・オリーヴの6次産業を超えた取り組みを基に「心と体の健康を追求し、小豆島の発展に寄与する」社是のもと、過疎化が進む島のかつての旧商店街「迷路のまち」の古民家再生に取り組み、「妖怪」や「折り鶴」といった日本文化をテーマとした芸術・歓光事業によって地域の持続可能な課題解決に取り組むものである。
・成熟社会において、文化芸術は人生における重要な要素である。この文化芸術の分野において、瀬戸内・小豆島から日本人の「文化遺伝子」を世界に向けて発信しているのが、小豆島・迷路のまちにある「妖怪美術館」や折り鶴アートの「naoki onogawa museum」である。VRやスマホアプリなど新しいテクノロジーを駆使したコンテンツは外国人からも人気を呼び、瀬戸内や小豆島の歓光振興に寄与している。
・小豆島・迷路のまちアートプロジェクトMeiPAMは、この美術館事業を中心として、2011年から9年間にわたり古いものを活かしながら新しい価値を生み出してきた。「まち磨き」の取り組みである。この取り組みによって、歓光客がほとんどいなかった「迷路のまち」に年間10万人が訪れ、小豆島を代表するスポットにまで育て上げることができた。
・日本文化は「神と人間の関係において円環的かつ可逆的である」(谷川健一「神・人間・動物」(講談社学術文庫))といわれ、一神教世界の西洋文化と対比することができるが、古事記や日本書紀にも著されたような八百万の神やアニミズムをベースとした精神性は現代の日本人にまで受け継がれている。さらに、大災害時、お互いに助け合う日本人の平和的な態度に世界から注目を集めており、こうした国民性は長い歴史のなかで培われてきたものであるが、この特徴を顕在化させているのが、「妖怪」や「折り鶴」をテーマとした芸術作品である。これらが象徴するものは、多神教文化を背景とする「寛容性」である。これは日本が成熟した社会であるからこそ、生まれ得る営みであるということができ、これらの作品を鑑賞することで、日本人の寛容性や独特の精神性を知ることができるのである。
・平和と繁栄(と健康)の象徴である「オリーヴ」の恵みが日本独自の文化芸術の発信を促し、地域の発展を促進する持続性のある取り組みとなっている。こうした好循環がオリーヴ事業に還っていくという持続可能性をもたらしている。さらなる将来像として、“百年常若”(ひゃくねんとこわか)をスローガンとした「人生百年時代」に対応した健康促進のシステム構築を進めている。それは、オリーヴの恵みを活かしたサプリメント開発に始まり、これを医薬品へと進化させることで、オリーヴのある健康生活を届けるヒト、モノ、コト、サービスを一体化させ、世界展開を図るものである。
・歴史的には醤油や素麺などの産業が栄え、近年ではオリーヴの島として全国9割の生産を誇る小豆島であるが、人口減少(ピーク時の半数以下)による少子高齢化や過疎化が進んでいる。島の旧商店街である土庄本町(通称:迷路のまち)でも約半数が空き家の状態となっている。一方で歓光は島の基幹産業であり、その中でも「迷路のまち」は新たな歓光地として期待されていたが、来訪者数は年間1~2万人ほどであった。そこで、小豆島ヘルシーランド株式会社の創業者・柳生好彦(現・相談役)が、取り壊し寸前の呉服店の蔵(明治時代の3階建て)を買い取り、アートスペースとしたのを皮切りに、迷路のまちエリアの歓光開発が始まった。古いものを活かしながらまちを磨く活動である。
(未入力)
(未入力)
(未入力)
(未入力)
・当該取り組みはすべて民間企業(小豆島ヘルシーランド株式会社)の事業として行っており、公的資金やその他の資金援助は受けていない。
(未入力)
(未入力)
・行政とも連携を取りながらエリアの歓光振興を進めている。
・地域の歓光振興を進める、「迷路のまちづくり委員会」と連携して、「迷路だんご」の開発や、地域のイベントを推進した。さらに香川大学との連携によって、空き家をリノベーションすることで民泊の運営にこぎつけた。
・この事業を進める香川大学の学生プロジェクト「なえどこ」は内閣府主催「地方創生 政策アイデアコンテスト」にて最高賞である地方創生大臣賞を受賞した(2017年)。
