【背景】
少子高齢化や人口流出による地域経済社会の衰退を防ぐため、次の取組を実施。
〇子育て・教育の充実(保育・幼稚園無料、通園補助、高校生まで医療費無料等)
〇交流・移住・定住施策の推進(首都圏における暮らし相談、ふるさと納税者との交流会等)
〇住まいの確保(賃貸住宅建設費補助制度による民間新築住宅の供給増)
〇しごとの確保(無料職業紹介、農業生産法人の規模拡大などによる仕事の確保)
【取組】
2つのパートナーと連携し、「だれもが生涯活躍できるまちづくり」と「地域が稼ぐ力の発揮・地域経営」の両輪でまちづくりを推進。
〇「株式会社生涯活躍のまち かみしほろ」
・地域包括ケアの充実、人材センターと生業の開発、起業支援、健康づくり、人材育成かみしほろ塾
〇「株式会社Karch(カーチ)」
・DMO旅行商品開発、地場産品の商品開発、ナイタイテラス・道の駅の運営、電力小売業等
【目指すもの】
〇次世代高度技術の実装によるスマートタウンの実現
・産業、生活等様々なシーンに実装し、生産性、利便性の向上、新たな日常、生涯活躍を後押し。
〇人の都市・地方循環による地域活性化
・都市部の企業人との関係性構築により、地元住民との交流や新たなビジネス展開を目指す。
〇環境と調和したエネルギーの地産地消とビジネス展開
・バイオガスプラントを核とした資源循環型農業と自然エネルギー売電と停電のないまちを目指す。
・上士幌町では、全国の地方と同様、昭和35年頃から人口減少が続くとともに、少子高齢化や人口流出が地域経済社会の活力を低下させる大きな要因となるという認識のもと、人口流出や東京一極集中、地域経済衰退への歯止めをかけるため、第Ⅰ期総合戦略のもと、誰もが安心して、子どもを産み育て、心地よく住み、働くことができるまちづくりの充実に努めてきた。
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(1)令和2年度地方創生推進交付金(内閣府)
「生涯活躍のまち 上士幌創生包括加速プロジェクト事業」
「上士幌町観光地域商社新ビジネスモデル創出プロジェクト」
(2)地域新MaaS創出推進事業」(経済産業省)
「生涯活躍のまち上士幌MaaSプロジェクト」 ほか
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・当プロジェクトは、多様な主体との連携・協働の上にこそ成り立っている。
・だれもが生涯活躍できるまちづくりについては、町の商工会、農協、社会福祉法人、社会医療法人、マスコミ、金融機関等が出資して㈱生涯活躍のまちかみしほろを設立、生活支援体制の整備にあたっては、北星学園大学と連携したセミナーやワークショップにより関係者間の意識共有を図ったうえ、医療法人や福祉法人をはじめ、社会福祉協議会、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、地域住民、ボランティア、サークル団体などが一丸となって支え合いづくりを進めている。
・健康づくりについて、北海道教育大学と連携しながら健康教室を開催。
・移住相談やプロモーションにあたっては、NPO法人上士幌コンシェルジュと連携するなど、地域内外の個人・組織と協働しながら推進している。
・資源循環型農業の実現に向けては、町内畜産農家と上士幌町農協などの出資により、バイオガスプラントを整備し、家畜糞尿由来のメタン発酵消化液を農地に還元し、環境に配慮した資源リサイクルシステムを構築しており、効率的・効果的なシステム構築に反映させている。
・エネルギーの地産地消については、旅行、エネルギー、金融機関等が出資して設立した㈱Karch(カーチ)が、2018年に登録小売電気事業者「かみしほろ電力」として、バイオガス発電による電力小売事業を開始している。さらに、㈱Karch(カーチ)が中心となって、バイオガスプラント、農業法人、農協、エネルギー・システム会社と連携し、2019年に「地域マイクログリッド構築マスタープラン」を作成し、平常時は地域内に電力を供給し、災害時には、防災拠点施設へ電力を独立供給する停電に強いまちづくりを見据えた検討を行った。
