企画、運営している。
・修了生を町長が「健康マイスター」に認定し、生活と医療・介護を結び付け、医療の安心と支援を創造する自主的な活動を推進している。

(3)“医住”の促進と定着、複合的な取り組み
1) 地域協働で進める健康市井会議「けっこう健康!高浜☆わいわいカフェ」(健高カフェ)
・あらゆる分野(ヘルスケアだけでなく、まちづくり、教育、商工観光等なんでも)のあらゆる立場の者(住民、行政、専門職)が、月1回まちなかのコミュニティスペースに自由に集まり、参加者提案のテーマについて、誰にどんなことができそうかをざっくばらんに喋り、出た意見を各自が持ち帰って無理なく実現可能な範囲で実行する、まちなか健康市井会議の取り組み。
・2015 年より開始され、今までに20 以上の取り組みが実現している。健高カフェの場で、人と人、団体と団体が出会い、交わり、絆を深めているだけでなく、健高カフェ発案で
実現するさまざまな取り組みにより、地域において社会参加や交流の機会が増加しており、地域のソーシャル・キャピタル1が醸成される。
・また、話の題材とするテーマは地域の参加者由来であり、それを皆で議論し、皆で実行し、評価までを行っており、地域社会参加型研究2の手法を取り入れたものとなっている。“医住”者にとって魅力的な活動の場所であり、また同時に、医療者と住民がざっくばらんに言葉を交わすことを通じ、定住につながる心の支援を受けられる場所ともなっている。

2) 地域協働で進めるまちづくりの実践「健康のまちづくりアカデミー」
・健康のまちづくりは多くの分野が関連するものであるが、系統的、実践的に学べる機会はそれほど多く提供されていない。
・高浜町では、前述のたかはま地域医療サポーターの会やたかはまコミュニティケアセンター所属の医療関係者が、福井大学の全学部(工学部、国際地域学部、教育学部、医学部)の教員および県外特別講師陣と協働し、通年制のセミナー「健康のまちづくりアカデミー」を2016 年より開講している。
・全学部の学部生や全分野の専門職および行政職員を対象に、“まちづくり”דきずなづくり”דひとづくり”דからだづくり”による健康のまちづくりを、住民や行政の支援のもと、“理論×実践”、“超広域多職種連携教育”による系統講義、ワークショップ、参加者が企画し実践する健康のまちづくりイベント等により学ぶ。
・修了生を町長が「健康のまちづくりプロバイダー」に認定し、まちの気持ちがわかるまちの救世主として、修了後も引き続き高浜町の健康のまちづくりに関わっていただく道筋を用意している

14. スケジュール(行程表)

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15. プロジェクト予算(年度ごとの金額、あれば予算書)

・高浜町から福井大学寄付講座への寄付
・他の取り組みに関しても、会の開催・活動自体に費用はかからず、提案された取り組みの実現も、基本的には予算を用意して実施するものではなく、予算をかけずに/予め組まれていた予算の中で実施することになっている。教育的な取り組みに関しても、講師を務める町内の医療介護系専門職はすべてボランティアであり、会場費含め一切の予算をかけていない。外部講師費用は大学の既定の教育予算を用い、その他の会場費等かからないように心がけている。

16. プロジェクト遂行で調達した専門人材(エンジニア、デザイナー、知財関係など)

・医療関係者、大学(福井大学)、住民(たかはま地域医療サポーターの会)、自治体(高浜町)が進める事業であり、取り組み全体での協働が実現している。
・町内のNPO 法人、一般企業の協力も十分に得ながら事業を進めている。
・町から大学の寄附講座にいるが、この予算により雇用された教員2 名が高浜町で町のために専属で勤務しており、直接医師雇用のための予算を用意し町がリクルートするよりも確実で安上がりである。

17. プロジェクト推進・運用組織(あれば組織図)

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18. プロジェクトの成功要件(要因できるだけ多く)

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19. プロジェクトの結果(出来れば数値)

(1)医療者の“移住”と安心の医療について
・本取り組みを開始して以来、高浜町に研修に訪れる医療関係者・医療系学生は年間120 名以上。
・その中から町に移住を決める者が徐々に増え、2008 年に5 名まで減少していた高浜町の医師数は、2017 年には13 名まで回復した。
・医師以外にも、看護師、理学療法士、心理士など、本取り組みをきっかけに町外からの移住が実現した。

(2)住民の“移住”について
・1990 年以降人口が減少し、転出が転入を超過している状況が続いていた高浜町だが、を開始し、2011年を境に転入が増加に転じ2016年には26年ぶりに転入が転出を上回った。

20. プロジェクトによる地域の変化

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21. プロジェクト遂行後も残る課題(未達成、見えてきた課題)

人口減少の波に立ち向かうには、たゆまぬ努力と新しい取り組みが必要。そのため、医療分野のみならず他のヘルスケア分野ならびにヘルスケア分野以外の分野においても、同様の人材育成+地域総出の支援というプロセスに取り組む。

22. 上記の課題を解決するさらなる展開(プロジェクト、フォローアップ)

・本取り組みを全国各地に発信し、展開を生むため、また同時に各地から様々なエッセンスを学ぶために、全国各地と連携するための取り組みも開始している。
・「健康のまちづくり友好都市連盟」(http://kenko-machizukuri.net/friendship/)では、全国の24 の自治体(2018 年7 月20 日現在。以後増加予定)
と情報共有しながら取り組んでいくシステムを高浜町が音頭を取り推進
・「市民―行政―医療―介護協働創出ワークショップ
『コラボ☆ラボ』」
https://www.facebook.com/collabolabo2014/)においては、全国の約100 名のファシリテートボランティアと協働しながら、地域同士の交流と異なる立場の連携の推進に取り組んでいる。

23. 横展開を考えている人への助言、特に苦労した事

・医療関係者にとって魅力的なプログラムの開発および地域総出の受け入れ支援→医療者の移住(“医住”)→医療の安心→一般住民の“移住”というプロセスの取り組みは、日本全国どの地域にでも必要とされる教育体制強化と地域一体化というソフト面の事業であり、各地への普及展開が大いに期待できるものである。

24. その他関連情報、資料

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