・小豆島ヘルシーランド株式会社副社長の柳生忠勝が小豆島観光協会理事を、MeiPAM代表の佐藤秀司が小豆島とのしょう観光協会理事をそれぞれ務めており、GWや夏場の歓光ピーク時の駐車場の提供や各種連携によって、行政とも連携を取りながらエリアの歓光振興を進めている。
・小豆島ヘルシーランドが母体となり、2011年「小豆島 迷路のまちアートプロジェクトMeiPAM(メイパム)」が発足。現代アートをテーマとした美術館「MeiPAM」をオープン。
・まち全体を美術館にみたてるといったコンセプトにより、街中に点在する複数の古民家をアート空間にリノベーションし展示空間とした。美術館は設立当初は3号館までだったが、現在は6号館まで増加している。
・展示内容は、アーティストインレジデンスプログラムで招聘した海外のアーティストによる滞在制作で創られた現代アートを中心に、国際的な妖怪をテーマとしたアートコンペティション「妖怪造形大賞」の作品の展示など、建物ごとに異なる展示を行っていた。
・MeiPAMは、3年に1回開催されるアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」において、2013年に公式コーディネーターとなり、2019年には公式の県内連携事業として、芸術祭のプロモーションに寄与している。当時の3号館は現在瀬戸内国際芸術祭実行員会に提供をしており、アーティストチーム「目」と妖怪画家・柳生忠平とのコラボ作品となっている。
ベネッセホールディングス名誉顧問であり、公益財団法人「福武財団」を設立した福武總一郎氏には、設立当初より相談をしており、事業についての快諾を頂いてからのスタートであった。福武氏や、瀬戸内国際芸術祭総合ディレクターである北川フラム氏には全館を見て回っていただいた。
・2018年に「妖怪美術館」としてリニューアル。全ての展示テーマを「妖怪」とした。設立当初から取り組んでいた妖怪造形作品のコンペティション「妖怪造形大賞」の応募作品は825体にのぼり、これらを展示している。
・妖怪による町おこしは数多くあるが、現代の日本人が生み出す妖怪をテーマとしているのが特徴。パソコンの妖怪やスマートフォンの画面を拭く妖怪、Facebookの「いいね!」を集める妖怪など、現代ならではの妖怪造形(フィギュア)が中心。日本人の精神性を知りたいと考える欧米からの個人旅行客である「Educated Traveler」や「Special Interest Hunter」をメインターゲットとし、2019年、トラベルオーディオガイドアプリを開発する株式会社ON THE TRIPと提携。
・東アジアのインバウンドの需要を見込み、国立台湾芸術大学や世新大学(台湾)と連携を初め多言語対応とデザインの刷新により体験価値を向上させた。
・これにより、入館者数が前年比 3倍となり外国人歓光客を中心に口コミが拡散して、大きな飛躍を遂げた。現在、美術館を基点とした「迷路のまち」エリア全体を、歓光マーケティングの対象ととらえ、カフェやレストラン、土産物店など、複数の歓光事業を推進している。地域住民や老舗和菓子屋、定食屋などの地元商店との連携も進めており、新たに歓光事業を志す移住者との橋渡しの役割も担っている。
〇妖怪美術館館長 柳生忠平
妖怪美術館の館長は妖怪画家の柳生忠平である。東京・六本木での定期的な個展をはじめ、上海や台湾など海外でも個展やイベントを開催。2019年にはフランス・ノワイエにある国際アートセンターに招聘され、インスタレーションを制作。恒久展示されている。国際的に活躍の場を広げているアーティスト。
・2017年 個展 台湾
台湾は妖怪ブームがおきており、妖怪に関する関心が高い。台湾アートブックフェアでは柳生忠平のブースに行列ができるなど、妖怪画家としての注目度も高い
・2019年 フランス 常設展示
柳生忠平はフランスブルゴーニュ地方の最も美しい村と評されるノワイエの「国際アートセンター(La Porte Peinte)」の招聘で単身、渡仏した。前年に「妖怪美術館」を訪れたアートディレクター ミシェル氏は、柳生忠平の作品を観て、大変気に入ったことから、ヨーロッパ中世の村で妖怪の世界観を展開するというのはものすごく面白いのではないか、という構想を得て、妖怪の世界に没入できる空間の制作を依頼。2019年8月~10月の期間フランスブルゴーニュ地方ノワイエにて滞在制作。パーマネントコレクションとして所蔵された。