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■人の都市・地方循環とスマートタウンの実現
・町では、2008年度より移住や二地域居住を促す取組やふるさと納税寄附者との交流会などを開催してきたが、関係人口の創出・拡大やリモートワークといった働き方改革の視点のもと、2020年7月に「かみしほろシェアOFFICE」がオープンしたところである。
・「都市と地方の交流が活発になり、より賑わいのあるまちへ」をコンセプトに、シェアオフィスを拠点に、ワーケーションなど「美味しい食や大自然を楽しみながら自分らしく働く」という提案だけではなく、「地元の人と都市で働く人がつながれる場所」として活用することで、都市部企業のノウハウを使い、町内の小学生にプログラミングを教えるといった新たな交流・関係が生まれたり、地場産食材を使った商品開発や販路拡大といったビジネスの創出につながるなど、人の都市・地方循環を促し、地域を活性化させることを目指している。
・Society5.0時代を見据え、AI、IoT、自動運転、ロボットなど次世代高度技術を活用することで、スマート農業や遠隔医療、介護支援、遠隔授業、自動運転車による移動や買い物支援など、ポストコロナ時代も視野に、生産性や生活の利便性の向上を目指した取組を進めている。
・2019年度には、全ての町民が通勤や通学、買い物、サークル活動など時間帯を問わず、不便なく移動できるとともに、観光客やシェアオフィス利用者が、マイカー以外でもスムーズに目的地に行き着けることを目的として、全国で初めて自動運転バスを公道で走行させるなど、地元スーパーや住民も協力しながら、MaaSや新しいモビリティシステムの導入実験を実施したところである。今年度からは、2018年度にオープンした交通ターミナルを拠点にカーシェアリングやレンタサイクルなど多様な移動手段を用意するとともに、MaaSを活用したデマンド交通に関する実証実験を実施する予定である。こうした実験を積み重ねて、例えば、免許を返納したシニアでも、買い物やサークル活動に安心して参加できるといったスマートタウンの実現は、生涯活躍のまちづくりも後押しすることにつながるものである。
・2020年度からは、民間企業からのデジタル専門人材の派遣を受けて庁内にICT推進室を設置し、これまでの実証結果も踏まえつつ、様々な分野や関係機関と連携・調整を図りながら、スマートタウンの実現を目指し、将来ビジョンや課題の洗い出しなどを進めているところである。
■地域が稼ぐ力の発揮・地域経営
【観光地域商社としての地域経営】
・「株式会社Karch(カーチ)」は、日本一の広さを誇る公共牧場「ナイタイ高原牧場」の景観を活かして、2019年6月にオープンした「ナイタイテラス」を運営し、地域の食材を極めたフードメニューの展開や十勝産商品の販売のほか、ナイタイテラスのナイトバスツアー、じゃがいも堀り・そば打ち体験といった体験型旅行商品の開発販売を行い、計画を1.9倍上回る売上実績を上げている。さらに、2020年6月にオープンした「道の駅かみしほろ」を運営し、地域内外の人々の休憩、飲食、体験、交流拠点として、集客や地場産品の販売促進を図るとともに、道の駅内に無料職業紹介や移住交流の窓口を設け、いわば「町の入り口」としての機能を活かした地域経営を進めている。
【環境と調和したエネルギーの地産地消とビジネス展開】
・酪農が盛んな上士幌町では、町内の畜産農家や農協等の出資により、バイオガスプラント運営会社を設立し、牛のふん尿を発酵させてつくられるメタン発酵消化液を液肥として畑地に還元し、資源循環型農業を実現している。さらに、バイオガス発電による電力は、「㈱Karch(カーチ)」が、2018年10月に登録小売電気事業者「かみしほろ電力」として売電事業を開始、町内の事業者や一般家庭に供給されている。今後は、㈱Karch(カーチ)が、こうした資源循環型農業や再生可能エネルギーの地産地消の取組、「道の駅かみしほろ」で展開される食品ロスの削減など、SDGsと連動させた体験旅行商品の開発により、地域の価値を体感し、学ぶ新しいビジネスを展開する。
■だれもが生涯活躍できるまちづくり
・生涯活躍のまちづくりの拠点は、「起業家支援センターhareta(ハレタ)」(右写真)である。旧呉服店を改修し、1階は「㈱生涯活躍のまち かみしほろ」も事務所を構え、キッチンカウンターを備えたフリースペース、2階はシェアハウスとして利用できる。
・地域包括ケアや人材センターは、他地域でも取り組まれているが、かみしほろ塾などそれぞれの要素が有機的につながっているのが、上士幌町の「生涯活躍できるまちづくり」の特徴である。
【地域包括ケアの充実】
・医療や介護、見守り等生活支援の互助体制づくりを目指し、セミナーやワークショップ、介護職員初任者研修による担い手の育成・確保、地域住民による主体的な助け合いを目指したまちづくりカフェ「あすわがミーティング」を実施した結果、住民や関係者間の意識共有や住民コミュニティ醸成の基盤ができるとともに、2019年度、互助体制づくりの核となる「地域支え合い推進会議」が発足したところ。今後は、この協議体を中心に地域包括ケアの充実を図る。さらに、今年度から「あすわがミーティング」が、生活支援コーディネーターを介した課題解決の場「かみしほろスマイルプロジェクト」と、住民の思いを形にする「まちまるごとチャレンジ」へと発展したことから、地域の困りごとやその担い手に関する情報の発掘、困りごとの生業開発を進めながら、人材センターの機能強化につなげる。
【かみしほろ人材センター】
・登録制である人材センターは困りごとと担い手をマッチングする仕組みで、2019年度は草刈りや庭の手入れ等160件(前年比2.5倍)の依頼業務を受注した。今後は、上記コミュニティの場で掘り起こされた困りごとや担い手をさらに多くマッチングさせるとともに、生活支援コーディネーターを介した困りごとを生業として開発することや、かみしほろ塾の専門講座による担い手の育成を組み合わせて、機能強化を図る。
【生涯活躍かみしほろ塾】
・町内外問わず誰もが生涯を通じて学習し、心豊かに自己実現を図ることができるよう、2019年度は、スポーツ、健康、次世代高度技術など13の講師・テーマによる座学の総合講座を3期5日間、旧士幌線跡地を巡り歴史を学ぶなどアクティビティ中心の専門講座を2回、経営計画づくりをマンツーマンで指導する起業塾を実施した。今後は、人材センターと組み合わせ、専門講座による困りごと解決の即戦力となる人材育成ほか、起業の準備段階や起業後のフォローアップを強化し、自己実現サポートと地域経済活性化を両立させる。
【健康づくりの促進対策】
・健康関連企業と連携して希望する町民に活動量計を貸与、歩数や健康・学習関連イベントの参加に応じてポイントを付与し、年度末に町内商品券と交換できる健康ポイント事業を実施している。住民の健康づくりに対するインセンティブを高めるとともに、今後は、体組成データの活用による健康管理や運動プログラムの開発などについて検討を進め、未病や運動習慣化など生涯活躍につなげる。
【地域の魅力発信と関係づくり】
・町内のNPO法人「かみしほろコンシェルジュ」と連携し、都市部で開催されるセミナーで移住に関する相談対応や地域の魅力発信、町内の職場体験を実施している。今後は、「仕事・学び・遊びの体験プログラム」を実施し、特に都市部の若者をターゲットに、人手が不足している農業現場等での仕事のほか、地域コミュニティへの参加による学びや仲間づくり、上士幌町のシンボルである熱気球やアウトドアといった遊びを一定期間体験し、地域住民との関係づくりや自己実現のサポートを進める。
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■官民出資による株式会社が推進母体
・㈱Karch(カーチ)は、観光地域商社として、再生可能エネルギーの売電事業、ナイタイテラスの運営、観光施設への誘客、マーケティング調査、旅行商品造成のDMO事業を中心に展開し、2019年度、総売上高が2億3,900万円、純利益が2,700万円、自己資本比率が52.2%、流動比率が211.6%となっている。通算2期目であるが、安定的な経営を実現させており、2020年からは、新規オープンした道の駅の運営を加えるとともに、再生可能エネルギーの地産地消をはじめ、手厚い子育て・教育支援等SDGsゴールを目指すまち「上士幌町」をフィールドにした体験旅行商品の開発や人材育成など、これまでの旅行の枠組みを進化させながら、地域が稼ぐ力を発揮させていく。