〇「naoki onogawa museum」
折り鶴アーティスト・小野川直樹氏の常設美術館。旧花屋の倉庫を改装した。小豆島ヘルシーランドの創業者、柳生好彦が小野川氏の作品を観たことがきっかけとなり、美術館を設立した。柳生と小野川氏が最初東京で会ったときにものすごく素直な、透明なキラキラするオーラを感じて、その場で共にミュージアムを作ることになった。設立のテーマはそのままの歴史をそのままその場に残すということ。それが先人の残した文化を磨きキラキラ光り輝くようにすることである。小野川氏は東京での展覧会や、商業施設の展示プロデュース、航空会社の海外向けPVに出演するなど、活躍の場を拡げている。
〇405カフェ
〇迷路のまちの本屋さん
日本一小さな総合書店をテーマに「旅の途中に出会いたい」書籍を中心に販売。近隣にある、自由律俳句の尾崎放哉の記念館にちなみ、関連書籍を取り揃え、定期的にイベントなども行っている。「いつもと違う島旅の時間に、自分の日々に寄り添ってくれるかけがえのない本と出会ってほしい」そんな想いで働き方や暮らし方に関する本、文芸、アート、写真集、エッセイなど幅広いジャンルから知的好奇心をくすぐるような本を選書。「本棚に置いておきたい一冊」が棚づくりのテーマ。そのほか、小豆島にかかわりのある手づくり雑貨、アクセサリー、アーティストのデザイン雑貨など、ひとり旅でも自分のためのおみやげがきっとみつかる。
〇島モノ家
古民家を改装した。小豆島の産品を中心に、瀬戸内の一品を直接買い付けて販売。「品数が多すぎて、なにを買えばいいかわからない!」そんなお客様のために、瀬戸内と小豆島のいいものだけをセレクトしたお土産を揃えた。素麺、醤油、オリーヴオイルはもちろん、いりこ、ひじき、お菓子、ジャム、化粧品、手ぬぐいなど。こだわりの商品だけを選んでおり、どれをお土産にしても間違え無し。中でも、醤油のラインナップは島内随一で、小豆島の醤油ソムリエール・黒島慶子さんが厳選したオススメ品がずらり。醤油蔵めぐりをする時間がない方でも、ここにくればバッチリ。
オリーヴの木を使った雑貨、アロマ、衣料品なども扱う、「せとうちスタイル」の公式ショップ。
〇島メシ家
元庄屋の屋敷を改装した。ブランド牛「オリーヴ牛」を使ったローストビーフ定食が人気。島の野菜や島の豆腐、棚田の米など、小豆島づくしのメニューとなっている。オリーヴ事業とのシナジーを活かし、小豆島産のオリーヴオイルは店内で使い放題となっている。「島の野菜とオリーヴ」をテーマにしたメニューが楽しめる、島の食材を活かした食堂。一頭の牛からわずかしかとれない希少な部位3種の肉を食べ比べできる「島の野菜とオリーヴ牛のローストビーフ定食」は、やわらかくてヘルシーで女性にも人気。野菜は、小豆島で無農薬栽培をしているHOME MAKER'Sとムロ・ファームから。旬のみずみずしい季節の野菜を使用。
(未入力)
(未入力)
(未入力)
(未入力)
(未入力)
・妖怪美術館や折り鶴の美術館など日本人の精神性を表した美術館によって、多くの外国人が訪れ、迷路のまちエリアは国際的に魅力的な場所となった。
・さらに、A5ランクの黒毛ブランド和牛「オリーヴ牛」や島の食材をふんだんに使った「オリーヴ牛のローストビーフ希少部位三種食べ比べ定食」などを展開するレストランや、小豆島の産品を扱うこだわりのお土産店、「迷路のまちの本屋さん」、カフェ、駄菓子店など7つの店舗を展開。
・これらを中心とした店舗を紹介する「迷路のまちマップ」を独自に発行。これが人気となり、約10万部(日本語版、英語版、簡体字版、繁体字版4バージョン合計)を発行。「迷路のまち」を小豆島の主要な歓光地へと発展させた。
・結果的に2019年度は年間約10万人(うち外国人が3万人)の歓光客が訪れる場所となった。
・地元企業による“まち磨き”の取り組みが、外からの刺激を呼び込み、地元民の活性化にもつながる、といった循環が、一つの形となって顕在化されている。
(未入力)
(未入力)
・妖怪美術館は、入館者数が飛躍的に伸び(前年の3倍、売り上げは10倍)ており、こうした取り組みを成功事例として、古いものを活かしながら新しい価値を創造するノウハウを他の地域に活かしていただくことが可能である。
(未入力)