・㈱生涯活躍のまちかみしほろは、地域包括ケアの充実、コミュニティの醸成などいわゆる公的支援の仕組みづくりが大半の「生涯活躍のまちづくり」を担うほか、「ふるさと納税推進業務」や中学生の自主的な学習をサポートする「まなびの広場運営業務」を町からの受託事業として推進し、2019年度、総売上高が1億1,200万円、純利益が1,570万円、自己資本比率が69.6%、流動比率が326.1%となっている。通算3期目で、業務の性質上、町からの受託事業で支えられている側面もあるが、これまで行政ではなし得なかった住民コミュニティの醸成や人材センターの利用促進、学習機会の創出などを実現させている。今後は、起業家チャレンジショップの利用促進や、なりわいづくりとマッチングシステムの導入による人材センターの機能強化、仕事・学び・遊びの体験プロジェクトによる都市部の若者との関係づくり、町内団体のイベント企画運営やデザイン広告など新規事業の展開により、誰もが生涯活躍できるまちづくりを加速させつつ、安定的な経営を進めていく。
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■第Ⅰ期地方創生推進の効果
・人口減少や流出、少子高齢化による地域経済社会の衰退をくい止めるため、移住定住促進の取組を進めるとともに、ふるさと納税制度を活用した地場産品の販路拡大、ふるさと納税を原資とした子育て・教育の充実したサポート、賃貸住宅建設費補助制度による住宅供給戸数の増加、無料職業紹介や農業生産法人の規模拡大などによる雇用の確保が、第Ⅰ期地方創生の取組において相乗効果を発揮したところ。2015年度からの5年間で、人口増42人、社会増244人、若年層(世帯主が20~40代)の転入率が76.5%(5年平均)、首都圏からの転入者が4年間で118人増、高齢化率も0.39ポイントながら低下といった成果を上げている。
■「㈱Karch(カーチ)」と「㈱生涯活躍のまち かみしほろ」のがんばり
・地域が稼ぐ力の発揮による地域経済の活性化については、パートナーである㈱Karch(カーチ)が、2018年に登録小売電気事業者「かみしほろ電力」として、地域の酪農家や一般家庭に向けて畜産バイオガスによる電力小売事業を開始し、2020年3月時点で353件の契約実績、前年同月比で25%増となり、再生可能エネルギーの地産地消を進めている。さらに、株式会社は、DMO事業のほか、2019年からは「ナイタイテラス」の営業を開始し、初年度、当初想定の8万人を大きく上回る13万7千人を集客するとともに、45人の雇用創出効果を上げている。
・だれもが生涯活躍できるまちづくりの実現に向け、㈱生涯活躍のまちかみしほろが、2017年度から「上士幌町創生包括プロジェクト」を進め、健康ポイント事業は650人以上の町民が参加(18歳以上対象住民の16%)し、健康づくりのインセンティブを高めている。また、生涯を通じた学びの場を提供する「かみしほろ塾」は、2019年度、総合講座には延べ1,000人以上が参加、起業塾は、定員5名に6名が参加、1名が起業に至り、1名が起業準備中など、生涯を通じた自己実現をサポートしている。さらに、困りごとと担い手をマッチングする人材センターには、担い手が37名登録し、2019年度は160件の受注、前年度比2.5倍となり、経済性も包含しながら住民の活躍と困りごと解決が両立した仕組みが展開されている。
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・新しい生活様式といった今後のワークライフスタイルを踏まえつつも、住民の幸福を基本に、コミュニティや関係性という意味でのつながりを逆に大切にしながら、食やエネルギーの高い自給率を軸に、持続可能で、内発的循環型の地域社会を創造していく。
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・環境と調和した資源循環型農業と食・エネルギーの自給は、環境問題の解決、農業の安定化、災害に強い地域づくりなど、持続可能な地域社会の形成にとって非常に有効なシステムであることから、十勝地方、北海道から全世界へ展開されるべき取組である。